【調査を読み解くシリーズ】詐欺被害額が窃盗被害額を逆転!急増するSNS型詐欺
提供元:アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所
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「調査を読み解く」シリーズの第5回です。今回のコラムでは、SNS型投資・ロマンス詐欺に関するデータを見ていきたいと思います。
【目次】
▶急増するSNS型詐欺の被害
▶誰しもが詐欺のターゲットとなる可能性
▶詐欺から身を守るには
急増するSNS型詐欺の被害
SNSを利用した詐欺が急増しています。2025年7月29日に警察庁が公表した「令和7年版警察白書」では、「SNSを取り巻く犯罪と警察の取組」というタイトルの特集が組まれ、その冒頭でSNS型投資・ロマンス詐欺が取り上げられています。
過去、財産犯(お金やモノなど、財産権を侵害する犯罪)の主役は「窃盗」でした。【図表1】の通り、2010年頃までは窃盗の被害額の方が大きく、以降は窃盗と詐欺とで被害額は同程度で推移していましたが、2023年から詐欺の被害額が急増しました。2024年の財産犯の被害額は4,000億円を超え、窃盗の被害額789億円に対して詐欺の被害額は3,075億円と、詐欺への対策が急務となっています。
【図表1】
被害が拡大している詐欺の手口の中でも今回注目したいのがSNS型の詐欺です。【図表2】はSNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺の毎月の被害額の推移を2023年1月から示したもので、2023年半ばから2024年春頃にかけて急増していることが分かります。2024年の詐欺の被害額3,075億円に対して、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の被害額合計が1,272億円と40%超を占めるまでに至っています。
【図表2】
誰しもが詐欺のターゲットとなる可能性
多くの人がスマホを持ち、複数のSNSを利用しています。これまでに怪しいメッセージやメールが送られてきた記憶はないでしょうか。
【図表3】はSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺のそれぞれの被害者の年齢層です。どちらの詐欺においても男性、女性ともに40歳代から60歳代の被害が中心ではあるものの、幅広い年齢層に分布しており、誰しもがSNS型詐欺のターゲットとなる可能性があります。
【図表3】
出所:警察庁「令和7年上半期における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
最近の詐欺の手口は巧妙で、一見しただけでは本物なのか偽物なのかの区別が難しくなっています。AI技術が進化し、専門知識を持ち合わせていなくても多くの人々が利用できるようになったことも、手口が巧妙になっている要因の一つであると考えられます。AIによって生成された精巧な画像、動画、音声などを悪用するような手口も増えているようです。技術進化の悪用によって、「自分は絶対に引っかかることはない」と思っている人でも騙される可能性があり、誰しもが注意をする必要があります。
詐欺から身を守るには
急増するSNS型詐欺から身を守るためには、詐欺の手口を知り、「もしかして詐欺かも」という感度を磨くことが重要です。また、技術進化によって詐欺の手口もどんどんと巧妙化しているので情報のアップデートも必要です。
警察庁の資料によると、SNS型詐欺の特徴は以下の通り、押さえておきたいポイントは4つです。(【図表4】)
1.当初接触手段・ツール
2.被害時の連絡ツール
3.金銭等の要求名目
4.被害金等交付形態
【図表4】
SNS型投資詐欺、ロマンス詐欺ともに多く共通している内容があります。
1.当初接触手段・ツール
SNSやマッチングアプリを利用し、ダイレクトメッセージで接触してきます。SNS型投資詐欺では著名人が写ったバナー広告などを利用する場合も多くみられます。
2.被害時の連絡ツール
ダイレクトメッセージなどで接触後、LINEに誘導されるケースがほとんどです。
3.金銭等の要求名目
LINEでのやりとりを経て、株式投資や暗号資産投資を持ちかけられるケースが目立ちます。
4.被害金等交付形態
振込を求められるケースが大半ですが、暗号資産の送金を求められるケースが増えてきています。
同じく警察庁の資料から、SNS型詐欺の手口の特徴を踏まえた注意点をご覧ください。(【図表5】)
会ったことがない人からお金の話をされた場合は注意が必要です。また、「絶対儲かる」ような投資は存在しないことを念頭に置き、そのような提案があったら詐欺を疑う心掛けが必要です。
【図表5】
技術の進化によって、今後も新たな詐欺の手口が出現することが想定されます。少しでも疑わしく感じたら警察や信頼できる人に相談することも重要です。
(執筆 : アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所 坂内 卓)
当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が作成したものです。当資料は、アセットマネジメントOne株式会社がお客さまの理解を深めていただくために情報提供を目的として作成したものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。アセットマネジメントOne株式会社は、投資家に対する投資勧誘は行いません。また掲載データは過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。当資料における内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。
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研究員
証券会社で個人投資家向けの商品企画や営業企画を携わった後、IT企業でフィンテックアプリの運営を担う。2020年アセットマネジメントOneに中途で入社後は営業企画や新規ビジネス企画などに従事。2024年4月より現職。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士