相場格言とかぶオプコラム
【格言かぶオプコラム】第5回:頭と尻尾はくれてやれ
提供元:株式会社シンプレクス・インスティテュート
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【かぶオプコラム】
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【格言かぶオプコラム】第4回:買い難平(ナンピン)決してせざるものなり | 東証マネ部!
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株式投資で悩ましいのは、「買いどき」と「売りどき」です。できるだけ安く買いたいし、できるだけ高く売りたい。けれど、その「できるだけ」が欲を生み、あと一歩のところで失敗してしまう。そんな経験が、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。
これまでのかぶオプコラムでは、江戸時代の相場師・本間宗久の格言を手がかりに、「下落局面での備え」や「感情に振り回されない売買」のヒントとして、かぶオプの活用法をご紹介してきました。
今回からは、時代や出典を広げて、多くの投資家に親しまれている代表的な相場格言を取り上げていきます。人の心理や失敗の傾向を言い当てた格言は、現代の個人投資家にとっても、なお色あせることがありません。
第5回のテーマは、次の格言です。
「頭と尻尾はくれてやれ」
魚を頭から尻尾まですべて食べようと欲張らず、「真ん中のおいしいところ(胴体)」だけを取ればよい──つまり、相場の天井(頭)や底(尻尾)を無理に狙おうとせず、ほどよい利益で満足すべきという教えです。欲をかいて売買タイミングを誤ることを避ける、投資の基本ともいえる金言です。
「もっと安く買えていたかもしれない」「もっと高く売れたはずだ」といった考えは、突き詰めればすべて結果論です。仮に「ここが底値だ」と思って指した価格でうまく買えたとしても、その後に1円でも下がれば「やっぱり早すぎたかも」と思うもの。1円なら気にならなくても、50円、100円と下がれば、どこかで“失敗した”と感じてしまうことでしょう。
結局、それは“程度の問題”にすぎず、完璧な底値や天井を見極めることなど、誰にもできません。
この事実は受け入れるしかありません。しかし、かぶオプを活用すれば、割り切った取引にもプレミアムという“+α”が加わり、結果的に「くれてやったはずの頭と尻尾」以上の成果につながることもあります。
今回は、ターゲット・バイイング(ターバイ)とカバード・コール(カバコ)を組み合わせて、まさにそんな結果を生んだ事例をご紹介します。
「尻尾」編:ターゲット・バイイングで買い時を逃さない
投資家によくあるのが、「あと50円下がったら…」と粘った結果、反転してそのまま上昇してしまい、結局買えなかったというケースです。
そんなとき、役立つのがターゲット・バイイング(ターバイ)です。ターバイとは、これから買おうと思っている株の銘柄に対して、「この価格で買えたら嬉しい」という価格をあらかじめ設定し、行使価格が希望の買値と等しいプットを売ることでプレミアム(オプション料)を受け取りながら株を買う方法です。オプションの満期時点の株価がその水準を下回っていれば、プットが行使されて株をその価格で買うことになります。一方、株価が下がらなかったとしてもプレミアムが手元に残ります。
たとえば任天堂(7974)の事例を見てみましょう。
2025年5月8日、任天堂の終値は12,020円。Aさんは「11,800円まで下がったら買いたい」と考えていましたが、「頭と尻尾はくれてやれ」の格言を思い出し、「12,000円で買えれば十分」と判断。6月限の行使価格12,000円のプットを475円で売却しました。
翌月の満期日(6月12日)、任天堂の終値は11,795円となり、プットは行使されました。Aさんは12,000円で株を取得しましたが、すでに475円のプレミアムを受け取っていたため、実質的な取得価格は11,525円となりました。
つまり、「もう少し下で買いたい」という気持ちを抑えて尻尾をくれてやったことで、代わりにプレミアムという“利益”をしっかりと得ることができたのです。
「頭」編:カバード・コールで売り時の迷いをカバー
一方、株価が上昇しているときにも「もう少し上がるかも…」と欲張っているうちにタイミングを逃してしまうことがあります。そんなときに活用できるのが、カバード・コールです。保有している株に対してコールを売ることで、設定した株価で株を売る義務を負う代わりに、プレミアムを受け取る戦略です。
Aさんは株を取得した翌日(6月13日)、終値11,815円を見て「12,500円で売れれば十分」と判断。7月限の行使価格12,500円のコールを246円で売却しました。
そして7月10日の満期日、任天堂の株価は12,680円まで上昇。コールは行使され、Aさんの株は12,500円で売却されました。プレミアムも含めた実質売却価格は12,746円となります。
Aさんの取引をまとめると
実質取得価格:11,525円(ターバイで475円引き)
実質売却価格:12,746円(カバコで246円上乗せ)
差額利益:1,221円/株 → 100株なら122,100円の利益
一見すると「12,000円で買って12,500円で売る」だけの、たった500円の値幅を狙った取引に見えますが、かぶオプを活用することで、値上がり幅の2倍以上の利益を得ることができました。
相場の高値や安値を事前に知ることは誰にもできません。だからこそ、「頭と尻尾はくれてやれ」という格言が生まれ、長く語り継がれてきたのです。
しかし現代には、かぶオプという“もう一つの選択肢”があります。
完璧なタイミングを狙うのではなく、納得できる価格で割り切る。そのうえで、ターバイで「くれてやった尻尾」からプレミアムを得て株を取得し、カバコで「くれてやった頭」すら超える成果を得る。プレミアムという+αを重ねることで、「胴体だけでいい」と思っていたのに、それ以上の利益を得ることすらあるのです。
かぶオプは、そんな実践的かつ合理的な投資判断を支える道具です。
次回も、よく知られた相場格言に照らしながら、かぶオプの知恵と工夫をお届けします。投資の「ちょっとしたお悩み」を、新たな切り口で解決するヒントとして、ぜひご活用ください。
(株式会社シンプレクス・インスティテュート)
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