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江戸時代から続く“歴史”と“文化”を取り入れたマナー啓発活動を実施

浅草地域が取り組むオーバーツーリズム対策のキーワードは「江戸」と「ごみ拾い」

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多角的に推進している「ごみのポイ捨て防止」

観光マナー啓発の一環で、ごみのポイ捨てを防止する取り組みも実施。2024年12月から2025年1月にかけて、主に外国人観光客を対象に持ち帰り用ごみ袋を配布した。

「ごみ袋自体がポイ捨てされてしまう可能性もありましたが、2カ月間で約8000個を配布し、道端に落ちていたとの報告はありませんでした。ごみの減少につながったかという点は、検証を進めているところです」(横倉さん)

同じ期間に、侍や忍者などのコスチュームに身を包んだスタッフがごみ箱を持って巡回し、ごみのポイ捨て禁止啓発を行う取り組みも実施した。

画像提供/台東区
ごみのポイ捨て禁止啓発活動の様子。

「歴史を感じさせるコスチュームは外国人観光客の方々の興味を引いたようで、記念撮影を求められることも多くありました。旅行者の方々へのアピールにつながったと同時に、地域の方々にも区が観光客に対する啓発に本格的に動き出したことを伝えられたのではないかと感じています」(弓良さん)

さらに、12月と1月に1回ずつ、ごみ拾いイベント「清走中」も開催。参加者は日本人のみとなったが、ゲーム性のあるイベントで地域の美化を推進した。

ポイ捨て防止の取り組みをきっかけに、ポイ捨てされたごみの種類や捨てられている場所の分類・分析も進め始めている。

「ごみとして捨てられやすいものや捨てられやすい場所を客観的なデータとして明確にすることで、その物を販売している店舗や場所を管理している会社にお声掛けした際に、実情をご理解していただきやすくなると考えています。また、ポイ捨ての解決策を一緒に考えたり、ごみ拾いイベントなどに協力していただいたり、チームを組んで対応していけるという期待もあります」(横倉さん)

観光客と地域住民の「悩み」を解消する役割

外国人観光客や地域住民の悩みの解消にも動き出している。そのひとつが、2024年11月に公開した「トイレ・公衆喫煙所マップ」。

トイレ・公衆喫煙所マップ

画像提供/台東区
「トイレ・公衆喫煙所マップ」の表示イメージ。日本語・英語・中国語・韓国語に対応。

「地域の方々から『トイレや喫煙所の場所を聞かれることが多い』といったご意見がありましたので、浅草地域の公衆トイレ・公衆喫煙所・給水スポットを示したマップを制作し、インターネット上で公開しました。サイトにアクセスできるURL・QRコードを記載したスタンドやカードなども製作して各店舗に配布し、ご案内の際に活用していただいています」(弓良さん)

もうひとつの悩み解消につながる取り組みが、「店頭行列の緩和実験」。順番受付サービを活用し、人気店の行列を解消する実験を行った。

「予約制にすることで行列が解消し、歩行者の通路が確保され、近隣の店舗に迷惑をかけることもなくなります。暑い時期は熱中症対策にもなりますし、並んでいた時間の分だけ自由に動けるようになるため、地域での消費活動がさらに活発化するなど、オーバーツーリズム対策以外の効果も期待できます」(弓良さん)

「今回の実験は1店舗のみでの実施となりましたが、説明会にはたくさんの事業者さんが参加してくださったので、事例を積み重ねながら、展開していけたらと思っています。実験からわかった効果もありました。予約制にしたほうが、キャンセル率が下がるという点です。これまでは30分並んだ末に『もういいか』と帰ってしまう人がいましたが、予約すれば40分後にすぐ買えるというシステムであれば、『もういいか』がなくなるんですよね。この効果をきちんと伝えていきたいです」(横倉さん)

2024年度の取り組みを受けて、台東区は2025年度の施策に動き出している。

「昨年度は主に浅草地域で進めたので、今年度は上野地域にも拡大していこうと思っています。また、年末年始に行ったごみ拾いイベント『清走中』は日本の方のみの参加でしたが、今年度は外国人観光客の方にも参加していただける事業を展開したいと考えています」(弓良さん)

「今後も関係団体と連携しながら、持続可能な観光地づくりを進めていきたいと思っています。行政だけでは難しい部分もうまく補い合うことが、円滑に進めるコツだと感じています。そして、いずれは地域と連携しながら取り組みが進んでいく形になることが理想です。そのために、いまは種を蒔いているところです」(横倉さん)

地域の特性を活かし、観光客や地域住民に楽しんでもらいながらマナーを伝える取り組みを進めている台東区。日本を代表する観光地として、ひとつのモデルケースとなるかもしれない。

(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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