ニッポン、新時代

日本株の魅力は「掘り出し物の優良銘柄がたくさんあること」

「逆張り思考」がもたらす大きなリターン、シュローダー・前田建氏は“飛躍する小型株”をどう探すのか

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日本株の大きな魅力の一つは「多数の優良で割安な小型株が存在していること」だと前田氏。「海外投資家は日本の大型株中心の取引であり、小型株には目が行き届いていません。割安でチャンスのある銘柄が残っている可能性が高いのです」。

あとは、どのように優良な小型株を見つけるかだ。前田氏が個人投資家に推奨するのは「銘柄のスクリーニング」の実践。スクリーニングとは、いくつかの条件を設定して、それに見合った銘柄を探し出すこと。たとえばPBRはこの数値以下、ROE(自己資本利益率)はこの数値以上と条件を設け、それを満たす銘柄を抽出する。現在はさまざまなツールがあり、「一般の個人投資家もいろいろな条件で検索できるでしょう」と話す。

「試しにROEや営業利益率、自己資本比率、PBR、PERなど、いくつかの条件で厳しめの数値を設定し、それらの条件を全て満たす銘柄を探してみてください。こうした優良かつ割安な銘柄は、大型株ではすでに評価されていることも多く見つけにくいですが、小型株ならまだ目をつけられていない可能性があります」

もし条件を満たす銘柄が見つかったら、決算資料や中期経営計画で“裏付け”を取ることが重要。「なぜ良い指標が出ているのか、持続的な成長が可能か、割安に見えても何か大きな懸念材料を抱えていないのか、など、企業の実態と照らし合わせて確認しましょう」。そこで納得できたら行動に移す。可能ならこうした銘柄を複数見つけ、「分散投資するのが理想です」とアドバイスする。

「日本の市場は流動性が担保され、情報も豊富です。それほど環境が整っていながら、割安銘柄や掘り出し物がたくさんある。この環境を生かすことが大切ではないでしょうか」

投資では「完璧なタイミング」を狙いすぎない

取材の締めくくりに個人投資家へのメッセージを尋ねると、「今は投資を行う人にとって幸せな時代です」と前田氏。「バブル崩壊以降1990年代から2000年代にかけての日本株市場は長期に渡る停滞期でした。今はそこを抜け出して右肩上がりで推移していますから、株高の恩恵を受けやすいですよね。だからこそ、多くの人が投資に親しんでほしいと思います。昨今のインフレ環境下では、放っておくと実質的な資産価値が目減りしてしまうことも考えると尚更です」。

その上で、次のようなアドバイスを口にする。――完璧な取引タイミングを狙いすぎないこと、バリュエーションの基礎を学ぶこと、自分と似た投資スタイルの“師”を見つけてコピーすること――

これらの意味を簡単に説明したい。まず、最高値で売却するなどの「完璧なタイミング」で取引するのは難しく、狙いすぎると動けなくなる。次に、バリュエーションの基礎を知っているかどうかで雲泥の差が出る。最後に、どんな投資スタイルでも先駆者がいるのでその人を真似ると素早く上達する。これらが重要だという。

そして最後に「時間を味方につけてほしい」と語る。「個人投資家なら自身の責任の下、10年、20年後を見据えて長期の時間軸で取引することもできるはずです。市場が急落した時に仕込んで、その後の上昇を気長に待つことも可能。いざという時にこうした投資行動を取れるかが、分かれ目になるでしょう」。

シュローダーの伝統と、自身の長所を融合して運用を行う前田氏。日本株のスペシャリストが伝えた最後の言葉は、奇をてらわない、むしろ“順張り”の真っすぐさを感じた。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2025年9月現在の情報です

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。

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