「AIで字幕生成」「株主席にせり出したステージ」で企業の想いを届ける
キーワードは「個人株主にもわかりやすく」株主総会のトレンドを追う
株式会社における最高意思決定機関である「株主総会」。株主が集まり、企業の経営に関する重要事項を決定する場だ。
以前は株主が会場に集まる「対面型」で行われていたが、コロナ禍以降、オンラインで開催される「バーチャルオンリー型」やリアルな会場とオンラインの両方で同時開催する「ハイブリッド型」の株主総会が増えてきている。
さらに、個人株主の増加に伴い、新たな取り組みをスタートさせている企業も出てきているという。株主総会の支援を行っているブイキューブ、JTBコミュニケーションデザインの2社に、近年の株主総会の傾向や事例について聞いた。
企業と株主、双方のニーズを満たす「株主総会」とは
先述したように、オンラインの会場を設けて行う株主総会には「バーチャルオンリー型」と「ハイブリッド型」が存在する。「ハイブリッド型」に関しては、オンライン参加の株主は視聴のみとなる「参加型」と、議決権行使や質問が可能になる「出席型」の2種類に分けられる。
「当社のデータではありますが、オンラインを用いた株主総会の8~9割はハイブリッド型の『参加型』、残りが『出席型』と『バーチャルオンリー型』という状況です。『バーチャルオンリー型』は会場コストを削減できるメリットがありますが、オンラインのリスクを懸念されている企業が多いため、『参加型』が多いのだと考えられます」(ブイキューブ営業本部 坂巻玲奈さん)
オンラインのリスクとは、通信トラブルによって株主総会の途中で途切れてしまい、株主総会が成立しない可能性があるという点。そのため、「バーチャルオンリー型」「出席型」に慎重になる企業も多いが、メリットもある。
「『バーチャルオンリー型』や『出席型』であれば、すべての株主に質問権が発生します。また、オンラインでの開催の場合、事前質問やチャットでの質問を受け付ける企業が多いので、『人前だと緊張して話せない』『挙手するのが恥ずかしい』と感じる方でも質問しやすくなります」(JTBコミュニケーションデザイン イベントプロデュース局 石田晶子さん)
「遠方や海外に住んでいる株主の方々からは『オンラインだと参加しやすい』といった声も届いています。なかには、議決権行使を目的とせず、単純に会社の現状や発表内容を知りたいというニーズを持つ株主の方々もいますし、現役世代では『仕事や家事の合間に視聴したい』と考えている方もいて、オンライン開催を望む声も一定数あると受け止めています」(坂巻さん)
20~40代の現役世代の個人株主が徐々に増え、株主側のニーズにも変化が表れているようだ。株主の声を受けて、企業側にも変化が出てきているという。
「個人株主の増加が影響しているのか、株主総会でのプレゼンテーションでの言葉遣いや資料のわかりやすさを重視し、当日もただ映像を流すだけでなく議長自らが自身の言葉で話すケースが増えてきたように感じます。オンラインであれオフラインであれ株主総会は株主との信頼関係を築く場であり、企業としての透明性なども期待されているため、企業側もこれまで以上に誠意を持って情報を発信していく意識が強くなっているのだと思います」(石田さん)