人生を豊かに過ごす考え方「DIE WITH ZERO」~準備編~
「DIE WITH ZERO」最期に資産ゼロになるためのお金の備え方
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「必要な老後資金」を導き出す計算式
「お金の見える化」の考え方はわかったが、実際にはどのように必要なお金を導き出すといいだろうか。
「自分にとって必要な老後資金を、次の計算式で見積もってみましょう」
●用意しておきたい老後資金額の計算式
ステップ1
現在(現役世代)の年間支出×0.7=老後の年間支出(A)
ステップ2
(A-老後の年金額)×老後の年数=最低限必要な老後資金(B)
ステップ3
B+医療費・介護費(夫婦で1000万円、単身で500万円)=用意しておきたい老後資金額
「ステップ1の『0.7』という数字は、総務省の『家計調査(家計収支編)(2023年)』を参考にしています。70歳以上の夫婦の生活費は、現役世代(50~59歳夫婦)の71.6%というデータが出ているので、現在の支出に0.7をかけることで、老後の支出を大まかに把握できるというわけです。老後は子どもの教育費や住宅ローンの返済がなくなるため、支出が減るのだと考えられます。裏を返すと、老後も住宅ローンの返済が続く方や賃貸住宅に住む方は、もう少しお金がかかるといえるでしょう」
ステップ2に出てくる「老後の年金額」は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できる。現時点でどの程度の年金を受け取れるのか、チェックしておこう。
「医療費・介護費に関しては、先述した内容を考慮して、1人当たり500万円程度備えておくと安心だといえます。最低限用意しておきたい金額を明確にすることで漠然とした不安が解消され、使えるお金も見えてきます。あてのない節約をすることなく、経験にお金を使うことができるでしょう」
資産を築くコツは「金融資産への投資」
用意しておきたい金額を把握したら、あとは実践するのみ。とはいえ、何から始めたらいいのだろうか。
「人によって用意しておきたい金額は異なるので、一概にはいえませんが、夫婦2人で現預金とは別に1000万~1500万円の資産を目指すケースを例に考えてみましょう」
ポイントは「現預金とは別に」という点。頼藤さんは「金融資産への投資で、お金に働いてもらうことが大事」と話す。
「給与を増やすのは時間がかかりますし、副業を行うにしても時間の限界がありますよね。節約で支出を抑えるのも、最低限のラインがあります。一方、金融資産への投資であれば、自分自身が働かなくてもお金が増える可能性があります。また、物価上昇による資産の目減りを防ぐ効果も期待できるため、インフレ対策にもなります」
「長期」「積立」「分散」を意識した投資を実践するとともに、50代までは株式などでの積極的な資産形成がカギになるという。
「もしものときのための生活費6カ月分を現預金で確保しつつ、60歳までに投資資産500万円を築くのが第一の目標となります。60歳以降は引き続き500万円を運用しながら、労働収入の一部(月1万~5万円程度)を積立投資に回し、年3~4%の利回りで運用することができれば、70歳までに1000万~1500万円を築くことが可能だといえるでしょう」
ちなみに、ここで重要なのが「お金を使うこと」。ついお金を備えることに注力してしまいそうだが、若い間に経験を積むことこそ、「DIE WITH ZERO」の醍醐味だ。
「余裕資金を経験や思い出に使うことが前提ではありますが、運用資産が想定よりも大きくなっているようであれば、そのなかから取り崩すのもひとつの方法です。その場合は、年間利回りを超えない範囲で使いましょう。例えば、年間利回りが4%であれば、資産の4%を取り崩しても元本を減らさずに済むからです。投資を行うことで、経験や思い出に回せるお金も増えるといえます」
必要なお金を見える化したうえで、そこに向かって資産形成していくのが理想の形だ。そして、使っていいお金は思い切って経験・思い出に充てる。そうすることで、金銭的な不安を解消しつつ、充実した日々を送れるようになるだろう。
(取材・文/有竹亮介)