公示地価(公示価格)とは?基準地価との違いもわかりやすく解説

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公示地価(公示価格)とは、国が毎年発表する土地に関する価格です。公表に先立って、鑑定評価員による評価結果について土地鑑定委員会による審査が行われます。

公示地価は、ビジネスだけでなく、マイホームを購入する際や売却する際などプライベートでも活用する機会のある指標です。そのため、意味を理解しておくと将来役に立つでしょう。

本記事では、公示地価の決め方や調べ方について解説します。

公示地価(公示価格)とは

公示地価(公示価格)とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年3月に公示する(2025年は3月18日発表)、標準地における価格です。

土地鑑定委員会が公示地価を発表することを、地価公示制度と呼びます。地価公示制度の主な目的は、適正な地価の形成に寄与することです。

なお、土地鑑定委員会は、地価公示法に基づき設置されている機関です。主に地価の公示に関することや、不動産鑑定試験に関することを扱っています。

公示地価を活用する場面

公示地価は、戸建て住宅を建てるにあたって土地を購入する場面などで役に立つことがあります。実際の売買価格がわからなくても、公示地価を比較することでその土地の価格が高いかある程度把握できるでしょう。

また、転職・転勤などでマイホームの売却を検討する場面でも、公示地価を活用できます。売却価格を決める際に公示地価を参考にすることで、いくらくらいで売却できるかの見当をつけやすくなるためです。

公示地価の決め方

公示地価を決める際の流れは、以下の通りです。

1. 実地調査を実施する
2. 新たな標準地を選定する
3. 取引事例を収集して鑑定評価を実施する
4. 土地鑑定委員会が審査して公表する

ここから、各手順でどのようなことが実施されているのかについて、詳しく解説します。

1. 実地調査を実施する

公示地価を決めるにあたって、全国に約26,000地点所在する既存の標準地の実地調査をして、点検します。点検の役割を担うのは、土地鑑定委員会から委嘱された、不動産鑑定業者の業務に従事する鑑定評価員です。

既存の標準地が適格性を有しているか、基準地との関連で標準地の配置が適切かなどの点について、点検します。

2. 新たな標準地を選定する

要件を満たさないことが判明した場合は、土地鑑定委員会が新たに標準地を選定します。標準地として選ばれるのは、都市計画区域内(※)に所在する代表的な地点です。

公示地価は不動産価格を決める際に使われる指標のひとつであるため、以下の点に留意して新たな標準地が選定されます。

・代表性(対象エリアの地価水準をできる限り代表しうるか)
・中庸性(対象エリア周辺で、利用状況・環境・地積・形状などに偏りがないか)
・安定性(利用状況が安定したエリアに所在し、一般的な用途に適合しているか)
・確定性(土地登記簿や住居表示などで明確に他の土地と区別されていて、容易に確認できるか)

なお、上記いずれかの要件を満たさないことが点検で判明した場合に、別の地点で選定し直されます。

※都市計画法の規定が適用されるエリア。市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域に分類される。

3. 取引事例を収集して鑑定評価を実施する

標準地を選定したら、周辺の取引事例を集めたり、地価動向に関する資料を収集したりして、分析・検討を進めて1月1日時点における対象標準地の鑑定評価を実施します。

鑑定評価を実施するのは、1地点につき2名以上の不動産鑑定士(鑑定評価員)です。鑑定評価には、取引事例比較法・収益還元法・原価法の3手法が使われます。

取引事例比較法は、周辺で実際に行われた土地の取引価格を参考にして、価格を決める方法です。収益還元法は、対象の土地で将来得られる収益を現在の価値に換算して価格を決める方法を指します。原価法は、対象の土地を再度購入する場合に必要な価格を求めたうえで、価値の下落を考慮して価格を決める方法です。

4. 土地鑑定委員会が審査して公表する

土地鑑定委員会は、不動産鑑定士から提出された鑑定評価書について審査し、正常な価格を判定します。正常な価格とは、自由な取引がなされる場合において、通常成立するであろう価格です。

判定後、当該価格や必要事項を官報で公示します。官報とは、国の法令や公示事項を掲載した国の広報です。官報以外に、国土交通省のWebサイトなどでも公示地価が公表されます。

