教育投資ジャーナリスト・戦記君が伝える「教育投資のススメ」後編
戦記君が実践する「教育投資を“金融教育”につなげる方法」
大切なのは親が投資判断を「言語化」すること
教育投資を行うことで親自身の知識も増え、子どもに金融について教えられるようになるというメリットもある。そのために重要なのは、「人に勧められたまま投資をしない」ということ。
「投資手法にしても投資する銘柄にしても、それを選ぶ理由を言語化することがとても大切だと思います。投資を実践している人のなかにも、説明できない人は意外と多いような気がします」
選んだ理由を明確に説明できるのは、知識があることの証明でもある。また、投資の軸がブレにくくなるため、値動きがあっても投資を継続しやすいという。
戦記君が教育投資で「S&P500」を選んだのは、“資本主義市場の新陳代謝”という側面があるから。
「よく『S&P500』と『オルカン(全世界株式/オール・カントリー)』が比較されますが、全世界の株式に分散投資する『オルカン』は基本的に組入銘柄があまり入れ替わらない商品で、“資本主義市場”そのものに投資していることになります。一方、『S&P500』はアメリカのトップ500社に絞った指数で、時価総額によって組み入れられる会社が入れ替わるので、“資本主義市場の新陳代謝”が行われている指数だといえます」
「S&P500」も「オルカン」も広く分散投資するものではあるが、その対象や仕組みが異なる。その違いを知ったうえで、選択することが重要だ。
「私は入れ替え制が好きなんです。中学受験塾では、模試の結果によってクラスが変わります。多くの子は一番上のクラスを目指して頑張っている。それと同じ構造になっているのが『S&P500』で、よりブランド力があり可能性を秘めた会社に入れ替わっていきます。その仕組みが好きなので、私は『S&P500』を選んでいます。ただし、『オルカン』がダメというわけではありません。『全世界の資本主義市場は発展すると思うからオルカンを選ぶ』など、理由を言語化できることが重要なのです」
選ぶ理由を言語化できるところまでいくと、子どもに対して投資や金融のことを説明できるようになる。
「知識が身につくと、子どもでも理解できる形で伝えられるようになります。例えば、先ほどの中学受験塾と『S&P500』の共通点を説明すると、塾に通っている子は理解しやすいでしょう。銘柄の特徴を理解できれば、子どもも『自分だったらこれを選ぶ』と判断していけます。そのためにも、まずは親が理解することが大切です」
中高生のうちに積んだ「成功体験」が将来の糧になる
多くの人が資産運用を始めるのは、社会に出て自分で稼ぐようになってから。「しかし、その時点から金融について学び始めるのでは遅い」と、戦記君は話す。
「20代で社会に出て、日々の仕事にまい進しながらキャリアアップのために勉強や資格取得をして、恋愛や趣味も楽しんで、人によっては結婚や出産、マイホームの購入などのライフイベントもあって、気付いたら30代半ばになっている。その間に金融の知識も身につけるのは、結構大変ですよね。そうこうしているうちに10~15年は損してしまいます。この間の複利効果を享受できないのです」
実際に、社会人になってから慌てて複数の保険に加入したり、知識もないままFXを始めてしまったりする人もいる。iDeCoや企業型DCの仕組みがわからず、勤務先の持ち株会にフルベットしている例もあるという。
「社会に出る前に金融や投資について理解しておかないと、正しく行動できません。特にこれから社会に出る世代の子たちは、自分自身で備えていくことが前提となる可能性が高いでしょう。ほとんどの人が資産運用をしていくことになるなら、早い段階で運用する理由や仕組み、方法を知って損はないですし、知らないと実践できませんよね。大学生は投資ができる年齢になるので、それより前の中高生の間に金融教育をしてあげたいと個人的には考えています」
知識として教えると同時に、実践に移すことも重要とのこと。
「投資や運用の実体験があると、お金の流れや利益が増える仕組み、働く意味などの理解が深まると感じています。実際に娘は自分の学費1600万円を自分の判断で投資する成功体験を積んでいるので、社会に出てからも運用を継続していくのではないかと思います」
「教育投資が金融教育につながる」。戦記君自身が実践しているからこそ、説得力のある言葉だ。
「金融市場への投資を行い、そこから得たリターンで子どもに投資をする。そこに至るまでの選択を言語化することで、金融教育にもなるという非常に合理的な行為が『教育投資』だと考えています。前編でも話したように、教育投資は目標を設定しやすいので、投資を始めるきっかけにもなると思います」
子どもの教育のために行う投資が、子どもの将来にもプラスの影響を与えるかもしれない。そう考えると、投資に関する学びにも前向きに取り組めそうだ。
(取材・文/有竹亮介)