将来の年金が減らない特別な措置も適用されるらしい

育休・産休中は「社会保険料」が免除されるって本当?

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社会保険料免除の申請は会社に申し出ればOK

産休・育休中の社会保険料を免除してもらうためには、あらかじめ申請する必要があるという。

「産休・育休を取得したら自動的に免除されるわけではなく、申請が必要です。申請を行わなかった場合は、休業前と同等の社会保険料の納付が求められます。ただし、難しい手続きが発生することはありませんし、基本的に申請できない、または申請し忘れたということはないでしょう」

川部さん曰く、「産休や育休を申請する際に、勤務先に社会保険料の免除について申し出れば、会社側で手続きを行ってくれる」とのこと。

「一般的に、会社側が産休・育休の手続きとあわせて社会保険料免除の手続きも行うと考えられます。なぜかというと、社会保険料は会社と社員が折半で納付しているものであり、産休・育休中の免除は会社にも適用されるからです。会社の負担も軽減する制度なので、産休・育休の手続きとあわせて行ってくれるでしょう」

立ち上げられたばかりの会社や小規模の会社などで産休・育休の手続きの経験が少ない場合は、社会保険料免除の申請漏れがないとはいえないため、あらかじめ社内の担当者に確認しておくことが大切とのこと。

「万が一、免除の申請が行われていなかった場合は、産休・育休中に社会保険料の納付が求められますが、後からでも年金事務所で免除の手続きを行うことでさかのぼって対応してもらうことができます。社会保険料免除に関しては2年間という時効期間が設けられているので、2年以内の産休・育休であれば、終わった後でも手続きを行うことが可能です」

復帰直後は「給料ゼロ」になる可能性がある!?

社会保険料に関しては、産休や育休から復帰した後にも注意点がある。免除の期間が「休業終了日の翌日(職場復帰した日)が属する月の前月まで」と定められているということは、復帰した月から社会保険料の納付が求められるというわけだ。

「ただし、給料に関しては、ひと月分きちんと受け取れるとは限りません。給料の締め日に勤務していなかったために給料が発生しない、または締め日までの数日しか勤務していないために日割りで計算される給料が少ないといったことが起こり得るのです。一方で、社会保険料は休業前と同等の金額が求められるので、復帰直後の給料の手取り額が大きく減ってしまう、場合によっては『給料ゼロ』になる可能性もあります」

給料よりも社会保険料のほうが多ければ、足りなかった分は翌月に請求されることになる。復帰直後は休業前の給料がそのままもらえるわけではない、と覚えておいたほうがいいだろう。

さらに、復帰後に短時間勤務に切り替える場合は、休業前よりも給料が下がることが多いため、社会保険料の負担が大きくなりやすい。

「短時間勤務で働く際は、会社が『育児休業等終了時報酬月額変更届』を提出してくれます。多くの会社では、短時間勤務の申請を行うタイミングで、同時に手続きを行えるでしょう。この制度によって、短時間勤務が開始してから3カ月分の給料の平均額から算定した標準報酬月額を用いて社会保険料が見直されるため、負担を抑えることができます」

「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出してから3カ月間の給料をもとに計算し直されるため、その間の3カ月は休業前と同等の社会保険料を支払う必要があり、4カ月目から社会保険料が見直される。

ここで少し気になるのが、標準報酬月額の低下によって、将来の年金額も減ってしまうのではないかという点だ。

「基本的に、産休や育休、短時間勤務を申請する際に『養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置』という制度の手続きも行うでしょう。この制度は、子どもが3歳になるまでの間、休業や短時間勤務によって給料が下がったとしても、休業前の標準報酬月額をもとに年金額を計算するというものです。つまり、給料が下がっても将来の年金額は下がらないということです。ただし、子どもが3歳になると、この制度の対象外となってしまいます。3歳を迎えた後も短時間勤務を続けて給料が下がっている場合は、将来の年金額も下がると考えましょう」

社会保険料の免除以外にも、生活を支える制度が充実している。基本的に、産休や育休、短時間勤務を申請する際にあわせて手続きを行えるが、心配な場合は会社に確認してみよう。

(取材・文/有竹亮介)

お話を伺った方
川部 紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。
著者サイト:http://kawabe.jimusho.jp/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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