「対話を重視」「開催日を分散」個人株主の増加で生じた変化

コーポレート・ガバナンスの専門家が分析! 2025年の「株主総会」の傾向

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個人株主にも求められる「議決権行使」

個人株主の増加による変化として、議決権行使の減少も挙げられるという。議決権とは、株主総会において経営に関する重要事項の決議を行う際に、賛成・反対の意思表示ができる権利のことで、投票による意思表示を議決権行使と呼ぶ。

「機関投資家はほぼ100%議決権を行使していると思われますが、個人株主はそもそも総会に出ない方も多く、議決権行使もされていない印象があります。近年は、総会の招集通知が届いた時点からインターネット上で議決権行使ができるようにしている企業も多いのですが、見落とされているのかもしれません」

既に株式を保有している人でも、招集通知の内容を見ていなかったり、よくわからないために議決権行使をしていなかったりする人は多いだろう。しかし、上田さんは「個人株主こそ、議決権行使は行ったほうがよい」と話す。

「議決権は、企業の経営に参画できる唯一の権利といえるからです。仮に、個人株主のほとんどが議決権行使をしていない企業があるとします。その企業の業績が悪くなったり不祥事があったりしても、個人株主は議決権行使をしない“物言わぬ株主”だという理由でその存在が重視されず、現行の経営が継続される可能性があります。しかし、個人株主が議決権を行使して反対票を投じることで経営判断が変わり、業績が上がったりガバナンスが強化されたりする可能性があるのです。投資という形で応援している会社によい方向に進んでもらうためにも、議決権は重要な権利なので、個人株主の皆さんにこそ行使してほしいと思います」

「個人株主の声をよく聞き、ともに成長を目指していきたい」という企業の思いを反映するように、変化し始めている株主総会。実際に参加することで、企業に対するイメージも総会そのもののイメージも大きく変わるかもしれない。

(取材・文/有竹亮介 撮影/鈴木真弓)

お話を伺った方
上田 亮子
SBI大学院大学教授、京都大学経営管理大学院客員教授。2001年みずほ証券に入社した後、日本投資環境研究所への出向・転籍を経て、2017年よりロンドンにてコーポレート・ガバナンスや機関投資家のスチュワードシップに関する研究に従事。2022年に公認会計士・監査審査会委員に就任。上場会社等で社外取締役等も務める。公認会計士・監査審査会、金融庁金融審議会、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ、スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、IFRS財団Management Commentary Consultative Group等の政府や国際機関の委員を歴任。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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