資産1億円の兼業投資家が実践する「超分散&長期投資」後編
投資歴30年で見つけた「株式投資で成功している人の共通点」
株式投資のコツは「投資を好きになること」
株式投資を始めてから現在まで、働きながら資産運用を行っているなごちょうさんに両立のコツを聞いた。
「コツといえるかわかりませんが、僕の場合は貸借対照表や決算書を見て情報を集め、企業や業界の今後を予想するようになってから、だんだん情報収集が楽しくなってきたんですよね。もちろん予想が当たるときもあれば外れるときもあるんですけど、自分の予想と照らし合わせたり企業の情報を見返したりしているうちに、ワクワクしてくるんです」
いまや企業の情報を集める作業は日常の一部であり、「娯楽のひとつ」と言えるほどになっているそう。
「映画を見たりゲームをしたりするのと一緒で、僕にとっては情報収集が娯楽なんですよね。ドラマ好きの人が連続ドラマの放送日を楽しみにしているのと同じように、僕も決算が出る日を待っている感覚です。決算書って、通信簿を見るようなドキドキ感があるんですよね。保有していない企業の情報を見るのも好きで、旅行している間でもついTDnet(適時開示情報伝達システム)などで情報を追っちゃいます(笑)」
なごちょうさんの周囲の個人投資家も同じように娯楽の一環として情報収集している人が多く、「株式投資を楽しんでいる人で、損している人は見たことがない」と話す。
「多くの投資家が『投資を嫌々やっているうちはダメ。投資を好きになることが大事』と話しています。決算書を読まなきゃいけないという義務感で読んでいる人と早く決算書が出ないかなって楽しみにしている人では、モチベーションが大きく変わってきますよね。投資で成功しようと考えるより、まずは思うようにやってみて結果を楽しむというスタンスで臨むと、少しずつ投資を好きになれるのではないかと思います」
株式投資の第一歩は「身近なお店や製品」
「投資を好きになる」という第一歩を踏み出すため、株式投資を始めたいものの、どんな銘柄から手を付けたらいいかわからないという人は多いだろう。
「全米No.1ファンドマネージャーといわれているピーター・リンチは『まず身近なところから投資するといい』と言っています。例えば、好きでよく行く外食チェーンがあるなら、そこの企業を調べてみる。普段使っている化粧品や洗剤などを製造しているメーカーもありです。その製品や企業に関しては、あらゆる業界に広く投資している機関投資家よりも自分のほうが詳しい可能性が高いといえます。好きな企業の情報であれば決算書などの資料を読むのも楽しく、『こんな事業でも利益を出してるんだ』という意外な発見もあるでしょう。その企業に将来性を感じ、さらに株価が低すぎると感じるのであれば、株を買うという第一歩を踏み出せるはずです」
気になる企業を調べていくと保有したいと感じる銘柄が増え、さらにその企業や業界の情報を集めるようになるという好循環が生まれる。
「僕は200以上の銘柄を保有していますが、実はマクロ経済に関しては全然詳しくありません。ただ、いま保有している銘柄だけでなく、気になる銘柄や過去に保有していた銘柄の情報も見ていると、各業界の動きみたいなものも見えてくるんです。あの国が安い製品を流しているから、この業界は今後ちょっと苦しいかもしれないといったことがわかってくるんですよね。だから、最初から全体を把握している必要はなくて、まずは身近なところから始めていくのでいいと思います。“木を見て森を知る”みたいなイメージでしょうか」
さまざまな数字や指標を参考にしながらも、「投資を好きになることが成功のコツ」と、一番大切なことを教えてくれたなごちょうさん。好きな製品やよく行くお店を手掛けている企業をチェックするところから始めてみよう。
(取材・文/有竹亮介)

