サイモン・クズネッツとは?功績や「世界には4つの国しかない」の意味も解説
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サイモン・クズネッツ(Simon Smith Kuznets)は、1971年にノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者です。米国の国民所得統計を整備する、格差の拡大と経済成長の関係を示す仮説を唱えるなど、様々な功績があります。
「世界には4つの国しかない」という印象的な発言で、サイモン・クズネッツの名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。発言の趣旨やサイモン・クズネッツの功績を知っておくと、世界経済に対する理解がより深まるでしょう。
本記事では、サイモン・クズネッツの功績に加えて、提唱したクズネッツ・サイクルについても解説します。
サイモン・クズネッツとはどんな人?
サイモン・クズネッツ(Simon Smith Kuznets)は、ノーベル経済学賞を受賞している米国の経済学者です。20世紀に、国民所得統計や国民所得論の権威として活躍しました。
ここから、サイモン・クズネッツの生涯や、主な著作について解説します。
サイモン・クズネッツの生涯
サイモン・クズネッツの生涯を、以下の年表にまとめました。
・1901年、ロシア帝国領ピンスク(現ベラルーシ)で誕生する
・1922年、家族とともに米国へ移住する
・1923年、コロンビア大学で学士号を取得する
・1924年、同大学で修士号を取得する
・1926年、同大学で博士号を取得する
・1927年、全米経済調査局(NBER)で研究活動を始める
・1930年、ペンシルバニア大学統計学の助教授に就任する
・1936年、同大学で教授に就任する
・1949年、米国統計学会会長に就任する
・1954年、ジョンズ・ホプキンズ大学の教授に就任する
・同年、米国経済学会会長に就任する
・1960年、ハーバード大学の教授に就任する
・1966年、『近代経済成長の分析(Modern Economic Growth)』を出版する
・1971年、『諸国民の経済成長(Economic Growth of Nations)』を出版する
・同年、経済成長に関する実証的研究によりノーベル経済学賞を受賞する
・1985年、死没
サイモン・クズネッツが受賞したノーベル経済学賞(アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)とは、経済学に関する研究結果を発表して大きな功績をあげた研究者に贈られる賞です。詳しい内容については、以下の記事を参考にしてください。
サイモン・クズネッツの著作
サイモン・クズネッツの主な著作は、以下の通りです。
・国民所得とその構成(1941年)
・経済成長―六つの講義(1959年)
・近代経済成長の分析(1966年)
・諸国民の経済成長(1971年)
そのうち、『近代経済成長の分析』は豊富な統計を用いて、経済成長の速度や経済構造の変化、各国への広がりを考察した著作です。クズネッツの長年にわたる成長研究を体系的にまとめた代表作とされています。
サイモン・クズネッツの「世界には4つの国しかない」とは
サイモン・クズネッツの言葉として、「世界には、4つの国しかない。先進国と発展途上国、そして日本とアルゼンチン」が広く知られています。ここで、日本やアルゼンチンを先進国・途上国と別の存在とした理由について、確認しておきましょう。
日本と先進国・途上国の違い
日本は1945年に第二次世界大戦で敗戦し、経済的に大きな打撃を受けています。しかし、その後は急速に復興し、1950年代半ばから1970年代初頭にかけて高度経済成長を遂げました。
内閣府によると、1955年から1972年までの実質経済成長率は年平均9.3%に達するとのことです。また、1964年には、欧米の先進工業国を中心とする国際機関であるOECDに、非欧米諸国として初めて加盟しました。
サイモン・クズネッツの言葉は、戦後の荒廃から短期間で先進工業国へと成長した日本の歩みが、例外的だったことを示すものと解釈されています。
アルゼンチンと先進国・途上国の違い
20世紀初頭、アルゼンチンは一人当たりGDPにおいて世界10位以内に位置する富裕国でした。しかし、その後は第一次世界大戦や世界恐慌などを経て先進諸国との所得格差が長期的に拡大し、世界経済における相対的な地位を低下させていきました。
サイモン・クズネッツの言葉は、高所得国に比肩する水準から中所得国へと相対的に後退したアルゼンチンが、通常の経済発展の類型では説明しにくい例外的な存在であることを示すものと解釈されています。
サイモン・クズネッツの主な功績
サイモン・クズネッツの主な功績は、以下の通りです。
・米国の国民所得統計の整備に貢献した
・格差の拡大と経済成長の関係を示す仮説を唱えた
・クズネッツ・サイクル(クズネッツの波)を提唱した
それぞれ解説します。
米国の国民所得統計の整備に貢献した
サイモン・クズネッツは、米国の国民所得統計の整備に貢献しています。
1930年代、大恐慌によって経済活動が急激に縮小する中で、米国では自国の経済状況を数量的に把握する必要性が高まっていました。そこで、米国政府は、経済学者・統計学者であるサイモン・クズネッツに調査を依頼します。
