ニッポン、新時代

ジョージ・ソロスの教えを生かして成果を残す

ベースに根付くのは伝説的投資家の手法、スパークスAM・春尾卓哉氏が実践する「ロング・ショート戦略」の本質

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ショート銘柄の選定に用いられる「2つの視点」

ロングとショートの両方を取るといっても、あくまでロングの割合を多くするのが「スパークスのスタイル」だという。つまり、基本的には“買い”の銘柄を中心に構成して、長期的な株価の上昇でリターンを狙う。しかしその間に、短期的な下落トレンドが市場で発生することもある。そういったリスクを抑制するために“売り”の銘柄を一定数持つという。

ではどのような銘柄をショートするのか。春尾氏は「大きく2つの軸で選んでいます」と話す。

「1つは、実力に対して過大評価されている銘柄です。新しい技術やトレンドがバズワードとして独り歩きすると、事業の実態を伴わないまま企業の実力以上に株価が急騰するケースがあります。バブル化している場合もあるでしょう。こうした銘柄について、その後に下落する可能性が見られる場合はショート候補にします」

もう1つは、長期的に見てマーケットが縮小していく業界におり、その中でも劣後したポジションにいる銘柄だ。過去の歴史で例を挙げるなら、産業革命で自動車が普及するかたわら、馬車などの交通手段は衰退していった。同じく、西洋から洋服文化が入ると、日本で和服を着る人は減っていった。こうした「構造的に長期で縮小していく業界」の中で、厳しい位置にいる銘柄がショート候補となる。

ただし、ショート銘柄選びは難しさをともなう。たとえば、1つ目の軸として挙げたバブル化している銘柄は「一般的には割高に見えても、株価上昇自体が次の株価上昇への期待を膨らませ、さらに株価を伸ばすことも少なくありません」とのこと。また2つ目の軸についても「アクティビスト(※)が業態転換を迫ったり、株主還元の強化を要求することで株価が上昇するケースが近年増えています。アクティビストが投資をしていることが判明しただけで急騰することも少なくありません。」と話す。だからこそ、慎重に企業の動向を観察して“売り”の判断を下すことが重要になる。

※投資先企業に積極的な提言を行う株主のこと

「ショート戦略の怖さは、損失の可能性が無限大である点です。ロングの場合、株価100円で買ったとすると、どんなに値下がりしてもゼロで止まります。しかしショートの場合、値上がりする場合は天井がありません。100円の株価が200円に、さらには1000円になる可能性もあるでしょう。だからこそリスク管理は非常に重要になります。例えば、しばらく前にはバブル化していた暗号資産に関連する銘柄をショートしたケースがありますが、1銘柄だけでなく、似たジャンルの数社を同時に売るなどしてリスク分散をしました」

こうした難しさがあるからこそ、「もしロング・ショート戦略を行うなら、プロのファンドに任せたほうがよいと思います」と春尾氏。個人投資家は「基本的にショートすべきではない」と明快に告げる。それは決して営業トークではなく「売りの怖さ」を知っているからこその助言だろう。

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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