「政策金利引き上げ」による生活への影響 ~投資編~
政策金利が引き上げられることで僕らの「資産形成」はどう変わる?
2024年から、日本銀行(以下、日銀)が段階的に進めている政策金利の引き上げ。物価の高騰や円安を抑制する狙いで実施されており、2026年6月に開催された金融政策決定会合では0.75%から1%に引き上げられることが決定した。直近9月の政策決定会合でも0.25%引き上げられ、現在の政策金利は1.25%となっている。(2026年10月現在)
政策金利が引き上げられることで住宅ローンの金利なども上がっていく一方、投資や資産形成にも影響が出てくるという。マネーコンサルタントの頼藤太希さんに、利上げと投資の関係について教えてもらった。
「普通預金金利」「定期預金金利」が上昇中
金利と聞いて、まず預貯金を思い浮かべる人は多いだろう。マイナス金利が続いた日本では、長い間普通預金の金利が年0.001%程度で推移。預金口座に入れていても一向に増えなかったため、資産形成の手立てにはならないと見られていた。
「マイナス金利が解除され、政策金利が上がってきたことで、普通預金金利も上がってきています。2026年8月時点のメガバンクの普通預金金利は年0.4%となっています。ネット銀行だと、特定の要件をクリアすることでもっと高い金利が付くところも出てきています」(頼藤さん・以下同)
例えば、あおぞら銀行では「100万円まで」という制限はあるものの、普通預金金利が年1%になっている。定期預金であれば、さまざまな銀行で年1%を超えるものも出てきており、今後さらに高い水準の商品も出てくる可能性があるとのこと。
資産形成の一助になり得る「個人向け国債」
利上げがダイレクトに影響するものといえば、国債(国が発行する債券)も挙げられる。個人でも購入しやすい個人向け国債も発行されており、満期まで金利が固定される「固定金利型3年満期(固定3年)」「固定金利型5年満期(固定5年)」、半年ごとに金利が見直される「変動金利型10年満期(変動10年)」の3種類がある。
「マイナス金利の間、個人向け国債の金利は年0.05%でしたが、2026年8月募集分の金利は『固定3年』が年1.71%、『固定5年』が年2.06%、『変動10年』が年1.87%となっています。個人向け国債は価格が変動しないため、“元本割れしない日本一安全な資産”といわれています。つまり、低リスクで年2%を超える金利収入を得られるようになったというわけです」
個人向け国債は長くても10年で満期を迎えるため、ある程度近い将来に向けて、手堅く準備する手法として向いているといえるだろう。ただし、「低リスク」といえるのは元本割れしない個人向け国債に限ったことで、一般的な国債は価格変動のリスクがあるという。
「国債に投資する投資信託を用いていると、価格変動の影響を受けます。なぜかというと、金利と債券の価格はシーソーのような関係にあるからです。金利が上がると債券価格が下がり、金利が下がると債券価格が上がる仕組みになっています。政策金利が上がっているタイミングでは、既存の債券の価格が下がりやすくなるため、マイナスの影響が及ぶでしょう」
例えば、金利年1%の国債を保有している状態で政策金利が引き上げられ、市場に金利年2%の国債が発行されたとする。そうなると、保有している金利年1%の国債を欲しがる人が減るため、価格が下がるという仕組みだ。
「日本の政策金利はまだまだ上がっていくでしょうから、現時点で投資信託を通じて日本国債を購入するメリットはあまりないといえます。ただ、アメリカの国債に関しては状況が異なります。アメリカの金利はこれから下がっていくことが予想され、米国債の値上がりが期待されるので、米国債に投資する投資信託はプラスの影響を受けるかもしれません」
利上げを受けて注目を集める「上場銘柄」も
株式投資は利上げによる影響を受けないように感じるが、一般的に金利上昇は株価下落の要因になるそう。
「政策金利が上がると預貯金の金利が上がるため、投資や消費に回っていたお金が預金口座に入りやすくなり、景気の抑制につながるからです。また、価格変動リスクの低い債券でも相応のリターンが得られるようになるため、比較的価格変動リスクが高い株式を選ぶ人が減るといったことも考えられます」
ただ、頼藤さんが話してくれたことはあくまで一般的な話であり、現在の日本は少し特殊な状況にあるという。
「日銀が利上げに動いたものの、日本株は上昇し続け、日経平均株価は最高値を更新しています。この状況は、『持続的なインフレ・円安が続く見通しがある』『金利がインフレ率を下回っている』『AI・半導体関連株が株高をけん引している』といったさまざまな理由によるものと考えられますが、なかでも大きな要因といえるのは、市場にお金が余っているからです。コロナ以降、停滞した経済を立て直すために政策金利の引き下げや金融緩和などを行った結果、市場が金余りの状態になり、お金が株式などに流れて資産価値を押し上げているのだといえます」
さまざまな要因が絡み合い、金利も株価も上がっている状況ができあがっているというわけだ。さらに利上げが進むと、株価が下がってくるかもしれないが、金利上昇を受けて注目されている銘柄もある。
「銀行株です。なぜかというと、普通預金金利とともに貸付金利も上がるからです。利ざや(預金金利と貸付金利の差)が銀行の売上になるわけですが、2026年8月時点のメガバンクの普通預金金利が0.4%、貸付金利が3~4%となっており、この差がさらに拡大すると銀行の業績が好調に推移し、株価も上がるというわけです。実際に三菱UFJフィナンシャル・グループの時価総額は上がり、2026年7月中旬には一時的に国内首位となりました。みずほフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループも上がってくるでしょう」
銀行株と同様に、生命保険会社の株価も上がる可能性が高いとのこと。生命保険会社は債券での運用が基本となるため、債券の金利が上がると運用収益が改善し、その結果として保険商品の予定利率も引き上げられ、契約数が増えるからだ。
「預貯金や保険は日々の生活のなかで接する機会が多いものなので、その金利が上がるという変化は実感しやすいでしょう。その変化を受けて『お金を預金口座に入れよう』『保険を契約しよう』と感じるということは、銀行や生命保険会社を利用する人が増えて業績が伸び、株価が上がるとイメージできるようになります。普段感じていることが、投資や資産形成のヒントになるというわけです」
利上げによって、資産形成の考え方も変わってくるかもしれない。日本のお金の在り方が変わるタイミングにあるいま、将来への備え方を見直すときといえそうだ。
(取材・文/有竹亮介)


