「対話を重視」「開催日を分散」個人株主の増加で生じた変化

コーポレート・ガバナンスの専門家が分析! 2025年の「株主総会」の傾向

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“株式会社の最高意思決定機関”といわれる「株主総会」。株式を購入するという形で企業に出資した株主が集まり、経営に関する事柄について質問したり、決議を行ったりする場となるからだ。

かつては質疑応答や議論がほとんど行われず、短時間で終了する「シャンシャン総会」といわれることも多かったが、近年は減少傾向にあり、株主との対話を重視する総会が増えているそう。なぜ、このような変化が出てきているのか、SBI大学院大学教授・京都大学経営管理大学院客員教授で、上場企業で社外取締役も務める上田亮子さんに聞いた。

個人投資家の増加によって見直されている「対話」

「株主との対話に対する企業の姿勢の変化は近年見られている部分ですが、2025年はより顕著だったように思います。企業にとって、投資家でありお客様でもある株主の方々から直接質問や意見をいただく機会はとてもありがたいものだと考え、総会においてその時間をしっかり設けている企業が増えている傾向にあります。一方で株主、特に個人投資家の皆さんも総会で質問される方が増えているように感じます」(上田さん・以下同)

株主総会は企業と株主の会議の場であるため、対話が活発化し始めているいまの流れは、総会の本来の形になりつつあるといえるだろう。では、なぜいまになって対話が重視されるようになってきているのだろうか。

「理由のひとつには、個人投資家の増加があると思います。多くの企業で個人株主の比率が増えてきているため、機関投資家だけでなく個人を意識した情報発信や施策を行う必要が出てきているといえます。その一環として、株主総会も株主の方々との対話の場として活用しようという動きが出てきていると考えられます」

株主との対話は、企業にとっては決して簡単なことではない。事前に想定問答集を作成したり入念なリハーサルを行ったりするだけでなく、当日になって思いがけない質問や意見が飛び出す可能性もあるからだ。

「企業にリスクのある場ともいえるかもしれませんが、参加された株主の方々が『よい会だったね』とおっしゃる総会は共通して、対話しやすい雰囲気づくりが行われていたり、企業と株主の関係がうまく構築されていたりするものです。また、実際に質問を受けることで、個人の方はこういう視点で当社を見てくれているんだという発見につながり、経営や事業にプラスの影響をもたらすため、対話を前向きに捉えている企業が増えているのだと思います」

企業によっては質疑応答をはじめとする直接の対話だけでなく、総会の会場でパネル展のような形で事業を紹介したり、総会とは別に工場見学などを催したりするなどして、企業についてより深く知ってもらう機会をつくっているところも出てきているそう。

お話を伺った方
上田 亮子
SBI大学院大学教授、京都大学経営管理大学院客員教授。2001年みずほ証券に入社した後、日本投資環境研究所への出向・転籍を経て、2017年よりロンドンにてコーポレート・ガバナンスや機関投資家のスチュワードシップに関する研究に従事。2022年に公認会計士・監査審査会委員に就任。上場会社等で社外取締役等も務める。公認会計士・監査審査会、金融庁金融審議会、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ、スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、IFRS財団Management Commentary Consultative Group等の政府や国際機関の委員を歴任。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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