個人投資家への取り組みの舞台裏に迫る!

「株主=顧客」の声を拾っていった先に企業価値向上がある

「株主=顧客」を提唱するイオンが「株式分割」に踏み切った理由

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より魅力的な「株主優待制度」の設計

株式分割を行うに当たってハードルとなったのは、株主からの評価が高い株主優待だったという。

イオンでは、イオンでお買い物した金額に一定の返金率を乗じた金額を還元するという株主優待を半年ごとに実施している。個人株主の約92%がイオンで買い物をしており、還元期間に入ると最初の1週間で多くの株主が来店するほど、期待されている株主優待となっている。

「分割するということは、株主の皆様が保有されている株数も変わるので、株主優待の設計も見直す必要が出てきます。ただし、既に株を保有してくださっている方々が損だと感じる変更ではいけません。一方で、分割後に100株保有するだけの魅力のある優待でもなければいけないので、もっとも気を使ったところです」

分割前は100株以上保有で3%、500株以上保有で4%、1000株以上保有で5%、3000株以上保有で7%キャッシュバックとなっていた。既に株式を保有している株主がこれまでと同様の優待を受けられるよう、分割後は300株以上保有で3%、1500株以上保有で4%、3000株以上保有で5%、9000株以上保有で7%キャッシュバックとしている。

さらに、新たに株式を保有する個人投資家にとっても魅力的なものとなるよう、分割後は100株以上保有で1%、200株以上保有で2%キャッシュバックという優待を加えた。

株式分割を実施するにあたり、社内ではどのような議論が行われたのだろうか。

「そもそも株式を何分割するのか、という議論から始まりました。従来の優待の内容を変えないという前提で考えると、2分割した場合は200株保有している方が3%キャッシュバックとなり、100株保有している方は1.5%キャッシュバックとわかりにくくなってしまいます。4分割も同じ理由で複雑になってしまうので、3分割して優待もわかりやすくしようという結論になりました。結果的に、100株ずつ買い増すことで返金率も上がるという段階的な優待になり、よかったのではないかと感じています」

100株、200株保有する株主も受けられる優待への変更は、経営層が「お客様の声に寄り添う」という姿勢を大切にしているからこそ、スムーズに決定したことだという。

「個人株主の方々の多くは株価が下がったときに購入されるので、株価が上がったら売却されるかと思ったら、どれだけ上がっても多くの方が売却されないんです。この傾向には驚きましたが、優待に興味を持って買ってくださる方が多いので、長く保有し続けようと思ってくださっているのではないでしょうか。だからこそ、私たちも株式分割を行って買いやすくするだけでなく、持ち続けたいと思っていただける工夫をしていきたいと考えています」

イオンでは、キャッシュバック以外の株主優待も充実している。例えば、イオンシネマの映画鑑賞料金通常1800円が1000円になり、さらにポップコーンまたはドリンクがサービスされる。イオンイーハートが運営する飲食店では会計が毎回10%引きになるなど、さまざまな優待を受けられるのだ。

「スーパーも飲食店も映画館も入っているイオンモールに来ていただくと、株主の方はお得に楽しんでいただけると思います。当社はグループ会社も多いので、買い物に限らずさまざまな部分で、株主の皆様に還元できるような施策を考えていきたいと思っています」

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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