【調査を読み解くシリーズ】暗号資産は資産形成の新しい選択肢?口座の9割は20代~50代が保有
提供元:アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所
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「調査を読み解く」シリーズの第8回です。今回のコラムでは、制度見直しの議論が進む中で注目を集める暗号資産に関するデータを見ていきたいと思います。
【目次】
▶ 国内における暗号資産の保有状況
▶ 暗号資産市場はNISA並みのポテンシャル?
国内における暗号資産の保有状況
2025年11月現在、金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」において、制度の見直しが議論されています。本コラムでは、議論内容ではなく、一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)が公表しているデータを基に、国内の暗号資産の保有状況を見ていきます。
国内における暗号資産の保有者は拡大を続けており、JVCEAのデータによると2025年10月末時点で口座数は延べ1,347万口座(法人口座含む)に達しています。これは、日本の人口で単純に割ると約10人に1人が口座を保有している計算になります(※)。
【図表1】のように時系列で見ても大きく口座数が増加していることが分かります。そのうち、稼働口座数は829万口座で、口座の稼働率(取引や残高がある口座の割合)は60%程度で推移しています。
※1人で複数口座を保有している場合もあるため、あくまでこの計算は参考値です。
【図表1】

利用者の預託金残高(口座内の暗号資産や現金の残高)は5兆円以上に達しており、そのうち59%をビットコインが占めています。次いでエックスアールピーが15%、イーサリアムが13%を占めています。(【図表2】)
また2025年の現物取引高は月間2兆円前後で推移しています。
【図表2】

個人の保有者の内訳を見ると、年代別では、設定口座数の約9割が20代~50代の資産形成層に集中しています。(【図表3・上グラフ】)
また、預かり資産別では「0~10万円未満」の口座が最も多く、稼働口座全体の83.3%を占めています。(【図表3・下グラフ】)
なお、暗号資産で1億円以上の資産を築いた人のことを「億り人」と呼び、以前、流行りの言葉となりましたが、そういった口座は全体からするとごくわずかです。(稼働口座の0.03%、2,479口座)
【図表3】

以上のデータから見られるように、資産形成層中心に、暗号資産の投資対象としての地位がどんどん高まってきています。
暗号資産市場はNISA並みのポテンシャル?
制度と比較するのもおかしな話ですが、新NISA制度が始まった2024年1月以降の暗号資産口座数およびNISA口座数の伸びを比較したのが【図表4】です。このグラフでは2023年12月末時点の口座数を起点として、四半期ごとにどれだけ増加したかを表しています。
【図表4】

NISA口座は1年半で571万口座増加しました。他方、暗号資産口座はこの間に376万口座増加しています。数字だけを見ると約200万口座の増加数の差がありますが、暗号資産の口座数も相当な伸びを見せていると感じた人もいるのではないでしょうか(※)。
※NISA口座は1人1口座であるのに対し、暗号資産口座は1人で複数保有するケースもあるため、単純な比較は難しい点に注意が必要
金融審議会で議論されているように、今後、利用者保護と利便性向上の環境整備が進み、また、税制改正が実現するとなると、暗号資産の保有人口はさらに増えると期待されます。
もちろん、注意も必要です。
以前のコラム(【調査を読み解くシリーズ】詐欺被害額が窃盗被害額を逆転!急増するSNS型詐欺)で取り上げたように、SNS型の投資詐欺やロマンス詐欺では暗号資産投資を持ちかけられるケースや送金手段として暗号資産を指定されるケースが多くみられています。今後、投資対象として暗号資産が広まった場合、利用者保護の強化が図られる一方で、詐欺などの悪質な勧誘などもさらに増える可能性があることには、個々人が十分な注意を払う必要があります。
また、投資対象としての暗号資産(特にビットコイン)への注目が高まっているなかで、過度な期待には注意が必要です。過去からの推移を見ると発行されてから大きく上昇している暗号資産も見られますが、ハイリスクハイリターンの投資対象であることには変わりません。短期間で数十パーセント下落することがあったり、取引所が特定の暗号資産を取扱い廃止する事例などがあったりもします。
「人生一発逆転」を狙って、財産のほとんどを暗号資産に投資するなどは厳禁です。投資を検討する場合は、仕組みや動向をしっかりと調べたうえで、大きな下落が起こった場合でも許容できる範囲内で、投資額を適切に抑えるよう心掛けましょう。
(執筆 : アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所 坂内 卓)
当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が作成したものです。当資料は、アセットマネジメントOne株式会社がお客さまの理解を深めていただくために情報提供を目的として作成したものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。アセットマネジメントOne株式会社は、投資家に対する投資勧誘は行いません。また掲載データは過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。当資料における内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。
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研究員
証券会社で個人投資家向けの商品企画や営業企画を携わった後、IT企業でフィンテックアプリの運営を担う。2020年アセットマネジメントOneに中途で入社後は営業企画や新規ビジネス企画などに従事。2024年4月より現職。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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