ニッポン、新時代

エンゲージメントにより株価向上を目指す

投資先が成長していくための「触媒」となる、カタリスト投資顧問・草刈貴弘氏が行う「企業との対話」

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投資先企業に「変化が生まれた事例」が増えている

カタリスト投資顧問は、対話や提案といった「エンゲージメント」を通じて、投資先の経営変革や企業価値向上を後押ししている。

そんな同社の関わる投資信託に「マネックス・アクティビスト・ファンド(以下、MAF)」というものがある。比較的少数の銘柄に投資し、それらの企業にエンゲージメントを行う。そうして、企業価値と株主価値の中長期的な向上を目指す。

従来、こうした“アクティビストファンド”は、プロの機関投資家向けが多かった。MAFは、個人投資家向けアクティビストファンドという数少ない存在である。

運用するのはマネックスグループのマネックス・アセットマネジメントであり、同グループ創業者の松本大氏もMAFに携わる。カタリスト投資顧問は、このファンドの投資助言を行い、投資先候補の選定や企業との対話を担っている。

2020年6月に運用を開始したMAFは、直近1年で25%以上の上昇を見せている(2025年8月現在)。TOPIXを20%ポイントほど上回る伸びとなっており、着実な成果が出ている。「丁寧に投資先を見極め、エンゲージメントを行ってきました。それにより投資先企業に変化が生まれ、株価に反映されています」。

繰り返しになるが、同社が行うエンゲージメントは、従来のアクティビストとは異なるという。長期の企業価値向上や持続的な成長を生むための話し合い・提案が基本スタンスだ。例として、資本効率を改善して企業の競争優位性を強化するにはどうすれば良いか、どの事業にどれだけの力を配分するかという事業ポートフォリオの改革をどう進めるかなど、さまざまな話し合いが行われる。

1つのケースを紹介したい。ある投資先企業では、ここ数年で営業利益率が改善しながら、ROE(自己資本利益率)は徐々に低下していた。その理由は、現金保有が増加していたことにあった。

「同社の現金保有については、運転資金やキャッシュ・コンバージョン・サイクル(※仕入債務から売上債権の回収までの日数)を考慮しても“過剰な状態”にあると判断しました。本業は効率的で競争力も高く、安定して利益を生み出しています。その利益は成長投資や株主還元に充てられますが、それでも残った現金が内部留保として積み上がっており、今後もさらに積み増されることが予想されました。

そこで私たちは、適切な資本配分によって資本効率を高め、持続的な競争優位性の確立へとつなげていくための対話を重ねていきました。眠っている現金を“生きた資本”として活用することが、企業にさまざまなプラス効果をもたらすからです」

特にROE(自己資本利益率)の向上は資本市場からの評価を高め、株価上昇につながる可能性がある。また、この企業には従業員持株会制度があり、株価上昇は働かれている社員自身のメリットにもなる。こうした点も伝えていったという。

その後、同社は中期経営計画におけるROE目標値を引き上げたという。成長と株主還元の両立に対する市場の期待は高まり、株価も大きく上昇した。

MAFのサイトには、このようなエンゲージメント事例がいくつか掲載されている。それらを見ると、同社のスタンスをより深く理解できるだろう。

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。

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