乱高下する相場に惑わされない長期投資
先物トレーダーに学ぶ「止まらない上げ相場」との付き合い方
提供元:三井住友DSアセットマネジメント
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(はじめに)
古今東西、相場には様々な格言がありますが、「利食い千人力」「頭と尻尾はくれてやれ」など、欲張りすぎを戒めるものが少なくないようです。一方で、昨年の夏場以降の日本株のような大方の想定をはるかに超えていく力強い上昇相場では、早すぎる利食いに「こんなに上がるなんて」「こんな思いをするなら、初めから買わなければよかった」と地団駄を踏む投資家も少なくなかったのではないでしょうか。
大方の想定を超えて史上最高値の更新を続ける日本株ですが、最近は混乱が広がる中東情勢を受けて乱高下する展開となっており、こうした相場との付き合い方に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。先がなかなか見通せないこのご時世、最近の日本株のような「止まらない上げ相場」とどう付き合っていけば「後悔しない投資」ができるのでしょうか。
「空前の株高」に沸く東京株式市場
高市自民党の解散総選挙での圧勝もあって「空前の株高」に沸いていた日本株ですが、ここへきて米国によるイラン空爆の開始により、市場は乱高下する展開となっています。相場は常に売り材料と買い材料がせめぎ合う「絶妙の価格」で推移しますが、現在のように日替わりで様々な材料が飛び出すような市場環境では、例え儲かっていても心休まることはなさそうです。そして、日本株には強気なのだけれど、日々流される膨大な「上げ材料」と「下げ材料」の洪水に翻弄されて、これからどうしていったら良いか、なかなか整理がつかない投資家も少なくないでしょう。
相場は売り手と買い手の思惑が一致する価格で決まるので、常に微妙なバランスの上に成立しています。2025年の日本株の動向を振り返ると、日経平均株価は年間に約26.2%上昇、TOPIXは約22.4%、そして、電線株を含む非鉄金属株は100%を超える高パフォーマンスを記録しました。しかし、その一方で、(1)昨年4月にはトランプ関税ショックにより市場は大幅な調整に見舞われ(図表1)、(2)予想株価収益率(PER)は過去平均から上振れした「割高状態」が続き(図表2)、そして、(3)世界の株高をけん引してきた米国のAI関連株についてはデータセンターへの過剰投資が問題視されるようになるなど、相場として強い基調を維持しながらも、「売る理由」に事欠かない年でした。このため、手練れのプロ達でも頭を悩ませる、「難しい相場」だったといえそうです。
このため、「空前の株高」に乗り損ねてしまったり、上昇の初期段階で「やれやれの売り」を出してしまい、その後の相場急騰を目にして自責の念にさいなまれている方も少なくないでしょう。現在も史上最高値圏で乱高下が続く日本株ですが、こうした思うに任せない相場で「後悔しない投資」を続けていくには、どうしたらよいのでしょうか。
改めて考える、日本株の新値更新の意味
相場は市場参加者の多くが「高い、高い」と呻めきながら上がり、「安い、安い」と言いながら下がることが少なくありません。というのも、相場は「これから起きること」を織り込みながら動く一方、多くの投資家(一部のプロを含む)は、経済紙などのメディアが報じる「過去に起きたこと」を気にして売買している場合が殆どだからです。こうした相場への理解不足と誤ったアプローチが、多くの投資家とマーケットの「すれちがい」の背景にあるように思われます。
「相場が正しい」という謙虚さ
たとえプロの投資家であっても、相場を読み切って上手に立ち回ることは稀で、相場が動いてからその背景やファクトに気づくことが少なくありません。昨年2025年を振り返っても、アナリストが企業の業績予想の上方修正を開始し、実際に業績が改善し、予想外の好決算に市場が沸いたのは、マーケットが大きく上昇した後、ないしは、上げ相場の「おいしい時期」が過ぎた後でした(図表3)。
冒頭で紹介した「早めの利食い」や「貪欲さへの戒め」についての相場格言も、「相場は何が起きるかわからない」「私たちは将来についてほとんど知らない」「強気、弱気の相場観も過去に依拠した思い込みに過ぎない」といった謙虚さを持つことの大切さを説くものと言えそうです。
改めて日本株の「現在地」を確認すると、(1)史上最高値を更新しながらレンジを切り上げる上昇相場で、(2)高い株価評価が続き、(3)強く明確な上昇トレンドが出現しているように見受けられます。このため、相場が発するサインに謙虚な気持ちで向き合うなら、現在の「止まらない上昇相場」は、(1)私たちが気づいていない日本経済や日本企業の明るい未来を示唆しており、(2)高いバリュエーションはまだ明らかになっていない買い材料をマーケットが織り込み始めているためで、(3)明確な上昇トレンドが続いていることは市場の勢いの強さを示しており、軽はずみな売りは「踏み上げ(売り方の買戻し)相場」で痛い目に合うかもしれない、と考えておいた方が良さそうです。
今、目の前にある価格やマーケットの動きを冷静に受け入れ、その背景について様々な「仮説」に考えを巡らす謙虚さこそが、賢明な投資姿勢と言えそうです。そして、日々のメディアを賑わすニュースは、将来を予測するためのヒントというよりは、そうした「仮説」の「答え合わせの材料」に過ぎないように思われます。
先物トレーダーに学ぶ「止まらない上げ相場」との付き合い方
昨年来の日本株の大幅上昇を受けても、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に代表される日本の機関投資家の多くは、株式市場で目立った動きは見せていないように思われます。仮に動いたとしても、大きく買ったり売ったりせず、せいぜい日本株のウエイトを調整するための「少額の売り」を出すぐらいではないでしょうか。こうした「おっとりとした運用」を見ていると、「相場がこれだけ動いているのだから、もっと積極的に売買した方が良いのでは」と感じる相場好きは少なくないでしょう。こうした機関投資家と対極の動きを見せるのが、派手な売買で知られるヘッジファンド、特に、先物取引顧問業をルーツにもつCTA(Commodity Trading Advisor)です。
チーフグローバルストラテジスト
都市銀行で資金為替ディーラー、信託銀行やロンドンの現地運用会社で株式アナリスト及びファンドマネージャー。2007年に大和住銀投信投資顧問(現三井住友DSアセットマネジメント)入社、日本株ファンドマネージャーとして中東産油国の政府系ファンドを担当。15年から米国現地法人社長、22年から現職。
内外株式、外債、デリバティブなど多様なマーケット経験をもとに、グローバルな視点から投資情報を発信します。
趣味:ゴルフ(HCP9)、車、赤ワイン、立ち食い蕎麦、昭和のプロレス
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