「政策金利引き上げ」による生活への影響 ~家計編~

日銀の利上げによる「買い物」「住宅ローン」「保険」への影響とは

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2026年6月に開催された金融政策決定会合で、日本銀行(以下、日銀)が政策金利を0.25%引き上げることを決めた。その結果、政策金利は31年ぶりの高水準の1%となり、直近9月の政策決定会合でも0.25%引き上げられ、現在は1.25%となっている。(2026年10月現在)

政策金利が上がると、預貯金や住宅ローンの金利が上がるだけでなく、株式・債券を通じた投資や日々の買い物などにも影響が出てくるようだ。

そこで利上げによる家計への影響を、マネーコンサルタントの頼藤太希さんに教えてもらった。

「円安」「物価高騰」を抑えるための政策金利引き上げ

2024年に日銀がマイナス金利を解除してから、約2年間かけて徐々に政策金利が引き上げられ、今回の1%に達した。そもそも、なぜ日銀は利上げを行っているのだろうか。

「長引く円安による輸入物価の上昇や、世界的なエネルギー・資源価格の上昇を背景とした物価高騰を抑えるためです。政策金利が引き上げられると、まずは預金金利が上がり、世の中のお金は預貯金に集まりやすくなります。住宅ローンの金利も上がることでローンを組む人も減り、市場に流通するお金が減るので、お金の価値が上がり、インフレが抑えられるという仕組みです」(頼藤さん・以下同)

これまでの日本はデフレから脱却するため、マイナス金利政策で世の中にお金を巡らせ、消費や投資を活発化させる方向に動いていた。お風呂にたとえると、蛇口を全開にして、浴槽(市場)にお湯(お金)を満たしていくようなイメージだ。ただ、蛇口を開けたままだと浴槽からお湯が溢れてしまう。この状況がバブルといえる。この状況を放置するとインフレが加速しすぎてしまい、インフレ率以上に給与は増えにくいので、国民の生活は苦しくなる。そうならないために蛇口を閉めて浴槽の栓を抜き、お湯を減らすのが、利上げというわけだ。

「現在の円安の原因のひとつは、日本の円金利が低く、アメリカのドル金利が高いことだと考えられます。ようやく1%になった円金利に対し、ドル金利は3%台後半なので、円よりもドルで運用したほうが利益を得やすいということから、ドルの価値が上がって円の価値が下がっているのです。つまり、円金利が上がれば円安に歯止めを掛けられるため、利上げが行われているという側面もあります」

段階的な利上げが行われているが、ドル金利にはまだまだ及ばないレベルだ。今後、日本の政策金利はどの程度上がると予想されるだろうか。

「日銀の推計によると、名目中立金利(景気を刺激も冷やしもしない金利水準)は1~2.5%の間にあるといわれています。つまり、現在の1%はまだ緩和的な金融環境にあると捉えることができ、少なくとも2%程度までは上がる可能性があるといえるでしょう。とはいっても、急に上がることはなく、これまでと同様に1.25%、1.5%というように徐々に上がっていくと考えられます」

現在発行されている国債(国が発行する債券)の金利も、今後の利上げのