優待やイベントを通じて関係を深めることで「株主=ロイヤルカスタマー」に
JR東日本が「株式分割」をはじめとする個人株主向け施策を強化する理由
個人株主向けイベントを月1回以上のペースで開催
株式分割や株主優待以外にも、個人株主に向けて力を入れている施策があるという。
「個人株主の方々を対象にしたイベントに力を入れています。当社グループは多岐にわたった事業を展開していますが、まだまだ知られていない部分がたくさんあると感じています。当社をより深く知っていただくため、事業やサービスをご紹介する機会としてイベントを実施し、年々規模を大きくしています」(後藤さん)
過去には、宮城県の新幹線総合車両センターを現地で働く社員が案内するイベントや首都圏の鉄道の電力をまかなう水力発電所の見学ツアー、親子向けの新幹線清掃体験教室など、さまざまなイベントが実施された。
「コンテンツの豊富さは当社グループの強みであり、『株主イベントといえばJR東日本』と認知されることを、この数年目指してきました。2025年度には14回のイベントを実施し、2026年度は19回の実施を予定しています。以前は、参加者を募集するタイミングが年2回の書類を送付する時期に限られたのですが、数年前に個人株主の方々を対象にしたメールマガジンを開始し、いつでも募集できる環境が整ったことが影響しています」(新川さん)
「イベントに参加された方にアンケートにご回答いただき、そこでいただいた感想やご指摘をもとに、イベントをブラッシュアップしています。継続的に実施しているイベントもありますが、毎回同じメニューではなくよりよいものにするため、関係者一同頭をひねって企画を立てています」(後藤さん)
個人株主向けのメールマガジンを用意したことで、株主の属性や要望を拾いやすくなったという側面もある。
「従来の株主名簿だと、株主の方のお名前、ご住所、保有株式数ぐらいしか把握できません。しかし、メールマガジンを登録していただく際に年齢や性別などをご入力いただくことで、どのような方がイベントに参加し、ポジティブな感情を抱いてくださっているかということがわかります。マーケティングに近いですが、ある程度戦略を立ててアプローチしていける形に変わってきているので、株主の皆さんにも喜んでいただきやすくなっているのではないかと思います」(後藤さん)
「ユーザーを分析して、ニーズに沿うものを提供するのはビジネスの基本。個人株主の方々も当社のユーザーであると考えると、皆さんのことを知ったうえで喜んでいただけるものを提供するのはごく自然なことです。株主優待だけでなく、イベントや情報発信にもこういった視点で戦略性を高めています。こうして株主の方々にロイヤルカスタマーになっていただけたらうれしいですし、その結果として当社の企業価値も上がっていくと考えています」(新川さん)
日常的にサービスに接している人も多いであろうJR東日本。その知名度にあぐらをかかず、株主に喜んでもらえる施策を追求する姿が、ファンを増やすのだろう。
(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)




