元サラリーマンFPが考える「お金に困らない夫婦」の特徴 その4
充実している夫婦は「将来」だけでなく「いま」も大切にしている
将来に向けてお金を備える際、直近の支出を見直してできる限り節約し、貯蓄や運用に回そうと考える人は多いだろう。実はこの考え方、注意が必要だという。
『一度始めたらどんどん貯まる 夫婦貯金 年150万円の法則』(青春出版社)の著者で1級ファイナンシャル・プランニング技能士の磯山裕樹さんは、「お金について考えるときには『将来だけ』を見るのではなく、『いまと将来のバランス』を見ることが重要」と話す。なぜ、「いま」のことも考えたほうがいいのだろうか。
人生のなかでできる体験には「賞味期限」がある
「お金について相談に来られる方には、『人生のなかでできる体験には賞味期限がある』と伝えています。一般的に『お金は使わずに、貯めるべき』という考え方がよしとされていますが、将来のために貯めたお金もいずれは使うので、すべて使うお金だといえます。そう考えると、なんとなく将来に向けて貯めるのではなく、『いま使うお金』と『将来使うお金』をきちんと区別したうえで、いましかできないことにもお金を使うことが大切ではないかと思うんです」(磯山さん・以下同)
かつて磯山さんが旅行会社に勤めていた頃、60代夫婦のハワイ旅行に同行したことがあった。旦那さんに持病があり、標高の高いマウナケア山での星空観測ツアーに参加できなかったときに、夫婦で「子どもが独立したら2人で旅行しようと考えていまになったけど、もっと若いときにお金を使って来たらよかった」と話していたそう。
「20~30代の間は『いまはお金を貯めて、定年退職したら世界一周旅行をしよう』と考えていても、いざ60~70代になって実現できるかというと、その気力も体力もないかもしれません。そうなるのであれば、いま頑張って稼いだお金を自分や家族に使うことで思い出や経験が増えますし、その体験を活かすことでよりよい仕事に就けたり収入が上がったりする可能性も出てきます。使うことが悪いことではないんだと、知ってほしいですね」
将来の計画は、家族の希望によってその都度変わっていくもの。変わったタイミングで、お金の使い方や備え方を見直していくのも大切だ。
「うちの話ですが、小学5年生の長男が卓球をやっていて、『成績がよければ、県外の強豪校に進みたい』と言っているんです。僕らは岡山に住んでいるんですが、県外の中高一貫校に入り、そのまま東京や大阪の大学に進学、就職するとしたら、長男と一緒に暮らせるのはあと2年もないかもしれない。だから、小学生のうちにいろいろな経験にお金を使おうという方針に変えました。将来に向けて備えることも大事ですが、家族を含めた大切な人たちのためにお金を使うことも考えると、人生の充実度は上がるのではないかと思います」
家計改善のコツは「全体的に一気に見直す」
家族のために使うお金を確保するには、現在のお金の使い方を見直す必要も出てくるだろう。まずは、何から始めるといいだろうか。
「効果が大きいものから手を付けていくと、モチベーションが上がります。保険や携帯電話料金、住宅ローン、税金などです。保険を見直したり携帯電話のキャリアや料金プランを変えたりすると、効果が実感できるので、細かな部分を見直すやる気が出てくるでしょう」
ただし、家計の見直しにあたっては重要なポイントがあるという。「部分的に見直す」のではなく「全体的に一気に見直す」ことだ。
「保険は保険会社、住宅ローンは銀行、投資は証券会社と、それぞれ異なる窓口で相談や契約を行う形になっているので、別々に考えてしまいがちです。しかし、すべて家計につながっているものなので、全体的に考えていかないと、なかなか理想的な家計になりません」
そうはいっても、保険や住宅ローン、投資に関することまで、すべての知識を頭に入れて総合的に考えるのは、なかなかハードルが高いだろう。
「もともと家計や資産運用に関心が高い方はできるかもしれませんが、多くの人は苦手意識を抱いている分野ですよね。難しいと感じる場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)などのお金の専門家を頼りましょう」
磯山さんもかつてはお金に関する知識がほとんどなかったため、勉強も兼ねてFPを頼ったそう。
「相談料が10万円くらいで、当時かなり驚いた記憶があります。でも、そのFPさんは保険会社や証券会社などの商品の契約をゴールにするのではなく、僕の家族の幸せをゴールに設定して家計全体を見直してくれたので、納得のいくプランができあがったんです。僕も同じようにお客さんの幸せを一緒に目指す仕事がしたいと思って、豊かで幸せに生活できる家計を実現するFPを志しました」
夫婦貯金 年150万円の法則』。


