全国主要エリアで紐解く住宅ローン実態(1)
住宅ローンはエリアでどう変わる?
提供元:三井住友トラスト・資産のミライ研究所
住宅ローンは「エリア」で変わるのか
近年、住宅価格の上昇や金利環境の変化を背景に、住宅ローンを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。こうした動きはニュースでも頻繁に取り上げられるようになり、多くの人にとっても関心の高いテーマになってきました。
本コラムでは、こうした環境の変化を単なる全国平均として捉えるのではなく、首都圏、近畿圏、中京圏、その他とエリア別に切り分けて可視化することで、生活者がどのような判断を行っているのかを読み解いていきます。本テーマは全2回でお届けし、今回は主に住宅ローンの「借り方」に着目します。
条件を揃えて「地域差」に目を向ける
足元の住宅市場を語るうえで、まず押さえておきたいのは、住宅価格の上昇が一部地域に限った現象ではなく、全国的な構造変化として定着しつつある点です。資材価格や人件費の上昇を背景に建築コストは上昇しており、都市部か地方かを問わず、住宅価格は下がりにくい状況が続いています。
住宅購入を検討する生活者にとって、住宅価格上昇はもはや特別なニュースではなく、あらかじめ織り込んで考えるべき前提になりつつあると言えるでしょう。
こうした環境の変化は、住宅ローンの借り方にも影響を与えています。たとえば、ペアローンの活用や、借入期間を35年超に設定する超長期ローンの選択など、住宅ローン提供商品のラインアップ充実に対応した月々の返済額を抑えるための工夫は、以前よりも明らかに多様化しています。住宅ローンは単なる資金調達ではなく、家計全体の設計の一部として捉えられるようになってきています。
一方で、住宅価格や家計の状況は、エリアによって大きく異なります。住宅価格の水準だけでなく、世帯年収や金融資産の保有状況、共働きの割合など、住宅購入を支える土台には地域ごとの違いが存在します。そのため、同じ「ペアローン」や「超長期ローン」であっても、それが選ばれる背景は一様ではなく、エリアごとに異なる事情があると考えられます。
本調査では、こうした問題意識を踏まえ、首都圏・近畿圏・中京圏・その他地域の4区分で、住宅ローンの借入状況や家計・資産状況を多面的に整理しました。
購入年齢の中央値は横並び、早期取得には差も
まず、住宅購入のタイミングから見ていきます。直近5年以内に住宅を購入した人を対象にすると、どのエリアでも購入の中心は30代で、およそ半数を占めています。購入年齢の中央値も38歳前後と、エリア間で大きな差は見られません(図表1)。この点だけを見ると、住宅購入のタイミングは全国的に似た傾向にあるように見えます。
しかし、もう少し細かく見ていくと違いも浮かび上がります。20代で住宅を取得した割合については、中京圏や近畿圏の方が首都圏よりも高い傾向が確認されました。つまり、同じ日本の中でも、住宅購入の意思決定を行うタイミングには地域差が存在しているということです。
その背景として考えられるのが、地元就職志向の強さや、将来の居住地を比較的早い段階で見通しやすい環境です。転勤や転居の可能性が相対的に低い地域では、ライフプランを前倒しで描きやすく、その結果として住宅購入も早まる傾向があると考えられます。こうした地域特性が、住宅取得のタイミングに影響を与えている可能性は高いものがあると思われます。
【図表1】エリア別 住宅購入年齢

※中央値は、該当階級内で回答が均等に分布していると仮定して推計 ※中央値は四捨五入
(出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2026年)
ペアローン利用率・借入期間・金利形態にも地域差
続いて、具体的な借入形態に目を向けてみます。まず、ペアローンの利用割合ですが、首都圏が25.6%と最も高く、次いでその他地域が22.6%となっています(図表2)。一方で、中京圏は15.2%にとどまり、単独ローンの割合が相対的に高い結果となりました。同じ住宅購入でも、誰の収入を前提に借り入れるかという点に、地域ごとの違いが見て取れます。
【図表2】エリア別 借入形態

借入期間については、「35年」が全国的に事実上の標準となっています(図表3)。ただし、それだけではなく、36年以上の超長期ローンの利用も一定程度広がっています。特にその他エリアではその割合が高く、毎月の返済額を抑え、家計に余裕を持たせることを重視した選択が進んでいる様子がうかがえます。
【図表3】エリア別 借入期間

さらに金利形態を見ると、都市部では変動金利の割合が高く、その他エリアでは固定金利の割合が比較的高いという構図が確認されました(図表4)。これは単なる商品選択の違いというよりも、物件価格の高低、金利上昇リスクへの向き合い方や、家計の安定性に対する考え方が地域によって異なる可能性を示しています。
【図表4】エリア別 金利形態

選択の違いは前提の違いから
ここまで見てきたように、住宅ローンの借入形態には確かに地域差が存在します。ただし、それは優劣の問題ではありません。それぞれの地域における住宅価格、収入水準、働き方といった前提条件の違いが、自然と選択の違いとして表れていると考えるのが妥当です。
住宅ローンは長期にわたる意思決定です。だからこそ、「どの方法が一般的か」だけで判断するのではなく、自身の置かれている環境や家計の状況に照らして考えることが重要になります。
次回のコラムでは、こうした住宅ローンの選択が、家計や資産形成とどのように結びついているのかを掘り下げていきます。住宅購入後の暮らしにどのような違いが生まれているのか、データをもとに見ていきます。
(三井住友トラスト・資産のミライ研究所 桝本 希)
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