その後、サイモン・クズネッツは国民所得を推計し、成果を報告しました。サイモン・クズネッツの計算手法は、現在のGDPなどの発展にもつながったとされています。
一方で、サイモン・クズネッツは、国民所得が人々の幸福を示す指標としては不十分であることも指摘していたとのことです。
格差の拡大と経済成長の関係を示す仮説を唱えた
サイモン・クズネッツは、格差の拡大と経済成長の関係を示す仮説も提唱しました。
サイモン・クズネッツの仮説によると、経済発展の初期段階では、主要産業が農業から工業へ移る過程で所得格差が拡大します。しかし、経済発展や制度整備が進むにつれて、所得格差は縮小に向かうとのことです。
当初所得格差が拡大するも、その後安定期に入り縮小していく関係は、「逆U字仮説」や「クズネッツ曲線」と呼ばれます。
クズネッツ・サイクル(クズネッツの波)を提唱した
クズネッツ・サイクル(クズネッツの波)を提唱したことも、サイモン・クズネッツの功績のひとつとして挙げられます。
クズネッツ・サイクルとは、人口の変化や住宅・インフラへの建設投資などに伴って生じる、20年前後の景気循環のことです。建築物の建て替え周期に重ねあわせられるため、「建築循環」とも呼ばれています。
ただし、景気が常に一定の周期で変動することを示すものではありません。
クズネッツ・サイクル以外の景気循環の波
サイモン・クズネッツ以外にも、景気循環の波について説明した人たちがいます。クズネッツ・サイクル以外の主な景気循環の波は、以下の通りです。
・キチン・サイクル
・ジュグラー・サイクル
・コンドラチェフ・サイクル
それぞれの提唱者や、概要について詳しく解説します。
キチン・サイクル
キチン・サイクル(キチンの波)とは、企業による在庫の増減を主な要因として、約40カ月の周期で生じる短期的な景気循環のことです。「在庫循環」や「短期循環」と呼ばれることもあります。米国の統計学者のジョセフ・キチンが、1923年に発表しました。
景気が上向いて需要が増えると、企業は生産を拡大して在庫を積み増します。しかし、生産量が需要を上回ると在庫が過剰になり、今度は生産を縮小するでしょう。その結果、景気が後退して在庫が減少し、やがて再び生産が拡大することがこの循環の由来です。
ジュグラー・サイクル
ジュグラー・サイクル(ジュグラーの波)とは、企業による設備投資を主な要因として、10年程度の周期で生じる中期的な景気循環のことです。「設備循環」や「中期循環」と呼ばれることもあります。1862年にフランスの経済学者のクレマン・ジュグラーが発表しました。
企業が需要の増加や設備の更新に対応して投資を増やすと、生産や雇用が拡大して景気が上向きます。しかし、設備が過剰になると投資が縮小して景気が後退するでしょう。その後、設備の更新時期が到来して投資が再び増えると、次の景気拡大につながると考えられています。
コンドラチェフ・サイクル
コンドラチェフ・サイクル(コンドラチェフの波)とは、技術革新(イノベーション)により約50年の周期で生じる長期的な景気循環のことです。紹介した4つの景気循環の中で最も長い周期で、「長期循環」と呼ばれることもあります。
旧ソ連の経済学者ニコライ・コンドラチェフが発見し、オーストリアから米国に移住した経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが技術革新と結び付けて説明しました。シュンペーターによると、コンドラチェフ・サイクルの第1波は「産業革命とその浸透の過程(1780年代末〜1850年代初め)」、第2波は「蒸気機関を軸とした鉄道の建設と鋼鉄の時代(1850年代初め〜90年代)」、第3波は「電気・化学・自動車の時代(1890年代〜1920年代ごろ)」とのことです。
その後については、エレクトロニクス・原子力・航空宇宙の時代を第4波、ナノテクノロジー・ビッグデータ・ロボティクス・AIなどの時代を第5波とする考え方があります。
サイモン・クズネッツはノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者
サイモン・クズネッツは、1971年にノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者です。「世界には4つの国しかない」とし、第二次世界大戦敗戦後に復興を遂げて先進国になった日本や、高所得国に比肩する水準から中所得国へと相対的に後退したアルゼンチンを例外的な存在として挙げたとも言われています。
また、クズネッツ・サイクルを提唱したことも、サイモン・クズネッツの功績です。今後景気について考える際は、クズネッツ・サイクルを含む4つの景気循環との関係も調べてみてはいかがでしょうか。
参考:コトバンク(デジタル大辞泉、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)「クズネッツ」
参考:THE NOBEL PRIZE「Simon Kuznets」
参考:総務省「令和元年版 情報通信白書のポイント」
参考:国土交通省「国土交通白書2017 第1章我が国の発展とイノベーション」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。


