マクロ経済変数はセクター・パフォーマンスにどう影響するのか
提供元:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
マクロ変数がセクターに与える影響は直観と一致
マクロ変数がセクターに与える影響に関する当社の調査結果は、経済的な直観と概ね一致しています。
• 石油・ガス産業や金属・鉱業などのコモディティ関連セクターは、原油価格と米ドルに対して特に高い感応度を示しています(この2つの変数はコモディティ価格に直接影響するため)。コモディティ価格はインフレ期待を押し上げ、当該セクターの利益を増加させる傾向があり、これらのセクターはインフレ期待と順相関関係にあります。
• 金融やエネルギーのような景気循環型産業は、10年利回りに連動する傾向があります(10年利回りの上昇は通常、経済成長の強さを示すためです)。10年利回りに対するエネルギーの感応度の高さは、以下の図表に示したように、主として2009年以降の10年利回りと原油価格の高い相関性によるものと思われます。
• コミュニケーション・サービスおよび情報技術は、10年利回りと逆相関関係にあります。これは両セクターが成長志向で、デュレーションが長い特性を有していることで説明できます(リスクフリーレートの上昇はグロース株のバリュエーションをより圧迫するためです)。
• ヘルスケアや生活必需品のようなディフェンシブ・セクターは、原油価格下落、インフレ期待の低下、米ドル高の局面で相対的にアウトパフォームしやすい傾向があります。これらは、景気見通しの悪化やリリスクオフ・センチメント上昇によって生じるためです。
マクロ経済ショックに対するセクター感応度を測定
セクターとマクロ経済変数の関係が、変数の急激な変動によって強まるのか弱まるのかを確認するため、マクロ経済変数が過去平均からどれだけ乖離(かいり)しているかに基づいて、サンプルデータを2つのグループに分けました。変数が平均値から1標準偏差以上乖離(かいり)している場合、その変動を急激な変化とみなします。
以下の表に、2つのデータ・グループにおける、各セクターと各マクロ経済変数の間の単純線形回帰の決定係数を示しました。ほとんどのセクターは、変数に急激な変化が起きたときに変数との相関性を強めています。
一方、変動が1標準偏差以内の場合、すべてのセクターの決定係数(エネルギー産業と原油価格の決定係数を除く)は最低基準である0.08を下回りました。これは、マクロ経済変数の動きが小さい局面では、線形関係が有意ではないことを示しています。
イールドカーブがセクターに与える影響をチャート化
投資家や政策当局は、将来の経済状況を予測するためにイールドカーブの傾きを注視してきました。金融政策はイールドカーブのスプレッド、経済活動、短期的な株式市場パフォーマンスに大きく影響します。
イールドカーブのスプレッドに織り込まれている将来のインフレや金融政策に対する期待は、経済成長見通し、さらには株価にも影響を及ぼします。米国債の10年物と2年物の利回り格差を、イールドカーブの傾きの代理指標として使用します。スプレッドの拡大はイールドカーブのスティープ化を示し、縮小はフラット化を示します。
当社はまず、イールドカーブの変化の種類(スティープ化/フラット化)とセクター・パフォーマンス(市場をアンダーパフォーム/アウトパフォーム)の間に有意な関係があるかを判断するため、独立性のカイ二乗検定を実施しました。これにより、影響の分析対象をさらに9セクター(銀行、地銀、資本市場、石油・ガス設備・サービス、ソフトウェア・サービス、生活必需品、金融、不動産、公益事業)に絞りました。
10年と2年の利回りの変化の方向性および相対的な変化幅に基づき、イールドカーブの変化を6つにカテゴリーに分類し、図表6に示したように、多重線形回帰分析でイールドカーブの各タイプを示すために5つのダミー変数X1 ~ X5 (0または1)を作成しました。
回帰モデルの切片(β0)は、イールドカーブがベア・スティープ化したときの平均相対リターンとして解釈されます。β0 + β1 , β0 + β2, …… β0 + β5は、他の5タイプのカーブの変化を所与とする相対リターンの推定平均値です。
銀行、地銀、不動産、公益事業の線形回帰モデルによると、調整後決定係数は0.08を上回り、イールドカーブにこれらのセクターのリターンを説明する力が十分にあることを示しています。
以下の表に、様々なイールドカーブの変化における相対リターンの推定平均値を示しました。係数の有意性の検定(t検定)を通過した推定値のセルはグリーンに色付けしています。ただしイールドカーブのブル・スティープ化、ツイスト・フラット化、ツイスト・スティープ化の各タイプについては、観察事例がデータ・サンプル内にそれぞれ約20件しかないため、これらのシナリオの推定値を見るときは注意が必要です。
このイールドカーブがセクターに与える影響に関する分析結果は、概ね想定どおりの内容となっています。
• 銀行:銀行は短期金利で借入れ、長期金利で貸出すため、通常、銀行の利益にとってイールドカーブのスティープ化は追い風、フラット化は逆風となります。ベア・スティープ化シナリオでは、カーブの長短セクターの金利の上昇は、金融政策が引き締められても成長見通しの妨げとならず、借入需要や銀行の収益の伸びはさらに支えられることを示しています。
• 公益事業と不動産:米国債利回りが低い場合、投資家にとって公益事業と不動産の高配当収入の魅力が高まります。利回り低下は通常、景気成長見通しの悪化や市場のリスクオフ・センチメントを示し、公益事業と不動産の高配当ディフェンシブ株に有利です。
その他の変数もセクター・パフォーマンスに影響
この調査では限られたマクロ経済変数の影響に注目しましたが、もちろん、分析対象外の多くの変数もセクター・パフォーマンスに影響を及ぼしています。たとえば、その他の経済変数、業界固有の長期トレンド、バリュエーション、金融政策、短期的な市場センチメントなどが挙げられます。
経済変数は複雑で互いに影響し合う性質があるため、どの変数がセクター・リターンを左右するのかを事前に見通すことも、マクロの予想がすでに価格に織り込まれているかどうかを判断することも困難です。この調査では、これらの変数を用いてセクター・パフォーマンスを予想するというよりも、約20年にわたる期間を通じて、特に重要そうなマクロ経済変数とセクターの関係がどれかを投資家が理解する手助けをします。
線形回帰モデルには限界があるため、この調査で特定できるのはマクロ変数と強い線形関係をもつセクターに限られます。セクターによっては、より複雑な関係性が存在し、それを表現するには非線形モデルが必要となる場合があります。もちろん、複雑な非線形アプローチを取り入れれば、モデルを簡単に理解・解釈するのは難しくなるでしょう。
この調査結果だけを利用してセクター・パフォーマンスを予想したり、セクター・ローテーションの売買シグナルを提示したりするのではなく、投資家はセクターのファンダメンタル分析や、当社のセクター別ビジネスサイクル・フレームワークと併せて活用し、特定の経済環境下で特定のセクターに投資するメリットを評価することをお勧めします。
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