多子世帯とは「子ども3人以上を扶養する世帯」のこと
2025年4月開始!「多子世帯の大学無償化」ってどんな制度?
多子世帯は「授業料・入学金」が満額減免される
「2025年度から、多子世帯に関しては所得制限を設けず、授業料・入学金の満額減免支援を受けられることになります。国立大学のほとんどが実質的に学費無料となり、私立大学でも入学金26万円、年間の授業料70万円が減額されることになります」
●2025年度以降の多子世帯への授業料等減免上限(年額)
多子世帯に関しては、収入に関係なく授業料・入学金が満額支援となる。
「所得制限がなくなったからといって、多子世帯であれば自動的に支援を受けられるわけではありません。JASSOに給付型奨学金の申請をして初めて支援を受けられるので、3人以上の子どもを扶養している家庭で子どもが大学や専門学校に進学する際は、忘れずに申請を行いましょう」
高等教育の修学支援新制度を利用するには、実はもうひとつの要件があるという。
「成績要件、家計要件に加え、資産要件が設けられています。2025年度からの資産要件は第Ⅰ~第Ⅳ区分で5000万円未満、区分超過の多子世帯においては3億円未満となります。ただ、資産の対象は預貯金や有価証券など、すぐ現金化できるものに限られ、不動産などは含まれないので、要件から外れてしまう家庭は少ないでしょう」
満額減免支援の条件は「子ども3人以上を扶養」
申請が必要であることや資産要件も高等教育の修学支援新制度を利用する際のポイントといえるが、もっと重要な注意点があるとのこと。
「多子世帯とは、『子ども3人以上を扶養している世帯』のことです。例えば、3人兄弟の場合、一番上の子は満額減免支援を受けることができるでしょう。しかし、上の子が就職して親の扶養から外れると、多子世帯の条件に当てはまらなくなるため、下の子たちは満額減免支援を受けられなくなります」
文部科学省は多子世帯への支援を発表した際、「子どもが何人いても、すべての世帯で大学の授業料などの負担を最大2人分までにする制度」と話していた。まさに久米さんが話してくれた通りであり、すべての子どもの授業料・入学金を支援するものではない。
「ただ、少し難しいのが、多子であることを判定するタイミングがリアルタイムではないという点です。3人兄弟の一番上の子が2025年3月に大学を卒業して就職し、2番目の子が2025年4月に大学に進学する場合、4月から多子世帯ではなくなるため、2番目の子は満額減免支援を受けられなくなるはずですが、実際は1年半程度支援を受けられるのです」
なぜ、1年半のタイムラグが生まれるのか。その理由は、多子世帯の判断材料となるのが住民税情報だからだという。
「多子世帯であることの判定は住民税情報をもとに行われますが、住民税は年収などが確定してから導き出されるものなので、年度のズレが生じます。そのため、上の子が扶養から外れても、1年半程度は多子世帯と判定されるのです。上の子が就職したから支援は受けられないと諦めず、JASSOに申請してみると、意外と支援を受けられたりするものです」
たとえ多子世帯ではなくなったとしても、第Ⅰ~第Ⅳ区分に該当していれば、これまで通り給付型奨学金や授業料・入学金の減免を受けることができる。要件に当てはまるようであれば、JASSOに申請してみよう。
年々、拡充してきている高等教育の修学支援新制度。子どもがやりたいことを応援するためにも、制度内容などをしっかりチェックしておくとよさそうだ。
(取材・文/有竹亮介)