個人株主の方々の応援を企業の成長につなげる

株式分割を行ったオリエンタルランドが実感する「個人株主増加」の効果

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課題となった「コスト」と「株主優待」

2021年頃から議論を重ね、実際に株式分割を実施したのは2023年4月。それなりの時間を要したのは、いくつかの課題があったからだという。

「一番大きかった課題はコスト面です。個人株主が増えると、株主の皆様にお送りするお知らせなどの郵送物も増えるので、費用もかかります。個人株主の数は2倍ほどになると想定していたので、単純にコストも2倍になると見ていました」(七釜さん)

コストが跳ね上がる可能性があったが、最終的には「それ以上のメリットがある」という結論に至ったそう。

「株主の皆様には、優待として東京ディズニーリゾートのパークチケットをお送りしているので、個人株主が増えるということは、パークに来て楽しんでいただくとともに、当社事業への理解を深める機会の増加にもつながります。体験を提供している当社にとって、コストを超えるメリットになると判断しました」(七釜さん)

ただ、この株主優待も、株式分割における課題のひとつになったとのこと。

「もともとは、100株保有している方に年間1枚のチケットをお送りしていました。そのベースは変えず、分割後は500株保有している方に年間1枚お送りする形としたのですが、せっかく分割したので分割後に100株保有していただいた方にも優待をお送りしたいと考えました。ただ、もともとの優待制度があるうえで100株に当たる価値の優待を考えるのが難しく、かなり議論を重ねました」(七釜さん)

そこで行きついたのが、保有期間で区切る「長期優待」という形。100株を3年以上保有し続けた場合、3年経過した後から毎年1枚パークチケットが届くという優待だ。

「チケットをお送りするという優待はパークの運営や収益にも影響があり、場合によっては株価にも影響があることなので、パークの収益や経営戦略を担当する部門とも話をしながら、影響のない範囲を見極めていくのがもっとも大変だったかもしれません」(七釜さん)

「株式を持っていただく以上は長く保有していただき、当社を応援していただきたいという思いがあります。その意味で『長期優待』は、より長く安定的に持っていただくための制度になっているのではないかと感じています」(黒瀬さん)

もうひとつ、課題として挙げられたのが株主提案権。議決権の100分の1以上、または300個以上の議決権を6カ月以上保有している場合、株主総会での議題や議案を提案できる権利のことだ。

「株式分割したからといって、株主提案権の要件となる議決権の個数が変わるわけではないので、株主の方々は提案しやすくなります。ただし、これまでどおり地道にガバナンスを強化していくことで株主の皆様にも納得していただける経営ができるだろうという結論に至り、株式分割に踏み切りました」(七釜さん)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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