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【格言かぶオプコラム】第8回:閑散に売りなし
提供元:株式会社シンプレクス・インスティテュート
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【格言かぶオプコラム】第7回:二度に買うべし二度に売るべし
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「山高ければ谷深し」とはよく言ったもので、2025年10月の日経平均は、わずか1か月間で7,000円以上も上昇しました。ところが、11月に入ると、たった2日間で2,000円を超える急落。日経225オプションの12月限・ATM(アット・ザ・マネー)のIV(インプライド・ボラティリティ)は30%を超え、相場は熱気に包まれました。
こんなとき、投資家の胸は高鳴ります。「これぞ相場だ」と感じる瞬間でしょう。株式もオプションも戦略が次々に浮かび、頭も手もフル回転。まさに活況の時です。
しかし、そんな熱狂が永遠に続くことはありません。大相場の熱が冷めると、相場は嘘のように静まり返ります。出来高は減り、値動きも乏しく、「もうやることもないし、保有株も売ってしまおうか…」と、つい気が抜けてしまう。市場が沈黙したような、そんな時間がやってきます。思えば、相場とはこの繰り返しではないでしょうか。
この静けさの中で、よく語られる格言があります。
「閑散に売りなし」。
これは、大相場のあとで出来高が細り、相場が動かなくなったときに、「今が底値圏のサインかもしれないから焦って売るな」という教えです。
なぜそう言われるのでしょうか。下落相場の終盤では、多くの投資家が失望して株を手放します。ところが、いったん株を売り尽くしてしまうと、相場を押し下げる力はもはや残っていません。そこに少しでも明るいニュースが出ると、空売りの買い戻しや割安感からの買いが入り、わずかな火種が急反発につながることも少なくないのです。
とはいえ、静けさの次に訪れるのが上昇か下落かは誰にもわかりません。閑散相場は売り尽くしの後の小休止の場合もあれば、さらなる下げの前触れのこともあります。では、こんなときどう動くべきでしょうか。
格言どおり、不透明な相場で株を抱えてじっと耐えるのも一つの選択ですが、もう一つの手としておすすめしたいのが、OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)のコール買いです。
閑散期は一般に、相場の熱が冷めている分だけボラティリティが低下し、オプション価格は割安になります。そこを狙って少額のプレミアムでコールを買っておく。これが、静けさの中に種をまく戦略です。特にOTMのコールなら、1枚あたり数円〜数十円(100株当たりの売買代金は数百円~数千円)と手頃な価格のものも多く、損失はオプションの買い代金に限定されるので、株を保有し続けるよりも安心です。
たとえば、日本たばこ産業(JT:2914)の取引例をみてみましょう。
2025年10月中旬以降、日本たばこ産業(JT)の株価は5,000円前後で推移し、出来高も1日平均350万株程度と落ち着いた状況でした。そんな10月30日、株価が4,900円程度だった頃に、12月限・行使価格5,250円のコールを40円で買ったとしましょう。
その翌日、JTは2025年12月期の連結業績予想を上方修正し、配当予想の引き上げを発表。株価は一時5,400円を超え、11月に入っても上昇を続けました。そこで、11月6日に、さきほどのコールオプションを234円で売却したとすれば、コール1枚当たりの利益は次の通りです。
(234 − 40) × 100 = 19,400円
コールを買うのに必要なコストは1枚あたり4,000円(40円×100株)です。つまり最大損をしても1枚につき4,000円。損失限定で20,000円近い利益を得られたことになります。
とはいえ、もちろん毎回これほどうまくいくわけではありません。材料が出ず、株価が動かないまま満期を迎えれば、オプションの価値はゼロになります。ですから、1〜2回は無価値になっても笑って済ませられる程度の金額でコツコツとオプションを買うのがポイントです。
「閑散に売りなし」とは、ただ「売るな」という忠告ではありません。むしろ、静寂の中に次の活気を見抜く感性を磨けという教えです。
今は嵐の前の静けさかもしれない、そう思ったときは、OTMのオプションに目を向けてみてください。退屈な相場の足もとには、誰も気づいていないチャンスの原石が、コロッと転がっているかもしれません。
(提供元)株式会社シンプレクス・インスティテュート
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