公示地価の調べ方

国土交通省のWebサイトである「不動産情報ライブラリ」にアクセスすれば、手軽に公示地価を確認できます。

まず、「不動産情報ライブラリ」の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索」にアクセスしましょう。続いて、「検索条件設定」の「区分」で、「地価公示」にチェックを入れます。

次に、自分が調べたい「地域(都道府県・市区町村・地名)」「用途区分」「調査年」を入力・選択し、「一覧表示」をクリックしましょう。「検索結果一覧」に表示される「価格」の部分が、対象地点における1平方メートルあたりの公示地価です。

なお、対象の「標準地番号または基準地番号」をクリックすれば、過去の地価などより詳しい情報を確認できます。

参考:国土交通省「不動産情報ライブラリ 国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索」

公示地価と他の指標の違い

公示地価以外にも、以下のような指標が土地の価格を示す際に使われることがあります。

・基準地価
・実勢価格
・路線価

ここで、公示地価と各指標の違いについて押さえておきましょう。

基準地価との違い

公示地価と基準地価の主な違いとして、公示する主体・発表時期・基準日・対象地域が挙げられます。

基準地価とは、都道府県が主体となって発表する基準地の価格です。公示地価は「国土交通省(土地鑑定委員会)」が公示主体であるのに対し、基準地価は「都道府県」が主体となる点が異なります。

また、公示地価は「毎年3月下旬」に公示されるのに対し、基準地価の公示時期は「9月下旬」である点も違いの一つです。公示する時期も、公示地価は「毎年1月1日時点」、基準地価が「毎年7月1日時点」と異なります。

さらに、価格の対象となる地域も公示地価は「標準地(約26,000地点)」で、基準地価は「基準地(約21,000地点)」です。基準地には、都市計画区域外も含まれます。

なお、不動産鑑定士による評価に基づいて決める点は、どちらも共通しています。

基準地価についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

基準地価とは?実勢価格との関係や路線価との違いをわかりやすく解説

実勢価格との違い

公示地価と実勢価格の違いとして、価格の決め方が挙げられます。

実勢価格とは、対象の不動産が実際に取引された際の価格です。そのため、売り手と買い手の考え方・意向によって価格が変わります。

公示地価は主に不動産鑑定士の評価に基づいて決まるのに対し、実勢価格は実際の取引価格である点が違いです。同じ場所でも、買い手・売り手の考え次第で実勢価格が公示地価と乖離することがあります。

路線価との違い

公示地価と路線価の主な違いとして、価格や発表時期などが挙げられます。

路線価とは、道路に面している土地の価格です。土地の相続税を計算する際に使われる「相続税路線価」と、土地の固定資産税を計算する際に使われる「固定資産税路線価」があります。

路線価は不動産鑑定士による鑑定評価に加え、公示地価も参考にして決められる点がポイントです。一般的に、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度が価格の目安とされています。

路線価についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

路線価とは?調べ方・見方のポイントや土地評価額の計算方法も解説

2025年の公示地価のトピック

2025年の公示地価は、上昇傾向にあります。前年と比較して、住宅地で2.1%、商業地で3.9%、工業地で4.8%上昇しています(全国)。

特に、三大都市圏や地方中枢都市の商業地における公示地価の上昇幅が大きい点が特徴です。東京圏の商業地は8.2%、大阪圏の商業地は6.7%、名古屋圏の商業地は3.8%、地方四市(※)は7.4%、前年と比べて上昇しています。

なお、都道府県別で比較すると、住宅地で最も前年比の変動率が高いのは沖縄県(+7.3%)、商業地で最も高いのは東京都(+10.4%)でした。

※北海道札幌市・宮城県仙台市・広島県広島市・福岡県福岡市

公示地価とは国土交通省が発表する指標

公示地価(公示価格)とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年3月に公示する標準地における価格です。基準地価も土地の価格を公示した指標ですが、発表主体・発表時期・基準日などで異なります。

公示地価は、不動産売買の際に価格を決めたり、妥当か判断したりする際に役立つ重要な指標です。国土交通省のWebサイトで簡単に調べられるため、一度近所の公示地価を調べてみてはいかがでしょうか。

参考:国土交通省「地価・不動産鑑定 地価公示」
参考:国土交通省「地価公示制度の概要」
参考:国土交通省「令和7年地価公示」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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