「対話を重視」「開催日を分散」個人株主の増加で生じた変化

コーポレート・ガバナンスの専門家が分析! 2025年の「株主総会」の傾向

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個人株主が総会に参加しやすくなる工夫

個人株主の増加によって、さらなる変化も出てきているという。

「決算時期の関係から、かつては6月の最終営業日近くの特定の日(集中日)に総会を開催する企業がほとんどでしたが、近年は6月中旬から下旬にかけての分散化が進んでいます。企業が総会の日程を重ならないようにする理由には、機関投資家に議決権を行使してほしいからというものもあるのですが、個人株主にも参加してほしいという思いもあります。例えば、株式を保有している2つの企業の総会が同日だったら片方しか参加できませんが、日にちがずれていたら両方参加できるかもしれません。近年では、オンライン開催を取り入れている企業も増えています。オンラインで総会を見られるようになれば、仕事や家事で忙しい人や遠方に住んでいる人も参加しやすくなりますよね」

個人株主でもより参加しやすくなる工夫として、招集通知の送付時期の前倒しも進んでいるそう。

「これまでは総会の3週間前までの送付が大半でしたが、近年は4週間前までに送付する企業が増え、2024年には34%を超えています。早めに総会の開催日などがわかるので予定を立てやすくなりますし、議決権の行使期間も長くなるので、個人株主にとってはメリットしかないといえます。ただし、招集通知の電子化も進んでいることで、送付される情報が簡易化されている場合もあります。事業報告書などを冊子で受け取りたい場合は、総会に参加したり企業に申請したりする必要があります」

ほとんどの総会では、参加者のアンケートが実施される。そこで得られた声をもとに、翌年の総会が変化することも少なくない。

「アンケートで『駅から会場までが遠かった』という声があり、翌年の総会ではシャトルバスを出した企業がありました。『会場が暑かった』『寒かった』という声があれば空調を調整するなど、株主の皆さんに快適に参加していただきたいという企業の思いは強くなっています。ご意見だけでなく、よかった部分を評価する声は企業側の励みになります。総会のアンケートは経営層にも共有されるので、総会に参加されたらよかったところも気になったところもアンケートに書いて送ることをおすすめします」

総会の変化は、企業側の姿勢だけで起こるものではない。株主側の姿勢による変化も見えてきている。

「株主から出る質問や意見が変わってきているように感じます。以前は個人的なトラブルに関する質問や感情的な意見も少なくなかったように思いますが、最近は『PBR1倍割れをどう受け止めていますか』『ROEはどうなっていますか』『株価が下がっていますが、どう対応される予定でしょうか』といった業績や経営に関する質問が増えてきています。個人投資家が増えてリテラシーが上がっていることで、企業価値を見ている個人株主が増えているのではないかと推測できます」

お話を伺った方
上田 亮子
SBI大学院大学教授、京都大学経営管理大学院客員教授。2001年みずほ証券に入社した後、日本投資環境研究所への出向・転籍を経て、2017年よりロンドンにてコーポレート・ガバナンスや機関投資家のスチュワードシップに関する研究に従事。2022年に公認会計士・監査審査会委員に就任。上場会社等で社外取締役等も務める。公認会計士・監査審査会、金融庁金融審議会、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ、スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、IFRS財団Management Commentary Consultative Group等の政府や国際機関の委員を歴任。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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