ニッポン、新時代

日本株の魅力は「掘り出し物の優良銘柄がたくさんあること」

「逆張り思考」がもたらす大きなリターン、シュローダー・前田建氏は“飛躍する小型株”をどう探すのか

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不人気になっても「追い続ける」のが逆張りの心得

不人気な銘柄にあえて注目する、多数派が見ていない要素に目をつける――こうした逆張りの思考が持つメリットは何か。前田氏に聞くと、「簡単に言えば、少数派意見の中から正解を見つけた方がリターンは大きくなるということです」と答えた。そして投資とは、「少数派が勝つ世界だと考えています」と続ける。

「どこかで話題に上る銘柄は、すでに株価がかなり上昇した後であることも少なくありません。登山でいえば6、7合目まで来ているかもしれない。すると、その後値上がりするとしても、それほど大きな上昇にはならないとも考えられますし、意外と早くピークを迎えてしまうかもしれません。つまり、一見勝つ確率が高そうなため魅力的に見えても、実際には確率とリターンを掛け合わせた“期待値”が高くない。それなら私は、まだ上昇局面の序盤に位置していると思われる銘柄や下落局面の終盤に差し掛かっていると思われる銘柄を優先して探します」

ではどのように見つけるのか。たとえば、ある時の経営状況から評価が大きく下がった銘柄があるとする。こうして不人気になった銘柄を「追い続けることが大切」だという。なぜなら失敗を機に企業が改革を進め、どこかで変わる可能性があるからだ。あるいは単に景気や業界サイクルの下降局面に位置しているということであれば、いずれ回復に向かう可能性が高いと考える。「人気が一気に落ちた銘柄も目を離さず、割安になったタイミングや良くなる兆候が見つかった際に投資するのが一つの方法です」。

なお、投資には「バリュートラップ」という言葉がある。PERやPBRで「割安」と判断された銘柄でも、一向に値上がりしない状況を意味する。逆張りにはこうしたリスクも存在するが、「私はそこにとらわれず、飛び込んでいくことが多いですね」と前田氏。バリュートラップを警戒しすぎると判断が遅くなるからだ。それは機会損失になる。もちろんその分、今後上がる可能性はどのくらいか、変わり目があるかを入念に分析する。

「逆張りの思考は、誰にでもフィットするものではありません。私は昔から人の反対を行くタイプでした。アーティストも“売れる前”が好きで、人気が出過ぎると熱が冷めてしまいます(笑)。同じような性格の人には合うのではないでしょうか」

ようやく小型株にとって良い環境が整ってきた

シュローダーの伝統が前田氏の強みになっているのは先述の通り。それに加えて、「バリュー株からグロース株まで守備範囲が広いのも私の武器だと思っています」と話す。

バリュー株とは、本来の企業価値より株価が低い状態(割安)にある銘柄。グロース株は、今後高い成長が見込まれる銘柄。前田氏は、キャリア序盤にグロース株や小型株の運用を経験し、その後バリュー株や大型株の扱いも多くなった。そのため各方面に精通しているという。

注目すべきは、同氏が今後「日本株の中では小型株のパフォーマンスが良くなる」と見ていることだ。

日本の大型株が伸長したここ数年。その反面で、小型株は良い状況と言えなかった。しかもこの“停滞”はかなり長く続いた。その理由について、前田氏は「大型株に有利な要素がいくつも重なったため」と分析する。具体的には、円安や持ち合い株の解消()、が進んだことだ。さらに東証市場改革やESG投資も「大型株にプラスの影響を及ぼしました」と話す。その分、小型株の停滞は長引いたと見ている。

事業会社とメインバンクや取引先企業が互いに株式を持ち合うことを解消すること

「こうした中で、小型株のPERは大型株との相対比較において、過去20年で最も低い水準まで落ち込んでいます。かなり割安な状態でしょう。一方、先に挙げた大型株の好材料は一段落した印象。ようやく小型株が見直されやすい環境が整ってきたのではないでしょうか。潮目が変わる可能性はあると思います」

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。

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