相場格言とかぶオプコラム

【格言かぶオプコラム】第4回:買い難平(ナンピン)決してせざるものなり

提供元:株式会社シンプレクス・インスティテュート

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【かぶオプコラム】
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【格言かぶオプコラム】第3回:売り損ないの後悔は苦痛 | 東証マネ部!

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江戸時代、相場の町・堂島に名を轟かせた相場師・本間宗久。その格言をもとに、これまで3回にわたり、現代の投資家にも通じる相場の教訓をひもといてきました。
今回は、本間宗久の格言シリーズの最終回です。格言コラム自体は今後も続きますが、本間宗久の登場は、ひとまず今回で一区切りとなります。さて、今回取り上げるのは、少し耳に痛いこの言葉──

「買い難平(ナンピン)決してせざるものなり」

「ナンピン(難平買い)など、決してしてはならない」と、投資家の甘えに厳しく釘を刺すような一節です。

ナンピンとは、株価が下がったときに買い増しを行い、平均取得単価を下げようとする取引を指します。たとえば、ある銘柄を1,000円で100株購入したあと、株価が800円に下がったタイミングでさらに100株を追加購入し、平均取得単価を900円に引き下げる──これが典型的なナンピンです。

株価が元に戻れば損失を早期に回収できる可能性があるため、一見合理的に思えるかもしれません。しかし、株価がさらに下がり続ければ、保有株数が増えている分だけ損失は加速し、ナンピン前よりも損失額が膨らんでしまいます。

この戦略の最大の問題点は、「下がったから」という理由だけで安易に買い増してしまう姿勢にあります。株価の下落には、業績の悪化やマクロ環境の変化、需給の崩れなど、それ相応の背景があります。それらを見極めずにナンピンを繰り返せば、いわゆる“ナンピン地獄”に陥り、かえって致命的な損失を招くことにもなりかねません。

株価が下がったとき、ナンピンに走るのではなく、その株を本当に保有し続けるべきかどうか、立ち止まって考えることが大切です。そんな場面に響くのが、次の相場格言です。

「見切り千両、損切り万両」

多少の損であっても早めに手じまいすれば、新たな投資機会を逃さずに済みます。損失を小さく抑えられること自体が、大きな価値になる──そんな教訓が込められています。

とはいえ、人間には「損を確定したくない」という本能的な感情があります。含み損のまま手放せず、塩漬けにしてしまうのは、多くの投資家が経験するところです。そんなときに使える、もう一つの選択肢がカバード・コール(カバコ)です。すでに保有している株式に対してコール・オプションを売ることで、プレミアム(オプション料)を受け取りながら“時間を味方につける”戦略です。

前回(第3回)では、「含み益が出ている株を上手に手放す方法」として、ITMのカバコをご紹介しました。今回はそれとは逆に、「含み損を抱えた株を少しでも活かす方法」としてのカバコに注目します。“カバコ”は、ひとつ覚えておくだけで、利益確定の補助にも、損失の緩和にも使える。状況に応じて使い分けができる、応用力のある戦略なのです。

ここで、具体的な事例を見てみましょう。
AさんとBさんは、2025年5月16日に、トヨタ自動車の株を2,600円で100株ずつ購入しました。その後、株価は思うように上昇せず、やや下落基調が続いています。

(1)ナンピンしたAさん
6月23日、株価が2,500円に下落。Aさんはさらに100株を追加購入し、平均取得単価は2,550円に。しかし、7月に入っても株価は戻らず、評価損は拡大。保有株数は200株に増え、資金も拘束され、身動きが取れなくなっています。

(2)カバコを使ったBさん
株を購入してから10日ほど経過しても上昇の気配がなかったため、いったん売却を検討。しかし「もう少し持ちたい」と判断し、5月23日に6月限・行使価格2,700円のコールを45円で売却。その後株価は下落し、6月12日(満期日)の終値は2,616.50円でコールは行使されず、プレミアムと株はそのまま手元に。続いて6月13日には、7月限・行使価格2,600円のコールを72円で売却。これにより、受け取ったプレミアムの合計は117円(45円+72円)となり、平均取得単価は2,600円−117円=2,483円に引き下げられました。株数は変わらず100株のままです。

7月11日時点で、トヨタの株価は2,508円。Aさんは−8,400円の評価損、Bさんはプレミアム込みで+2,500円の利益という結果になりました。

カバコで得られるプレミアムは、1回あたりポジションの数%程度かもしれません。それでも、積み重ねていけば含み損をやわらげ、いずれは利益を狙えることもあります。もちろん、万能な戦略ではありません。価格が急騰すれば、売却したコールの行使により、上値の利益を逃すこともあります。それでも、ナンピンのように損失を膨らませるリスクを取るよりは、はるかに戦略的で、資金管理にも優れた方法です。

もし本間宗久が現代に生き、「かぶオプ」の存在を知っていたなら、こんなふうに語ったかもしれません。

「ナンピンはせぬがよし。だが、“持ち株”に働いてもらう道は、工夫次第で開けるものなり。」

彼が重んじていたのは、「感情で動かず、道理を守る」ことです。その精神は、現代の個人投資家にも通じる普遍的な投資の原則です。本間宗久の格言に耳を傾けつつ、「現代の知恵としてのカバコ」を、あなたの投資戦略にそっと取り入れてみてはいかがでしょうか。

(株式会社シンプレクス・インスティテュート)

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