優待やイベントを通じて関係を深めることで「株主=ロイヤルカスタマー」に
JR東日本が「株式分割」をはじめとする個人株主向け施策を強化する理由
「デジタル化」によるコスト削減以外の効果
株式分割や株主優待の見直しによって株主が増えると、各種通知書類の印刷や郵送にかかるコストも増加するといった課題がある。JR東日本では、どのように解決したのだろうか。
「数年前から電子化を進めています。株主総会関係書類でいえば、招集通知を段階的にアクセス通知(ウェブ上の総会資料にアクセスできるURL・QRコードを記載した書類)に移行しました。2026年6月の総会からは、招集通知のメール提供も開始します。郵送のタイミングは、株主優待の発送タイミングを見直し、年4回から年3回に減らしました。また、株主優待の一部は2024年から電子提供としています」(新川さん)
「株式を複数銘柄保有していると、同じタイミングでさまざまな書類が届くので、分厚い招集通知を開くだけでも億劫になる方も多いのではないかと考えています。当社に対する興味や愛着の度合いを高めていただくため、電子化を進めながらも、デジタルネイティブの方でなくても簡単に情報を探し出しやすい書類になるよう心掛けています。例えば、重要な情報がパッと見てわかる紙面にしつつ、詳細についてはQRコードを読み込んでもらう構成にするなどの工夫をしています」(後藤さん)
株主総会の招集通知のアクセス通知化は、思いがけない効果が出ているそう。
「株主総会や議決権に関して詳しくない方にも理解していただけるよう、招集通知に記載されたQRコードを読み込むと、1年間の事業報告と総会の議案、議決権行使の方法を社長が案内する動画が再生される構成にしています。トータルで10分ほどのコンパクトな内容にしているのですが、視聴数は年々増えており、2025年度は2万3000回再生されました」(後藤さん)
動画を用意したことで、個人株主の議決権行使率が上昇しているという。
「かつて個人株主の方々の議決権行使率は3割程度で推移していましたが、動画を掲載し始めてからは行使される方が増え、2025年度には5割を超えました。そもそも議決権行使の方法は誰も教えてくれませんし、議案の内容も理解しづらい部分があると思います。その部分を動画で丁寧かつ簡潔にお伝えすることでハードルが下がり、行使していただけるようになってきたのだと捉えています」(後藤さん)
「議決権を行使していただけるのは、とてもありがたいことですし、会社と個人株主のエンゲージメントの状況を表すひとつの指標と捉えています。最初にお話しした通り、個人株主の方は当社のユーザーである可能性が高いので、きちんと意見を聞いて経営に反映していきたいと思っています」(新川さん)



