ニッポン、新時代

ジョージ・ソロスの教えを生かして成果を残す

ベースに根付くのは伝説的投資家の手法、スパークスAM・春尾卓哉氏が実践する「ロング・ショート戦略」の本質

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理想的な「プラスサム」に突入の日本市場、なかでも注目は……

スパークスの投資は、企業の実態価値、つまりは実力値とその企業の株価の“乖離”に目をつけるところから始まる。もし実力値よりも株価が割安であれば、いずれその差は埋まると見て銘柄を買う。反対に割高ならショートする。さらに、その“乖離”が埋まるきっかけや時期を加味して投資のタイミングを探る。こうして利益を獲得していくのが基本スタンスだ。春尾氏もこの判断軸で日々の運用を行っている。

2008年に新卒でスパークスAMに入社した春尾氏は、1年目からリーマン・ショックを経験するなど、さまざまな状況を見てきた。その道のりがあるからこそ、どんなに市場が急変しても判断軸をぶらさず、実力値と株価の乖離を冷静に見ることを心がけていると話す。

では同氏にとって、今の日本市場はどう映っているのだろうか。そう聞くと「魅力的な市況になりつつある」と伝える。

「日本は持続的なインフレ環境に転換していますし、企業の動向を見ても、株主を尊重した経営が浸透してきました。これらにより、プライム市場を中心に株価が上昇しています。多くの投資家が利益を得られる“プラスサム”の市場環境になってきたと感じます。」

その上で、これから投資する対象としては「中小型株、とりわけグロース市場銘柄に注目している」と春尾氏は付け加える。

「大型株中心のTOPIXや日経平均株価がここ数年で大きく上昇したのに対し、中小型株が中心となるグロース市場は停滞が続いてきました。ですが、グロース市場すべてが悪いのではなく、なかには優良銘柄があるはずです。今はグロース市場全体の指数や印象に引っ張られて株価が停滞しているものの、確かな実力を持っているグロースの中小型株は存在します。そのような銘柄は、まさしく『実力値と株価の乖離が起きている状況』であり、チャンスがあるでしょう」

投資上達のコツは「SNSを見ないこと」

新しいNISAにより、ここ数年で投資を始めた人は格段に増えた。その中で個人投資家に伝えたいのは「自分で考えて投資をしてほしい」ということだと話す。

「最近は、著名なインフルエンサーのSNSを見て、その人が買っていた銘柄を『私も買いました』という人をよく見かけます。しかし投資とは、本来そういうものではないでしょう。自分で考えて、判断して行うものです。『投資は自己責任』と言いますが、それは買うという行為だけでなく、どの銘柄を買うか考えるプロセスも自分で責任を持つことだと思います。そもそも、そのインフルエンサーが本当に該当の銘柄を買っているのかわかりません。何より、自ら考えて買わなければ、知識も積み上がらないでしょう」

ついインフルエンサーの言葉に流されて投資判断をしてしまう――。そういった人に対しては「SNSを見ないことから始めてみてはいかがでしょうか。そのほうがパフォーマンスは上がるかもしれません」と和やかに伝える。

社会人1年目にリーマン・ショックを経験して以来、春尾氏は、つねに「明日は何が起きるかわからない」と頭の片隅で考えながら投資に携わってきた。2020年のコロナショックでも、その思いを強くしたという。あの時のように市場が“窮地”に陥った時、自分が保有している銘柄を手放すべきか、持ち続けるべきかという判断は、結局のところ、なぜ自分がその銘柄を購入したのかとつながってくる。だからこそ、自分で考えて投資しなければならない。さまざまな相場を見てきたファンドマネージャーだからこそ、その言葉には強い思いが込められている。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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