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2026年度実施予定?「OTC類似薬の保険適用除外」が生活に及ぼす影響

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政府が「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)」に盛り込み、話題となっている「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し」。2026年度からOTC類似薬を医療保険の適用対象から外すという内容で、さまざまな議論が起こっている。

OTC類似薬とは、ドラッグストアなどで市販されているOTC医薬品(処方箋なしで購入できる医薬品)と成分や効能が似ている薬だが、医師の診察と処方箋が必要。現在は医療保険の適用対象となっているため、原則1~3割負担で購入できる。

OTC類似薬が保険適用除外となると、患者自身が窓口で支払う負担が増えることになるが、そもそもなぜ見直されることになったのだろうか。その経緯と影響について、“医療の翻訳家”として活動している医療ジャーナリスト・市川衛さんに聞いた。

「OTC類似薬の保険適用除外」で患者負担は増加…?

「OTC類似薬の保険適用が見直される理由のひとつに、増え続けている医療費を削減するためというものがあります。OTC類似薬にかかっている医療費を合計すると、年間1兆円ほどの規模と大きいからです。ただし、すべてが適用外となることは考えにくく、日本維新の会が2025年4月に自民・公明・維新の3党協議で提案した保険適用除外の対象となるOTC類似薬の費用の合計は1543億円(28有効成分)となっています」(市川さん・以下同)

まずはOTC類似薬の一部を見直すとのことだが、どのような医薬品が適用除外の対象になる可能性があるのだろうか。

「命にかかわらないところ、患者さんが多大な不利益を被るものではないところから進めていくのだと思われます。例えば、風邪をひいたときに処方される痰切り薬や解熱鎮痛剤、腰痛や関節痛を和らげる湿布薬などが考えられ、花粉症の薬も除外となる可能性があります。これらは生活の質にかかわる薬ではありますが、命に直接的にかかわるものではありません。また、ある程度市場規模の大きな分野でないと医療費削減の効果が出ないため、これらの薬が議論の対象になるだろうといわれています」

2026年度からOTC類似薬の一部が保険適用除外になるとしたら、風邪や花粉症で病院に行った際の薬代が上がることになる。病院には行かず、ドラッグストアで市販薬を買うほうが負担は下がるのだろうか。

「薬単体で見ると、OTC類似薬よりもOTC医薬品(市販薬)のほうが高くなります。OTC類似薬を含む処方薬はロットを一度に多く出すことができ、包装も最低限で済みます。一方、OTC医薬品はドラッグストアごとに卸す手間がかかり、広告や包装にもお金がかかるので、単価が高くなりやすいんです。そのため、保険適用除外になったとしてもOTC類似薬のほうが安いでしょう」

ただし、OTC類似薬を処方してもらうには、医師の診察が必要になる。

「病院に行くと初診料や再診料、検査費用、処方料金など、さまざまな費用がかかります。ケースバイケースではありますが、私が過去に試算したものでは、個人が病院で花粉症の薬の処方を受けるトータルコストと市販薬を購入するコストは、OTC類似薬が保険適用となっていてもほとんど変わりませんでした。病院に行かずにOTC類似薬と同成分の市販薬をドラッグストアで買うことで、通院の負担が減るだけでなく、国民全員で背負っている医療費の効率化にもつながるかもしれません。これは自分自身にも返ってくることといえるでしょう」

お話を伺った方
市川 衛
武蔵大学社会学部メディア社会学科准教授、広島大学医学部客員准教授(公衆衛生)、メディカルジャーナリズム勉強会代表理事、READYFOR認定パートナー、日本医学ジャーナリスト協会幹事。“医療の翻訳家”として、医療・健康・いのちに関わる難しい情報を、わかりやすく、役に立つ形で翻訳して多くの人に届けることを人生の目標として、執筆やメディア活動、大学の教員などの活動を行う。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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