BtoB企業だからこそ、個人に会社や業界を知ってもらう工夫が大事
“総合力世界No.1”を目指す日本製鉄が「株式分割」に踏み切った背景
「株式分割」における最大のハードルは「コスト」
株式分割に対して、社内から反対の声が出ることはなかったそう。
「社内では、個人投資家を含む幅広い層に当社の株主になってもらいやすい環境を整えることのほうが重視されたと感じています。ただ、株主の増加によるコストの増加に関しては、懸念する声もありました」(有村さん)
企業は株主に対して、株主総会の招集通知や事業報告書、配当金関係の書類などを送る。株主が増えると、印刷費や郵送費などのコストが増えていくのだ。
「社内で議論を行っていくなかで、『株式分割を行ったら株主が100万人を超えるのではないか』という話も出ました。2025年9月末時点で株主数74万人だったので、25万人程度の株主が増えることを見越し、どのような努力がコスト削減につながるか、話し合いました」(有村さん)
その努力のひとつが、招集通知の電子化。日本製鉄では、2023年3月以降に実施される株主総会に「株主総会資料の電子提供制度」が適用された時点から、招集通知の電子化を開始し、今後も継続していく予定とのこと。
「当社では、2023年の株主総会から『アクセス通知(株主総会資料を掲載したホームページのアドレスを書面で通知すること)』オンリーに切り替えました。当社にとっての費用削減、株主の方々にとっての迅速性、環境面への配慮など、制度上の主旨を踏まえて初年度から切り替えを行っており、これからも継続していく予定です。今後さらにコスト削減などにつながるような制度改正があれば、積極的に取り入れていきたいと考えています」(有村さん)
株主増加による懸念点として、多くの企業で挙げられるのが「問い合わせの増加」だが、日本製鉄ではそこまで大きなハードルにはならなかったという。
「BtoC企業の方のお話を伺うと、自社製品やサービスに対するご意見を株主の方からいただくことがあるそうなのですが、当社では個人の方からの製品や事業に関する問い合わせは多くありません。株主の方々からの問い合わせも、『配当金はいつ振り込まれるの?』といった株式関連のものがほとんどです。株式分割によって株主の方々が増えたからといって、対応し切れないほどの問い合わせが来るとは考えられませんでした」(有村さん)
「株式分割直後に『なんで分割したの?』という問い合わせをいただきましたが、ご苦言ではなく純粋な疑問という印象で、我々の目的をきちんと伝えることでご理解いただきました。分割から3カ月ほどが経った現在も、マイナスの声をいただくことはほとんどありません」(三友さん)



