資産1億円超のプロ投資家に聞く「市場に居続けるべき理由」前編
長期投資を実践する個人投資家が語る「安定的にリターンを得るコツ」
「長期投資」によって得られる可能性が高まる「圧倒的リターン」
投資にはさまざまな商品や手法があるが、株式投資ならではの魅力を聞くと、「圧倒的なリターン」という回答が返ってきた。
「株式を長期的に保有すれば、年平均6%強のリターンが期待できます。一般的に株式投資はリスクが高いものというイメージが強いですが、長期保有することでリターンの振れ幅が平均値に収れんしていくので、リスクを抑えながらリターンを得ることができると考えられます。この特性を理解していれば、資産形成の大きな力となってくれるでしょう」
単に株式を買えばいいというわけではなく、「長期保有」がポイントだという。値上がりしそうな株式を狙って購入し、上がったタイミングで売却する短期的な投資だと、リターンはさらに大きくなりそうだが、実際は難しいのだろうか。
「投資のプロでも株価の変動を正確に予測することはできないので、確実に上昇のタイミングを狙って投資するのは困難だと考えましょう。また、ひとつの銘柄に一点集中させる方法は、見事に株価が上がれば大きなリターンとなりますが、万が一下落した場合に壊滅的な損失を被るリスクも秘めています。株式投資を行うのであれば、複数の銘柄に分散して投資し、長く保有することをおすすめします」
長期的な株式投資は「リターンが期待できるだけでなく、インフレ対策にもなる」と、長期株式投資さんは話す。
「インフレによって物価が上がると、基本的には企業の売上も上がり、営業利益や『EPS』も増加。結果として、株価も上昇します。また、企業が保有している実物資産の価値もインフレによって上昇するため、株価の押し上げにつながるといえます」
インフレは、株式投資においては追い風になり得るというわけだ。さらに、「お金の価値を下げない」といった効果も期待できる。
「現在の預貯金は金利が低いので、銀行口座に預けていてもほとんど増えません。一方、インフレで物価は上がっていくので、そのままだと購買力が下がってしまいます。資産の一部で株式投資をしていれば、資産を増やせる可能性があるので、お金の価値を下げずに購買力も維持できると考えられます」
例えば、銀行口座に100万円預けている間に、100万円で購入できる商品が120万円に値上がりした場合、預けていた金額は変わらないが、預貯金の価値は下がったといえる。このような状況を避けるためにも、資産を増やす選択肢である株式投資が有効といえるのだ。
「株価がもっとも上がった日」を逃さないための長期保有
株式への長期的な投資は、リターンを平均化するだけでなく、大きなリターンを逃さないといったメリットもあるという。
「チャールズ・エリスの著書『敗者のゲーム[原著第8版]』では、『もっとも上昇したベスト10日(検証期間全体のわずか0.1%にも満たない)を逃すだけで、リターンの平均水準は11.4%から9.2%へと低下する。ベストの上昇日をさらに20日間逃すと、リターンは9.2%から7.7%へと低下してしまう』と記されています。つまり、『もっとも上昇した日』をつかむことができれば大きなリターンを得られるということですが、先述したように投資のプロでも狙ってつかむことは難しいものです」
「もっとも上昇した日」をつかむには、市場に居続けることが重要になるのだ。
「株価が上がらないからといって売却してしまうと、その後に株価が上がった際のリターンを得ることができません。チャールズ・エリスが記していたように、リターンの平均水準が下がってしまうのです。後になって、『あのとき売らなければよかった』と思っても、取り返すことはできませんよね」
もし、売却せずに株式を保有し続けていれば、「もっとも上昇した日」をつかむことができ、リターンの平均水準も上がる。
「長期投資を実践したからといって、『敗者のゲーム』にあるような11.4%のリターンを得られるとは限りませんが、年平均6%程度のリターンを得ることはできるでしょう。株価の変動で一喜一憂し、売却してしまう気持ちもわかりますが、長く保有するという意識を持つことが株式投資のコツではないかと考えています」
20年以上にわたって株式投資を実践してきた長期株式投資さんが行きついたのは、「長く保有すること」。後編では、初心者が陥りがちな失敗や具体的な投資術について伺う。
(取材・文/有竹亮介)