元サラリーマンFPが考える「お金に困らない夫婦」の特徴 その2
「家計」と「将来」について夫婦で話し合うコツ
お金の悩みを抱えている夫婦は、どちらか1人だけが考えている状況にあるケースが多い。
前回の記事でそう教えてくれたのは、『一度始めたらどんどん貯まる 夫婦貯金 年150万円の法則』(青春出版社)の著者で1級ファイナンシャル・プランニング技能士の磯山裕樹さん。
ただ、お金に関して夫婦で話すのは、ちょっとハードルが高いと感じる人もいるだろう。どのようなステップで進めていくといいだろうか。
お金に興味を持つことで「家計」にも関心が向く
磯山さん自身も、かつて夫婦でお金について話すことはほとんどなかったとのこと。
「子どもが産まれてからも夫婦共働きで、ともに上場企業に就職していたこともあり、収入に関して不安を感じていなかったんですよね。後から妻に聞いてみても、同じように感じていたそうです。だから、夫婦でお金に関して話すことはなく、将来に対して漠然とした不安を感じつつも、なんとかなるだろうって感覚も強かったように思います」(磯山さん・以下同)
夫婦で話すようになったのは、磯山さんが保険会社に転職し、お金に関して学ぶようになってから。
「コロナ禍の1年間でいろんな書籍やネット記事を読んだり、セミナーに参加したり、さまざまなお金の専門家に相談したりするなかで、お金の使い方や運用方法など、試してみたいものが出てきたんですよね。ただ、お金は自分だけのものではなく夫婦のもの、家族のものなので、妻に『こういう使い方をしてみようと思う』と話すようになり、そこから自然とお金の話題を出せるようになっていきました」
話し合いの第一歩は「価値観の共有」と「ゴールの設定」
自身も夫婦で話し合う習慣をつくりながら、相談者に対してもコミュニケーションの重要性を伝えている磯山さん。その第一歩として提案しているのが、「夫婦それぞれの価値観を共有すること」。
「仲がよくて息の合う夫婦でも、お金の価値観って多少は違う部分があるんですよね。これまでの経験や育った家庭環境、生活環境などによって変わるものだからです。例えば、親が株式投資で成功した姿を見ているから投資に抵抗がない夫に対して、妻は親が株式投資で失敗しているのを見て投資に懐疑的になっているかもしれません。その価値観を共有しないまま夫が投資を始めてしまうと、妻は不安を感じながら生活していくことになるかもしれません」
価値観を共有したら、どちらかの価値観に寄せて考えていくのがいいのだろうか。
「片方が無理やり相手の価値観に合わせるのは難しいので、価値観はそれぞれに異なることを認め合ったうえで、歩み寄ることが大切だと思います。投資を行うメリットがある一方で貯蓄をするメリットもあるように、お金の使い方や備え方には正解も間違いもありません。それぞれの価値観にもそれぞれのいい面があるので、いいとこ取りをしていけるといいでしょう」
いいとこ取りをしていくために重要なのは、夫婦それぞれの考え方ではなく、「家族で何を目指していくのか」という家族共通のゴールだという。
「夫婦でお金や人生について話す際に大切なのは、『本当に実現したい家族共通の理想の人生を見つけること』です。夫婦それぞれに思い描いている将来像があると思います。子どもにももちろんあるでしょう。その理想像をぶつけ合い、同じゴールを目指せるようになると、お金の使い方や運用方法を判断していく指標ができていきます」
子どもの私立受験を考えているなら教育費を備える必要があり、夫婦のどちらかが早期退職を目指しているなら老後資金も考えなければいけないだろう。理想像を共有せず、急に「来年、早期退職する」と言い出すと相手をびっくりさせてしまうが、あらかじめ「10年後に早期退職するつもり」と話しておけば、夫婦でそのための準備を行えるだろう。
「子どもの教育費に関しては、とりあえずの上限を決めることをおすすめします。教育費はかけようと思えばいくらでもかけられてしまうので、上限がないと『小学校受験させようかな』『この習いごとも通わせたい』と際限がなくなってしまいます。上限を決めると将来の見通しが立ちやすくなるので、安心感を得られるでしょう。子どもが希望する進路が変わった際には上限を見直してもいいですし、『上限を超える場合は奨学金を活用する』など、割り切ったプランを立てておくのもいいと思います」
夫婦貯金 年150万円の法則』。


