ジニ係数とは?計算方法や日本の推移や世界の数値をわかりやすく解説

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ジニ係数を使って、所得の格差がどれくらい生じているのかを確認できます。1に近いほど格差が大きく、0に近いほど格差が小さいといえるでしょう。

本記事では、面積を使ったジニ係数の計算方法や、各国の数値を紹介します。

ジニ係数とは

ジニ係数とは、所得などの分布の均等度合いを示す指標のことです。名前は、イタリアの統計学者、コラド・ジニ氏によって考案されたことに由来します。

ジニ係数は、所得格差を埋めるための所得の再分配による効果が、どれだけあるかを確認する際に役立つ指標です。ただし、所得の再分配の効果を確認するには、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数の意味を理解しておかなければなりません。

ここから、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数の意味について、詳しく解説します。

当初所得ジニ係数の意味

当初所得ジニ係数とは、税金・社会保険料を支払う前の所得を使って計算する値のことです。例えば、年間の給与収入450万円から、税金や社会保険料が50万円引かれている場合でも「450万円」を使って計算します。

当初所得ジニ係数を確認することで、国や地方自治体が税金などを徴収する前に、どれくらいの所得格差が生じているのかがわかります。

再分配所得ジニ係数の意味

再分配所得ジニ係数とは、税金・社会保険料を支払った後の所得を対象にして、計算する値を指します。年間の給与収入450万円から、税金や社会保険料が50万円引かれている場合、当初所得ジニ係数で扱うのは「400万円(450万円 − 50万円)」です。

ただし、現金給付・現物給付がある場合は加算もします。そのため、仮に年間12万円の児童手当を受け取っていれば、再分配所得に使う金額は「412万円(450万円 − 50万円 + 12万円)」です。

再分配所得ジニ係数を調べれば、所得の再分配後も依然としてどれくらいの格差が生じているのかがわかります。

ジニ係数とローレンツ曲線の関係

ジニ係数は、完全平等線とローレンツ曲線に挟まれている面積を2倍して求められます(例:面積が0.35であれば0.7)。

完全平等線とは、グラフの座標(0,0)〜(1,1)間を結ぶ直線のことです。ローレンツ曲線は、対象の数値の累積相対度数を結んだ曲線で、格差が大きければ大きいほど完全平等線から離れます。

なお、累積相対度数とは、最小の階級から対象の階級までの相対度数(各階級の度数が全体に占める割合)の総和のことです。例えば、相対度数が「0〜100万円:0」「100〜200万円:0.3」「200〜300万円:0.2」の場合、「0〜300万円」の累積相対度数は0.5と計算できます(0 + 0.3 + 0.2)。

ジニ係数からわかること

ジニ係数は0から1までの値をとる指標です。ここから、ジニ係数が1に近い場合と0に近い場合に分類して、わかることを説明します。

ジニ係数が1に近い場合

ジニ係数が1に近づくほど、格差が広がっていることを意味します。一般的に、ジニ係数が0.5を超えていれば、格差がかなり大きく是正が必要と言われています。

ジニ係数1の場合は、1カ所が独占していることを示しています。例えば、所得でジニ係数を計算した結果「1」になると、1人(もしくは1世帯)が所得を独占する状況と判断できるでしょう。

ジニ係数が0に近い場合

ジニ係数が0に近ければ近いほど、格差が小さいことを意味します。

また、ジニ係数が「0」は、平等が実現した状態のことです。完全平等が実現している場合、ローレンツ曲線は完全平等線と重なる直線を描くため、面積が「0」でジニ係数も「0(0 × 2)」と計算できます。

ジニ係数の計算方法・求め方

ここから、架空のAエリアとBエリアにそれぞれ居住する5人の年収(当初所得)を使って、ジニ係数の計算方法を説明します。

ジニ係数の計算例

ジニ係数の公式は数学の知識を要するため、今回は面積を使って計算する流れを紹介します。まず、Aエリアにおける累積所得を計算しましょう。

次に、累積人口比・累積所得比を計算します。今回、各階層にひとりずつしかいないため、累積人口比は0.2ずつ増加している点がポイントです。

続いて、各領域(台形)における面積を求めましょう。

上記の面積を合計すると「0.3296」です。最後に、「0.5(完全平等線で作られるグラフの面積)」から「0.3296」を引き、2倍すればジニ係数が計算できます。したがって、Aエリアにおけるジニ係数は0.3408です((0.5 − 0.3296)× 2)。

