人生を豊かに過ごす考え方「DIE WITH ZERO」~実践編~
70代から始める「DIE WITH ZERO」に向けたお金の取り崩し方
資産の取り崩しの基本は「前半定率・後半定額」
投資しながら取り崩すというベースはわかったが、いざ取り崩す際は、お金が必要になった分だけ取り崩すような形でいいのだろうか。
「資産の取り崩しの基本は『前半定率・後半定額』です。『定率』とは、『毎月資産の○%ずつ』のように毎月一定の割合で取り崩すこと。『定額』とは、『毎月○円ずつ』のように毎月一定額を取り崩すことです」
●定率取り崩し
取り崩し額が引き出すタイミングによって変わるため、計画を立てづらいというデメリットはあるが、割合で見ていくため資産が減りづらく、「資産寿命」が延びる。
●定額取り崩し
取り崩し額が一定となるため、生活費の目途が立ちやすくなる一方、「定率取り崩し」と比べると資産が減りやすい。
頼藤さん曰く、「健康で元気な老後の前半は『定率取り崩し』、後半は『定額取り崩し』がマッチしやすい」とのこと。
「70歳以降も運用を継続するということは、資産の値動きによって資産残高も変動することになります。例えば、2000万円の資産を10年にわたって『定額取り崩し』で年間160万円ずつ取り崩すとします。平均収益率4%で、前半に収益率が高いパターンと後半に高いパターンを比べると、10年後の資産残高に500万円ほどの差が生じるのです。一方、『定率取り崩し』であれば、収益率の高さに関係なく、10年後の資産残高は同じになると考えられます。『定率取り崩し』だと、収益率の高いときは取り崩す額が多くなり、収益率が低いときは少なくなるからです」
だからといって、ずっと「定率取り崩し」を続けていると、いつまで経っても資産はゼロにならない。ある程度のタイミングで「定額取り崩し」に切り替えることで、資産ゼロを目指すことができる。
「資産が半分くらいに減ったら、『定額取り崩し』に変更することをおすすめします。後半は取り崩す金額を維持して安心感を得ながら、最後まで資産を使い切ることができるでしょう」
「投資資産」を90代前半まで取り崩すイメージ
資産を取り崩す際の割合や金額は、どのように考えていくといいだろうか。
「資産額や働き方によって変わりますが、65歳で退職した時点で資産1500万円を築いた人のケースで考えてみましょう。65歳から受け取る老齢年金は手取り月15万円とします。資産の内訳は『もしものための現預金300万円』『CF資産300万円』『投資資産900万円』で、『投資資産900万円』を取り崩していきます。その間、運用利回り・配当利回りともに年4%と仮定しましょう」
年利4%で運用しながら、投資資産900万円を取り崩していく場合、前半は1年ごとに定率8%で取り崩し、資産450万円を切った辺りで定額年50万円ずつ取り崩していくと、92歳まで老齢年金なども含めた手取り収入約20万円を得ることができる。
「92歳以降取り崩せる投資資産はなくなりますが、『もしものための現預金』『CF資産』は手元に残るので、長生きしたとしても焦ることはないでしょう。もっと資産が多かったり、65歳より長く働いたりすれば、さらに資産寿命は延びます。労働収入があれば、老齢年金を繰り下げて受給額を増やすこともできますし、何より働くモチベーションによって健康にもプラスの影響が出る可能性があります。元気に体が動くのであれば、長く働くことも考えましょう」
ちなみに、金融機関によっては「定率取り崩し」「定額取り崩し」を自動的に行ってくれるサービスを導入しているところが出てきている。
「楽天証券の『定期売却サービス』では、毎月0.1%以上0.1%単位で定率取り崩しを行う『定率指定』、毎月1000円以上1円単位で定額取り崩しを行う『金額指定』から選択できるので、『前半定率・後半定額』を実践しやすいでしょう。SBI証券の『投資信託定期売却サービス』は定額取り崩しのサービスですが、2025年中に定率取り崩しにも対応する予定と発表されています」
70代というとまだ先の話と感じる人は多いかもしれないが、取り崩し方を把握することで、老後の生活費を想像しやすくなるだろう。いまのうちから、なんとなくでも考えておくことが大切だ。
(取材・文/有竹亮介)