施策のテーマは観光客も巻き込んだ“レスポンシブル・ツーリズム”
交通情報サイト開設に駐車場料金改定…白川郷が取り組む「オーバーツーリズム対策」に迫る
外国人観光客の意見を受け、国内外の観光地で行われている取り組みを調べたところ、ハワイで推進されていた「レスポンシブル・ツーリズム」という考え方を見つけた。
「レスポンシブル・ツーリズム」とは、観光に関わるすべての人が地域の環境・文化・経済社会に影響を与えることを自覚し、責任を持つべきであるという考え方で、そこには旅行者も含まれる。ハワイではビーチクリーン活動や地域の文化イベントへの参加、マイボトルやエコバッグの持参などが推奨されている。
「白川郷でも『レスポンシブル・ツーリズム』を取り入れ、発信したほうがいいのではないかという話になり、2023年から村が主体となって本格的に取り組み始めました。まずは、持続可能な観光地づくりを意識して特に実践していただきたい観光マナーを5つに絞り、『白川郷 観光&マナーブック』というリーフレットの作成・配布を開始しました。さらに、『レスポンシブル・ツーリズム』の考え方を発信するための特設サイトも立ち上げました」
白川郷レスポンシブル・ツーリズムサイト https://www.vill.shirakawa.lg.jp/srt/
白川郷で伝えている観光マナーは、「指定駐車場をご利用ください」「火の取り扱いは厳禁です」「ゴミは思い出とお持ち帰りください」「宿泊客を除く夜の観光を受け入れていません」「ドローンは禁止となります」の5つ。認知は少しずつ広まってきているようだ。
「目に見える変化があったわけではありませんが、夜間に白川郷に到着された方からの『どこに駐車したらいいですか?』といった問い合わせが減るなど、一定の効果は出ているように感じます。また、住民の方々から『リーフレットやウェブサイトができたことで、観光客にマナーを伝える際に説明しやすくなった』といった評価をいただいています」
交通渋滞緩和を目指した「交通情報サイト」
2024年には、白川郷周辺の交通状況を事前に確認できる情報サイト「白川郷すんなり旅ガイド シラカワ・ゴーイング(SHIRAKAWA-Going)」も開設。
白川郷すんなり旅ガイド シラカワ・ゴーイング(SHIRAKAWA-Going) https://shirakawa-going.jp/
サイト内には、この先3カ月分の駐車場の混雑予想をまとめた「混雑予想カレンダー」や、白川郷周辺の道路や駐車場の状況をリアルタイムで届けてくれる「交通ライブカメラ」、白川郷につながる道路の規制状況を掲載した「各道路の交通規制状況」などが用意されている。
「白川郷の駐車場につながる道路が1本しかないこともあり、駐車場待ちの車で渋滞が起こって、住民の通勤や移動に支障をきたしていました。ただ、地理的にも費用的にも道路を新設することは難しく、駐車場を増やすとさらに集落が混雑してしまう可能性があったため、一度情報を丁寧に発信してみようという判断に至りました」
集落に向かう国道(写真左)から白川郷インター出口(写真右下)のなかまで渋滞が延びている様子。
それまでは観光協会のSNSなどを通じて渋滞情報などを発信していたが、情報が分散してしまうため、観光客に届きづらかった。サイトを設けることで情報が集約するだけでなく、紙媒体やSNSなどにQRコードやリンクを貼り、誘導しやすくなったという。
「白川村を訪れたまたは訪れる予定の旅行者の方々に、2024年12月から2025年1月にかけて実施したアンケートでは、92%の方が『白川郷に行くときには、シラカワ・ゴーイングを参考にしたい』と回答されました。認知度が上がってきていると感じます。ただし、日本語版サイトのアクセスが累計28万回を超えている一方、英語版や中国語版はそれぞれ1万回弱にとどまっています。インバウンドの皆様の認知がカギになるので、訪日外国人向け観光情報サービス『LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO』などと提携し、情報発信を行っていきたいと考えています」