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経営者の声が大きな転機に

「未来の日本経済を担うスタートアップを一社でも増やす」 東証がグロース市場改革に着手した理由と狙い

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3つの柱で進める東証グロース改革

東証が現在行っているグロース市場改革では、大きく3つの施策を推進している。1つ目は、高い成長を促していくための「上場維持基準の見直し」。2つ目は、全てのグロース上場企業に対する「高い成長を目指した経営の働きかけ」。そして3つ目は、高い成長の実現に向けて「積極的に取り組む企業のサポート」である。これら一連の改革のキーワードは上場後の高い成長であり、グロース市場を「高い成長を目指す企業が集う市場」とするべく行われるものである。

しばしば話題となるのが一つ目の上場維持基準の見直しである。上場維持基準とは、文字どおり、上場を維持するために取引所が定める基準のことであり、プライム・スタンダード・グロースという3つの市場それぞれで基準が設けられている。

現在、グロース市場には「上場10年経過後、時価総額40億円以上」という上場維持基準があるが、これを2030年から「上場5年経過後、時価総額100億円以上」へと見直すこととしている。

その目的は、上場後における早期の成長や、企業間のM&Aを促すことだという。また、自社を他の企業に売却した経営者が新たな起業を行い、上場後の世界も知った状態で、一から大きく成長できるスタートアップを創っていく動きにつながることも期待される。

しかしなぜ“5年100億円”なのか。まず100億円という水準については、市場に参加している投資家の層が関係しているという。グロース市場は、個人投資家の参加割合が高い市場であり、株式の売買と保有のいずれも5割以上を個人投資家が占めている。プライム・スタンダード市場に比べると、機関投資家の参加が少ないといえる。

「個人投資家の方に多数参加していただくことは、もちろん市場にとって重要です。一方で、多様な投資家が入ると、さまざまな戦略を持って投資を行う人が共存し、バランスの取れた市場となります。結果、株価の形成や推移が安定する面があるのです。特に、グロース市場でスタートアップの皆様に高い成長を実現いただくためには、中長期で上場会社を支える機関投資家にも入っていただくことが大切でした」

これまで機関投資家がこの市場に少なかった大きな理由として、グロース銘柄における時価総額の「規模感」がある。グロース市場は時価総額の小さな銘柄が多く、機関投資家のように大きな金額を動かして取引する場合、その売買自体によって大きく価格が変動してしまう可能性がある。もし株価の低い時に株を購入しようとしても、その取引自体で値上がりしてしまい、想定していた価格で購入できないケースもあり得るのだ。その具体的な水準について、機関投資家にヒアリングを行ったところ、中小型株の投資を行う機関投資家であっても、最低でも時価総額100億円が必要という声が多数を占めたという。

そして、5年という期間について、これまで採用されていた10年という時間軸は、「スタートアップの事業環境の変化の速さを考えると『長すぎる』という意見がありました」と礒貝さんは語る。また、上場後に時価総額100億円を超えた企業の9割以上は「5年未満で達成している」というデータもあった。

これらをもとに、5年100億円という新たな基準が作られた。一方で、高い成長を目指す企業に十分な助走期間を確保するため、適用は原則として2030年以降とされている。

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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