相続の可否を決めるカギは「サービスの利用規約」
故人が残した「電子マネー」は相続財産になるのか?
電子マネーの相続を見越してやっておきたいこと
万が一、自分自身が不慮の事故などで亡くなった場合、家族が遺産を整理することになる。そうなったときに電子マネーをはじめとするデジタル遺産のありかを明確にできるよう、やっておくべきことはあるだろうか。
「まずは、利用しているサービスやそれぞれのパスワードなどを、スマートフォンのメモ帳などにまとめましょう。そして、スマートフォンのロックを解除するパスワードをエンディングノートに書いたり、家族・親族以外の信頼できる第三者に伝えておいたりすることをおすすめします。近親者よりも第三者のほうがスマートフォンに近付く機会が少ないですし、相続に関係することなので近親者よりも安心感があるでしょう」
ある程度年齢を重ねて相続などを考えるようになったら、保有している資産を洗い出し、スマートフォンだけでなく、エンディングノートや遺言書にまとめておくことも重要だという。
さらに、もうひとつ、終活としてやっておきたいことがある。
「多くの電子マネーはチャージできる金額に上限があります。SuicaやPASMOは2万円、WAONやnanaco、楽天Edyは5万円に設定されています。仮に上限いっぱいまでチャージしたまま亡くなったとしても、その数万円は遺産全体から見るとわずかな額であるケースが多く、そのために家族に払い戻しなどの手間をかけるのは申し訳ないでしょう。ある程度の年齢を迎えたら、電子マネーは少額ずつチャージし、できるだけ使い切ることも終活のひとつといえます」
頑張って貯めた「ポイント」は原則として相続不可
小売店やサービスを利用することで貯まるポイントも、「1ポイント=1円」のように現金と近い形で使えることが多いが、相続できるのだろうか。
「ポイントは資産ではなく、あくまで特典という性質が強く、利用規約で相続や譲渡が認められていないケースがほとんどでしょう。ポイントを貯めていた方が亡くなった場合、どれだけ多くのポイントが貯まっていたとしても引き継がれずに消滅してしまうので、生きている間に使い切ることが大切です」
飛行機に乗ると貯まるマイルも、ポイントと同じようなイメージだが、実は相続できることが多いそう。
「航空会社の規約によりますが、多くの航空会社でマイルの相続は認められています。JALやANAのホームページには、『亡くなられた会員のマイル口座に残る有効なマイルを、法定相続人へ相続することが可能』と明記されています。マイルが残っている場合は、航空会社に問い合わせてみましょう」
各社の利用規約によって、相続の可否が変わってくる電子マネーやポイント。利用しているサービスを整理し、相続できるものに絞っておくのも、ひとつの手かもしれない。
(取材・文/有竹亮介 撮影/大庭元)