解決すべきは「働き手不足」よりも深刻な問題
人口が減る中で日本経済は成長できるのか? 50年後に「半減」もある中でこの国に必要なこと
「働き手不足」よりも大きな問題がある
――そのほかに、人口減少下で企業が成長していくためのポイントはありますか。
河合 人口減少の本質的な問題は「消費者不足が起きること」です。企業はそれを認識した上で、ビジネスの戦略を練ることが重要でしょう。
――どういうことでしょうか。
河合 人口減少が起きると、まず注目が集まるのは「働き手不足」です。しかし、企業が本当に考えなければならないのは、働き手が足りなくなること以上に「消費者不足」なのです。
たとえば近年、地方の路線バスや鉄道が存続の危機に瀕しているということが話題に上ります。その原因として運転手の不足、つまり働き手がいないことがよく挙げられますよね。しかし問題の本質は、乗客が減っていることです。売り上げが伸びずに路線が赤字になっているのです。運転手を確保するために賃上げをしたくてもできないので、他の仕事に人材が流れます。こうして働き手の確保が難しくなっているのです。
――運転手不足を補うにも、まずは消費者が減っているという課題と向き合わなければならないと。
河合 はい。最近は自動運転によりバスの運転手不足をカバーする取り組みもありますが、仮に自動運転バスを実用化したとしても、乗客が減っていく路線では収益を上げるのが難しい。それでは自動運転バスの購入費用や維持費をまかなえませんよね。結局はバス事業として存続できません。
自動運転バスを導入することを否定するつもりはありません。しかしながら、消費者不足という根本の問題を解決しないかぎり、ビジネス上の課題は何ら片付きません。バス事業者に求められているのは、消費者不足が深刻化する中でどう利益を確保するかという事業モデルの転換なのです。
――ここまでは「企業がどうすべきか」というテーマでお話を伺いましたが、私たちが暮らす社会としては、人口減少下でどのような姿を目指せばよいのでしょうか。
河合 私が提唱しているのは可能な限り商圏を維持する政策です。特に地方圏では人々が点在して暮らすのではなく、地域ごとに人々が集まり住むことです。全国各地に小さな商圏をつくり、それらがネットワーク化することです。
各地に人口集積エリアをつくれば、そこでは企業や商店は成り立ち得ます。水道や電気、ガスなどの生活インフラも、地域を限定すれば維持費を削減できます。たとえば、広範囲に張り巡らした水道管の修繕や点検だってかなり効率化できます。集住すれば住民同士の助け合いもしやすくなるでしょう。
都市とは「人類最大の発明」だと思います。人が集まることで経済や文明、文化が成長するのです。人口減少下では、都市のメリットを最大限活かしていくことが必要だと思っています。
――最後に、日本の人口減少が進んでいくことをふまえて、個人投資家の方にメッセージはありますか。
河合 自分の資産を増やすために投資をすることはもちろん重要ですが、投資の役割はそれだけではないと思います。次の時代や社会を作る企業を支援していくために投資を行う人が増えていくことにも期待したいです。
人口減少が進む日本は、間違いなく「時代の転換点」を迎えています。こうした状況下では、この国の未来を作っていく企業、この国を支えていく企業が必要になります。そういった企業を育てていくという思いで、投資と向き合ってもらえたらうれしいですね。
(取材・文/有井太郎)
※記事の内容は2026年3月現在の情報です
産経新聞社論説委員を務めた後、独立。現在、東京財団シニア政策オフィサー、高知大学および大正大学客員教授のほか、厚労省、人事院の委員や産経新聞社客員論説委員、超党派国会議員の「人口減少戦略議連」特別顧問なども務める。これまで内閣官房「地方創生会議」、内閣府、農水省などの委員や日本医師会総合政策研究機構客員研究員等も歴任した。
「ファイザー医学記事賞」大賞、「文藝春秋読者賞」など受賞多数。主な著書に累計100万部超の『未来の年表』(講談社現代新書)シリーズや『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)など。

