国民健康保険(国保)の賦課限度額引き上げとは?保険料との関係も解説

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国民健康保険(国保)の賦課限度額引き上げとは、保険料の賦課対象に設けられた上限を引き上げることです。引き上げに伴い、一定以上の所得がある層の保険料が増える可能性があります。

2025年度に続き、2026年度も国民健康保険の賦課限度額が引き上げられる見通しです。自分の保険料に影響を及ぼすこともあるため、国民健康保険の加入者は制度を理解しておきましょう。

本記事では、国民健康保険賦課限度額の引き上げと保険料の関係や、保険料の計算方法について解説します。

国民健康保険(国保)の賦課限度額引き上げとは

国民健康保険(国保)の賦課限度額引き上げとは、社会保障審議会の議論を踏まえ、厚生労働省が2026年度の賦課限度額を110万円に引き上げる方針を示したことです。

国民健康保険料は、医療分(基礎分)・支援分・介護分で構成されています。医療分は国民健康保険料の基礎となる部分、支援分は後期高齢者の支援金となる部分、介護分は40歳以上が加入する介護保険制度を支える部分です。

そのうち、2026年度は「医療分(基礎分)」のみを「1万円」引き上げする方針が示されています。

近年賦課限度額が引き上げられる理由

医療費の増加が、国民健康保険の賦課限度額の引き上げが続く主な背景です。

近年、高齢化などの影響で医療費が増加しているため、保険財政の安定化や被保険者間の負担の公平性を確保する観点で、賦課限度額が見直されています。賦課限度額の引き上げによって影響を受けやすいのは、主に高所得者層です。

なお、2025年度にも賦課限度額が106万円から109万円まで引き上げられています。近年における賦課限度額の引き上げ経緯をまとめました。

・2022年度 +3万円:医療分(基礎分)が+2万円、支援分が+1万円
・2023年度 +2万円:支援分が+2万円
・2024年度 +2万円:支援分が+2万円
・2025年度 +3万円:医療分(基礎分)が+1万円、支援分が+2万円

方針通りに2026年度も引き上げが実施されると、2022年度より5年連続での引き上げとなります。

国民健康保険賦課限度額の引き上げと保険料の関係

そもそも、賦課限度額とは保険料の賦課対象に上限を設ける仕組みを指します。

国民健康保険料には賦課限度額が存在するため、一定の所得水準を超えるとそれ以上所得が増えたとしても納付する保険料は基本的に同額です。一方、賦課限度額が引き上げられると、これまで上限に達していた高所得層は改定後の上限額まで保険料を負担することになります。

なお、国民健康保険料を納付する人(加入者・被保険者)は、自営業者やフリーランス、農業・漁業従事者などです。

国民健康保険の保険料の計算方法

国民健康保険の保険料を計算するにあたって、以下の点を押さえておきましょう。

・国民健康保険料は「医療分(基礎分)」「支援分」「介護分」で構成されている
・年齢によって納付額が異なる場合がある
・所得割・資産割・均等割・平等割の組み合わせで計算した合計額が納付する保険料になる

所得割は世帯加入者の所得に応じて、資産割は世帯加入者の資産に応じて計算する項目です。また、均等割は世帯加入者の人数に応じて、平等割は一世帯あたりで決まった額で計算します。

賦課限度額や4つの項目の組み合わせは、自治体によって様々です。ここから、2025年度に東京都港区に居住する世帯人数1人・所得(※)700万円の人のケースを使って、計算方法を解説します。

※所得:前年の総所得金額等から基礎控除額を引いた額

医療分の計算方法

東京都港区では、均等割と所得割を合計して医療分を計算します。

2025年度における医療分の均等割額は47,300円、所得割は7.71%です。そのため、今回のケースで医療分の額は587,000円となります(47,300円 + 700万円 × 7.71% )。

また、2025年度における医療分の賦課限度額は66万円です。

支援分の計算方法

東京都港区では、均等割と所得割を合計して支援分を計算します。

2025年度における支援分の均等割額は16,800円、所得割は2.69%です。そのため、今回のケースで支援分の額は205,100円となります(16,800円 + 700万円 × 2.69% )。また、2025年度における支援分の賦課限度額は26万円です。

