企業業績・需給面から見る日本市場の持続性
最高値を更新する日本市場の現状
提供元:マネックス証券
年初から株式市場の下押し材料となっていた米政権の関税政策に、落としどころが見え始め、日本は7月下旬には相互関税・自動車関税ともに15%で合意しました。これを受け、夏場の日本市場は急ピッチで上昇し、8月18日にはTOPIX・日経平均ともに史上最高値を更新しました。
急ピッチで上昇していることで、一部には日本株の割高感が意識されています。そのほか、合意に至ったものの従来と比べれば負担増となる関税の影響により、先行き企業業績の下押し圧力がかかるのではといった不安材料を残しながらの最高値更新に懸念を感じている投資家の方も多いのではないでしょうか。本レポートではファンダメンタルズや需給などの観点から、現在の日本市場を確認して行きます。
【図表1】TOPIXのEPS予想成長率
出所:FactSetよりマネックス証券作成
まずは利益成長ですが、主には関税政策やそれによる不透明感を理由に、2025年の業績は従来予想されていた数値よりも、昨年と比べると10%ポイントほど1株当たり利益成長率は鈍化が見込まれています。一方で、2026年・2027年は10%程度の成長に持ち直すと市場は見込んでおり、関税政策の影響は一時的との見方が優勢です。
ある程度の期間が経つことで、企業側のサプライチェーン最適化や、2026年には米国が中間選挙を控えており、足元で支持率低迷が続くトランプ大統領が、関税政策を緩和していくといった見方によるものと推察され、先行きの利益成長は例年並みに回帰すると予想できます。
【図表2】日本の名目GDPとTOPIXの推移
出所:内閣府、ブルームバーグよりマネックス証券作成
また、直近では2025年4~6月期の国内総生産(GDP)1次速報値が発表され、実質GDPは前期比年率1.0%増と、市場予想を上回る堅調な結果となりました。同期間の4月には、トランプ大統領が「解放の日」と称し、関税政策の方針を発表するなど、不確実性が急激に高まった最中でしたが、日本経済が底堅い成長を見せたことは株式市場に安心感を与える材料となりました。
図表3は名目GDPとTOPIXの推移を重ねたものです。株式も名目ベースであることから、名目の国内総生産が拡大した際には、株も上昇する傾向にあると言え、実際にコロナショック以降のインフレ下においてTOPIXも上昇しており、歩調を合わせて推移していることが確認できます。
日本のインフレは当面の間、日銀がターゲットとする2%を上回っての推移が見込まれ、この点は名目GDPの成長を支える材料となるでしょう。また、今回発表されたデータからは設備投資を中心に堅調さがうかがえ、経済成長の面でも底堅い動きが実現できれば、一段の株高シナリオも描くことができます。
【図表3】企業の自社株買い設定額
出所:QUICKよりマネックス証券作成
需給面では、足元の日本株の主な買い手は海外投資家となる中で、企業の自社株買い金額も昨年を上回るペースで設定されています。自社株買いは、一般的に市場に流通する株式を買い付けることから、株式の需給のタイト化につながり、これは株価上昇に寄与するものです。
また企業の財務面では、EPS(1株当たり利益)やROE(株主資本利益率)の向上など利益や資本効率の改善に寄与するため、ファンダメンタルの面でもプラスの効果があり、これらが投資家からの評価にもつながるといった期待がされます。PBR改革が話題になって以降、一部の企業では資本効率を意識した経営に舵を切っている印象で、この点も株高を支える材料と言えるでしょう。
依然として不透明感が払しょくしきれない中でも、今回は日本経済や株式市場が改善している・よくなっているポイントを紹介しました。日本に明るい兆しをみることができ、これを機に国内資産にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
(提供元:マネックス証券)
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