現役アナリストが考えるM&Aの成否を分ける要因
提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント
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企業買収(M&A)はよく、結婚に例えられます。相性と条件。どちらも、生涯の伴侶を見極める際に、重視される方が多いのではないでしょうか。企業買収に際しても同様です。2025年、これら要因が成否を分けた2つのM&Aを紹介します。一例目は、ミネベアミツミ(証券コード6479)、二例目は牧野フライス(同6135)です。M&Aに対峙する両社の真摯な姿勢が、筆者の心に深く刻まれた事案でもあります。
事例1 ミネベアミツミ |社員の心をつかんだのはミネベアミツミ。しかし条件でYAGEOに軍配
ミネベアミツミは、2025年4月10日に、YAGEOから買収提案を受けていた芝浦電子への公開買付を公表しました。いわゆる「ホワイトナイト」です。同日行われた記者会見でミネベアミツミの貝沼会長は以下のように述べました。
「TOB公表と同時に私(貝沼会長)自身がさいたま市の芝浦電子本社に赴き、従業員に対し約1時間訓示を行った。私が到着した際、本社に在籍する約100名の芝浦電子従業員から割れんばかりの拍手を受け、涙が出そうになった。PMI(買収後の統合作業)は必ずうまくいくと確信した」。
ミネベアミツミはこれまで、ミツミ電機、ユーシン、エイブリックなどの買収を成功させてきました。公開買付開始直後から、対象会社の従業員の気持ちに深く配慮する貝沼会長の姿勢は、買収巧者としての同社の強みを切り取った一場面でした。
その後、ミネベアミツミ、YAGEO双方が買収提案価格を引き上げましたが、最後はより高い金額を提示したYAGEOによる買収が決まりました。高値掴みを未然に防ぐためのポリシー(買収価格は営業利益の10倍まで)や円安の逆風もあり(円安下では外貨の価値が向上し、外資系企業による買収資金負担が相対的に軽くなる)、ミネベアミツミにとっては残念な結果となりました。しかし、今回のM&Aプラクティスを通じ、同社の真摯な対応が深く印象に残りました。
事例2 牧野フライス |ニデックの買収提案で社員が奮起、ファンド傘下で自立の道を選択
二社目は牧野フライスです。同社は2024年12月27日に、ニデックから事前接触なき買収提案を受けました。ニデックは2025年5月8日に買収提案の取り下げを公表しましたが、それ以前から対抗提案を検討していたアジアのファンドMBKからの買収提案に対し、2025年6月3日、牧野フライス取締役会は賛同を表明しました。各国の独禁法当局による承認が得られれば、牧野フライスは一旦上場廃止となります。
ニデックの提案は「同意なき」を超え「事前接触なき」TOBだったことから、果たして日本においてこのような手法が受け入れられるのかどうか、社会的にも注目されました。また牧野フライス従業員組合員の92%がニデックの買収提案に反対を表明していたことも、明らかにされています。
2025年10月31日公表の牧野フライス第二四半期決算は、受注、売上、営業利益ともに会社計画を上回る進捗となりました。トランプ関税の影響や、中小企業の設備投資様子見により、工作機械メーカーの競合他社業績に減速感が見られる中、牧野フライスの底堅さが光りました。「ニデックのTOB公表以降、牧野フライス本来の企業価値を示すために、従業員が奮起している」ことを、その後知りました。
牧野フライスは、高精度工作機械を製造し、特に金型や航空機産業向けで高いブランドを構築しています。2025年6月の定時株主総会で牧野フライスの宮崎社長は「5-7年後の再上場を目指す」とコメントしました。優れた技術、高い製品競争力を有する同社が、一段強くなって株式市場に戻ってくることを、今から楽しみにしています。
M&A成功の秘訣は「相性」と「条件」のバランス。対峙姿勢から垣間見える企業の真の姿にも注目
ここまで、企業買収の成否を決める要素として、ステークホルダー(従業員、顧客、株主等)の賛同(相性)、買収提案価格(条件)が重要であることを見てきました。相性だけでも、条件だけでも結婚生活がうまくいかないのと同様に、これらが良い具合にバランスした先に、M&A成就が見えてきます。
読者のみなさんが今後、M&Aのニュースに触れたとき、『相性』と『条件』をめぐるドラマが裏で繰り広げられていることを想像してみると、株式投資や各企業への理解がより一層深まるかもしれません。
※上記は特定の有価証券への投資を推奨しているものではありません。
(提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント)
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