同様のやり方で、Bエリアのジニ係数は0.1272と計算できます。Aエリアのジニ係数(0.3408)は、Bエリアのジニ係数(0.1272)よりも大きいため、Aエリアの方が格差は大きいと判断できるでしょう。

ジニ係数の改善度の計算例

ジニ係数の改善度を調べれば、所得の再分配によりどれだけ格差が是正したかがわかります。改善度の計算式は、以下の通りです。

・改善度(%) = (当初所得ジニ係数 - 再分配所得ジニ係数)÷ 当初所得ジニ係数

Aエリアで所得の再分配を実施した結果、ジニ係数が0.2まで下がった場合、改善度は約41.3%と計算できます((0.3408 − 0.2) ÷ 0.3408)。改善度が高ければ高いほど、所得の再分配で格差が是正したことを意味します。

ジニ係数を比較

ここから、日本におけるジニ係数の推移や、世界各国のジニ係数を比較しましょう。

日本におけるジニ係数の推移

厚生労働省の「令和3年所得再分配調査の結果」に記載されている、近年のジニ係数をまとめました。

所得の再分配により、毎回3割前後の改善度があることがわかります。

世界各国のジニ係数

世界銀行では、各国のジニ係数を紹介しています。G7の国々のジニ係数は、以下の通りです。

・米国:41.3(2022)
・イタリア:34.8(2021)
・日本:32.9(2013)
・英国:32.4(2021)
・ドイツ:32.4(2020)
・カナダ:31.7(2019)
・フランス:31.5(2021)

G7諸国と比べて、日本の数字は大きな差がありません(米国除く)。アジアでは、韓国が32.9(2021)、中国が35.7(2021)でした。

なお、各国調査年が異なるため、厳密な比較ができない点に注意が必要です。また、世界銀行のデータでは、ジニ係数を0〜1ではなく、0〜100で示しています。

ジニ係数の悪化につながる要因

ジニ係数の悪化につながりうる要因のひとつが、都市部と地方で生じる所得格差です。物価の高さに比例して都市部で平均賃金が上昇すれば、所得の差が広がりジニ係数が悪化します。

また、非正規雇用者の増加もジニ係数の悪化につながることがあるでしょう。一般的に、所得が正規雇用者よりも低く福利厚生面も充実していない傾向にある非正規雇用者が増えると、労働者間における所得の格差が拡大します。

ジニ係数の改善につながりうる政策例

所得の再分配を図ることが、ジニ係数の改善に直結する政策例です。国や地方自治体が、徴収した税金を財源に所得が低い人に対して現金給付をしたり、社会保険料の負担を減らしたりすることで、所得格差が小さくなります。

また、雇用機会を創出することも、ジニ係数の改善につながる政策のひとつです。失業者が働く機会を得られれば収入が増えるため、所得格差は小さくなります。

そのほか、所得が低い世帯の子どもに教育機会を増やして教育の格差を減らすことも、将来的に所得格差の解消につながるでしょう。

ジニ係数を調べる際の注意点

現在と過去の所得を比較する際、対象者がそれぞれ同じような比率で変動した場合にジニ係数では現状を捉えきれない点に注意しましょう。

例えば、A世帯の収入が250万円、B世帯の収入が450万円のケースを考えてみます。翌年A世帯の収入が500万円、B世帯の収入が900万円に増えた場合、どちらも同じく2倍になっているためジニ係数自体に変動はありません。しかし、所得格差は200万円から400万円まで広がっているため、厳密には昨年と同じ所得格差とはいえないでしょう。

また、ジニ係数は基本的に所得の格差を調べるための指標である点も重要です。世の中には、所得格差以外にも、教育格差や幸福度格差などの格差も存在することを理解しておかなければなりません。

ジニ係数は所得格差を視覚化する指標

ジニ係数とは、所得などの分布の均等度合いを示す指標です。ジニ係数を比較して数値が増えていれば、所得格差が広がっているといえるでしょう。

所得格差を小さくするための方法のひとつが、所得の再分配です。当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数を計算すれば、所得の再分配が格差是正にどれだけ貢献したのかを確認できます。

平均収入を確認するだけではわからないことが見えてくるため、今後はジニ係数にも注目してみましょう。

参考:総務省統計局「なるほど統計学園 ローレンツ曲線」
参考:厚生労働省「令和3年所得再分配調査の結果」
参考:WORLD BANK GROUP「Gini index」

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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