介護分の計算方法

東京都港区では、介護分も均等割と所得割を合計して計算します。

2025年度における介護分の均等割額は16,600円、所得割は2.25%です。そのため、今回のケースで介護分の額は174,100円となります(16,600円 + 700万円 × 2.25% )。

また、2025年度における介護分の賦課限度額は17万円です。そのため、今回は17万円が介護分の額となります。

ここまで計算した数値を合計することで、本ケースにおける保険料は962,100円(587,000円+205,100円+170,000円)と計算できます。ただし、介護分は40歳以上65歳未満の場合のみ負担するものです。

なお、今回はいずれも均等割と所得割の合計で計算するケースでした。しかし、自治体によっては、平等割・資産割が発生するケースもあるため、注意しましょう。

国民健康保険賦課限度額の引き上げによる影響

国民健康保険賦課限度額の引き上げは、一定以上の所得がある国民健康保険の加入者に影響を及ぼす可能性があります。自治体によっても細かな計算方法は異なりますが、単身世帯の場合は、年収1,170万円前後が、引き上げによる影響を受ける目安です。

なお、厚生労働省の「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」では、2026年度に引き上げしない場合に限度額に該当する世帯は全体の「1.45%」であるのに対し、引き上げにより「1.43%」に抑制されるとしています。

国民健康保険制度について押さえておくべきこと

国民健康保険制度自体について、押さえておくべきことは以下の通りです。

・保険料は原則10回に分けて納付する
・年度途中で加入した場合は月割で保険料を計算する
・自治体によって「保険税」のケースもある
・特別な事情がある場合に減免制度が適用できることがある

それぞれ解説します。

保険料は原則10回に分けて納付する

国民健康保険の保険料は、1年間に12回ではなく、原則として10回に分けて納付する点に注意しましょう。

年金天引きの場合を除き、6月から翌年3月まで毎月納付します。4月・5月の支払いはありません。

保険料の納付方法は、口座振替・納付書による窓口納付などです。また、一括納付書を使って1年分をまとめて納付する方法もあります。

年度途中で加入した場合は月割で保険料を計算する

年度の途中で国民健康保険に加入した場合は、月割で保険料を計算する点もポイントです。

会社員を辞めてフリーランスになる、個人事業主として飲食店経営を始めるなどで、年度の途中で厚生年金保険から国民健康保険に切り替えることもあるでしょう。例えば、2月10日から加入した場合は、2月分の保険料から計算されます。月の途中で国民健康保険に加入した場合でも、基本的に月割である点に注意しましょう。

自治体によって「保険税」のケースもある

自治体によっては、「保険料」ではなく「保険税」として、所定の金額を徴収されることもあります。

保険料も保険税も、賦課限度額に違いはありません。ただし、保険税のほうが保険料よりも徴収権(※)が時効消滅するまでの期間が長い点が、主な違いとして挙げられます。

なお、国民健康保険料の根拠法は国民健康保険法や地方自治法などであるのに対し、国民健康保険税の根拠法は地方税法などです。

※徴収権:確定した金額について納付を求めて、取り立てるための権利

特別な事情がある場合に減免制度が適用できることがある

特別な事情により国民健康保険料を納付できない場合は、減額免除制度を利用できることがある点も押さえておきましょう。具体例は、所得が一定基準の場合の軽減制度、未就学児に対する均等割額の軽減制度などです。

ただし、制度内容や要件は、自治体によっても異なります。気になる場合は、居住する自治体に確認しましょう。

2026年4月より国民健康保険料の賦課限度額が引き上げ予定

2026年度より、国民健康保険料の賦課限度額が引き上げられる可能性があります。賦課限度額が引き上げられると、一定以上の所得がある国民健康保険加入者の保険料額に影響を及ぼすでしょう。

また、保険料の計算方法は自治体によっても異なります。納付額の目安が気になる場合は、居住する自治体のホームページで均等割や所得割などの数字を確認しておきましょう。

参考:厚生労働省「第205回社会保障審議会医療保険部会(ペーパーレス) 資料」
参考:東京都「保険料(税)額について」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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