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貫いてきた「挑戦を支える会社」としての姿勢

月保険に宇宙旅行保険……統計的手法が通用しない「宇宙保険」を三井住友海上が50年以上提供できた背景

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JAXAと共同で「宇宙旅行保険」も開発中

三井住友海上では近年、新たな宇宙保険も開発している。その1つが「月保険」だ。月面の探査やそれを起点としたビジネスが注目される中、打上げから月面着陸までのさまざまなリスクを補償するものである。

三井住友海上は、月面への物資輸送サービスや月面開発事業を手掛けるispace(アイスペース)とパートナーシップを組み、同社の月面着陸プロジェクトを支援してきた。こうした中で、月への航路上や着陸の際に起こるリスクを分析し、保険商品を開発していったという。ispaceはこれまで月面着陸の挑戦を2度行っており、そこでもこの保険が活用された。

このほかにも、JAXAと共同で「宇宙旅行保険」の開発に取り組んでいる。「宇宙旅行が将来普及することを見据えてプロジェクトを進めています」と野村氏は口にする。

海外旅行に行く際、旅行保険を活用したことのある人は多いだろう。しかし訪れる先が「宇宙」となれば、起きうるリスクや損害は異なってくる。飛行機とは比較にならないレベルの身体への負荷が予測され、また宇宙空間で何日も過ごせばさまざまな異変が起きる可能性もある。そのリスクを明らかにした上で保険を設計しなければならないという。

こうした知見を持つのは、数多くの宇宙飛行士を輩出したJAXAだ。そのノウハウを活用し、さらには医療分野の情報も収集しながら、宇宙旅行保険を検討しているという。

宇宙保険の難しさはデータが少ない中で保険を設計しなければならない点にある。通常の保険は、例えば自動車保険なら事故の件数や被害の傾向をもとに、補償内容や保険料率を決めていく。「しかし宇宙の場合はプロジェクトの個別性が高く、各リスクの発生確率を予測するためのデータが十分でないことがほとんどです」と野尻氏は説明する。

月面着陸や宇宙旅行は最たる例だろう。また近年急速に発達する小型衛星の運用についても、まだ十分なデータが揃っているとはいえない。

ではその中で、どのように保険を設計していくのだろうか。

「基本的には、プロジェクトに使われる機器の技術書を読み込み、どのような部品が使われているか、どういった機器の設計になっているかを分析します。それらをもとに、故障などが起きるリスクを予測し、どこまでを補償の範囲内とするか、補償する場合はどのような内容にするかを決めていきます」(野尻氏)

仮に宇宙での実績が少ない部品を使用していた場合、リスクが高くなると考えて補償条件の設定に反映することもあるという。あるいは、「お客さまの設計段階から関与することも少なくありません」と野尻氏は伝える。

宇宙プロジェクトは失敗確率が高く、あらゆるリスクを補償すれば採算が取れなくなる。かといって補償内容を限定し過ぎれば、保険会社として挑戦を支えることもできない。こうしたことから、実は宇宙保険のビジネスは難易度が高く、撤退した企業も少なくない。

その中で同社が50年以上この事業を続けられているのは「宇宙技術に精通し、正確にリスクを分析できる人材が社内に多数いること。そしてその人たちが次の世代を育ててきた点が大きいのではないでしょうか」と野尻氏は考える。

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。

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