教育投資ジャーナリスト・戦記君が伝える「教育投資のススメ」前編

戦記君流・教育投資のキーワードは「インカムゲイン」&「目標」

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安定性の高い「インカムゲイン」を重視する

戦記君は教育投資を行うにあたって、目標金額を設定。中高6年間の学費+塾代で約1000万円、私立大学理系4年間の学費で約600万円、合計1600万円を目標に2020年8月から「S&P500」に連動するETFでの投資を開始。

約3年後の2023年6月に、1600万円の利益確定を完了した。さらに運用を継続し、2023年12月には私立大学医学部に進んだ場合に追加で必要になる1700万円(合計2300万円)も確保。2024年5月には、私立大学医学部の最高学費を賄える金額である合計5550万円を確保した。

戦記君が教育投資で重視したのは「分配金」。投資というと、資産を売却することで得られる利益「キャピタルゲイン」を意識するものだが、戦記君は資産を保有している間に得られる利益「インカムゲイン」に重きを置いたのだ。

「S&P500に連動するETFの分配金利回りは大体年1.5%前後です。つまり、そのETFを保有しているだけで、1.5%の分配金が手に入るということです。分配金を受け取るためにETFを保有していると考えると、目の前の株価の高騰や暴落が気にならなくなります。また、キャピタルゲインより安定しやすいので、目標達成の道を描きやすいんです」

インカムゲインで教育費を準備する際、ポイントとなるのが「ETFを活用すること」だという。

「投資信託によっては分配金が出るものもありますが、多くの商品で分配金が自動的に再投資されてしまうので、実感を得にくいんですよね。その点、ETFの分配金は再投資されずに支払われるので、目標に向けて備えやすいといえます。ただし、S&P500などで米国株に投資する場合は、日本とアメリカで二重に課税されてしまうため、確定申告を行って還付を受けなければインカムゲインの恩恵が減ることには注意が必要です」

インカムゲインを狙うのであれば、国債や社債などの債券も選択肢に入りそうだが、戦記君は「投資初心者にはおすすめしない」と話す。

「国債は満期保有が前提となっていて、長期間換金ができないので、初心者には向かない資産だといえます。特定の会社の債券である社債は、個別株投資と同等のリスクがあると考えられ、企業分析や勉強が必要です。そう考えると、分散投資ができて、満期がないので永久に保有可能で、四半期に1回分配金が入ってくるETFのほうが運用しやすいのではないでしょうか」

結果的に戦記君の教育投資は「想定以上にうまくいった」とのこと。現在も運用を継続しているが、トランプショックが起きても慌てることはなかったそう。

「トランプショックの影響で、1カ月で利益が約4000万円減ったときがありましたが、それまでに積み上げてきたものがあるので、損はしていないんです。むしろ、株価が下がったタイミングは追加投資してインカムゲインを増やすチャンスと捉えているので、働いて稼いだ分を投資に回せばいいと考えています。暴落したとしても市場に残り、追加投資を考えることが目標達成のポイントだと思います」

まず行うべきは「明確な目標」を立てること

投資のコツを聞くと、「目標を定めること」という答えが返ってきた。

「『いつまでにいくら準備する』という明確な目標がないと、ひたすらお金を稼ぐという無意味な行為になりますし、目の前の暴落でうろたえてしまいやすいんです。そういう意味で、教育投資は目標に設定しやすいので、投資を始めるきっかけにもなると思います」

なぜ目標を明確にできるかというと、教育にかかる費用は読みやすいからだという。

「例えば、家を買う場合、エリアや間取り、購入するタイミングなどによって価格は大きく変わりますよね。車なども同様のことがいえます。一方、教育費は私立中高一貫校の学費が年間60万円、塾代が年間60万円など、大体の相場が決まっていて、想定を大きく上回ることは考えにくいんです」

子どもの希望も踏まえて進路を考えていくと、自ずと必要な教育費が見えてくる。そして、親の収入だけでは足りない部分を投資で補っていく、という考え方ができるのだ。

「漠然とお金を増やそうと考えるのではなく、何にいくら使うかを明確にしたうえで、必要な金額を備える投資を行うことが大切です。そうすることで目標に向けて継続しやすくなるだけでなく、堅実な投資を行うようになるので、値動きに一喜一憂しにくくなります。さらに、教育投資は家庭内での金融教育につながるという効果もあります。運用結果を親子で議論できますから。まずは、将来の教育費を明確にするところから始めてみましょう」

投資の基本を学ぶきっかけになるであろう「教育投資」。後編では、教育投資が金融教育につながる理由や、教育を実践するヒケツを戦記君に伺う。

(取材・文/有竹亮介)

お話を伺った方
戦記
教育投資ジャーナリスト。2016年から娘の中学受験の記録としてブログを始め、2020年から教育投資の状況もブログで公開し始める。現在はニュースサイトなどでの執筆活動も行っている。
著者サイト:https://senkiwork.com/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
用語解説

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