資産1億円の兼業投資家が実践する「超分散&長期投資」前編

投資歴30年の兼業投資家が明かす「株式投資で大損しない理由」

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経済・投資の知識が導いてくれた「バリュー投資」

うまくいかない時期を抜け出すきっかけとなったのは、“物言う株主”の登場にあったという。

「当時、村上ファンドやスティールパートナーズといったいわゆる“物言う株主(アクティビスト)”が出てきて、多くの日本企業は抵抗する姿勢を見せていたと思うんですが、僕はアクティビストの話を聞いて納得する部分が多かったんですよね。だから、村上ファンドやスティールパートナーズが買いそうな銘柄を先回りして買っておけば、大損することはないだろうって考え始めたんです」

アクティビストの動向を見ているうちに、何をもって投資判断をしているのかといった点に関心が向くようになっていく。

「投資を始めた頃に買ってずっと放置していた会計に関する書籍を、改めて読み直したんです。日経新聞や経済ニュースも見るようになって、当初よりも理解できる部分が増えていく一方でわからない部分も明確になったので、株式投資に関して情報交換している個人サイトを見つけて、そこの掲示板に疑問を書き込んでみたんです。そのサイトに集まっている方々はすごく丁寧に答えてくれたので、そこで知識を積み上げながらバリュー投資を始めました」

バリュー投資とは、企業の利益水準や資産価値に対して、株価が割安だと判断される株式に投資する手法のこと。

「UFJ銀行の株はそのまま持ち続けていたんですが、貸借対照表や決算書も見るようになってから、さすがに株価が安すぎると感じて、なんとなく保有するのではなく回復するまで持っていようと決めたんです。結果として三菱東京銀行が合併してくれることになり、買値の倍くらいになったんで、間違ってはいなかったのかなと。その頃、工作機械メーカーのFUJIの株も買いました。FUJIはいまでも自己資本比率の高い優良企業なんですが、収益が設備投資に左右されるからか、株価が低かったんです。いくらなんでも安いんじゃないかと思って買いましたね」

200以上の銘柄を保有しているワケ

1995年から投資を始めて30年が経ち、2025年9月現在で208銘柄を保有している。かつては240銘柄まで増えた時期もあったが、全上場企業の20分の1以上はさすがに保有しすぎだと考え、現在は少しずつ集約し、100銘柄前後を目指しているそう。

とはいえ、個人投資家としては超分散投資ともいえる銘柄数に至ったのは、なぜなのだろうか。

「2005年くらいまでは資産が少なかったこともあり、20~30銘柄くらいだったんです。ラッキーパンチが当たったパラマウントベッドも買い直したりしながら持っていたんですが、介護保険報酬が変わって業績が下がり、第一四半期決算が下方修正されたことがあったんですよ。株価も暴落して、翌日の市場が開くまで眠れないことがあったんです」

回復するまで売却しないと決めていても不安ばかりが募り、眠れない日々が続いた。2006年に個人投資家が集まる勉強会に出向くようになり、資産数十億に達しているベテラン投資家に相談したそう。

「その方から『自分のキャパ以上にリスクを取りすぎてるから、翌日の値動きが気にならないくらいまでポジションを落としたら眠れるようになるよ』というアドバイスをいただいたんです。それから銘柄ごとの金額を下げて、過度な買い増しもしないようになりました。ただ、売却した分だけ現金が増えるので、それで別の銘柄を買うということを繰り返していたら、結果的に200銘柄を超えていたんです」

現在はさまざまな業種の銘柄を保有しているなごちょうさんだが、どのように選定しているのだろうか。

「事業や業績に対して株価が安すぎるところを選ぶ、という基準はずっと変わっていません。ただ、業種によって見るべきポイントは変わってくるのかなと思います。例えば、FUJIのような工作機械メーカーであれば『受注高』や『受注残高』が重要。減収傾向にあっても、『受注残高』が高いと株価が上がることがあるからです。業種ごとのポイントを押さえることが大切だと感じています」

投資初心者となるとすぐにポイントを見極めるのは難しいが、第一歩としてやっておくといいことがあるとのこと。

「貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などにどのような項目があり、何を意味しているのかという点は押さえておきたいところです。そこがわかるようになると、企業の状況などを把握しやすくなります。決算書や会社四季報などには情報がたくさんあり、それをもとに企業の動向を考えていくと、大損はしにくくなると思っています。曖昧な情報で予想する賭け事ではないので、しっかり情報を読み解くことが成功の秘訣ではないでしょうか」

さまざまな失敗を重ねてきたからこそ、複数の銘柄への分散や情報収集の重要性に気付いたなごちょうさん。後編では、より具体的な株式投資のコツについて伺う。

(取材・文/有竹亮介)

お話を伺った方
名古屋の長期投資家(なごちょう)
兼業投資家。1995年12月から株式投資を開始し、現在は超分散投資・長期投資を実践し、200以上の銘柄を保有。インカムゲインと配当の成長を重視したポートフォリオを組んでおり、名証(名古屋証券取引所)に上場する銘柄を好む。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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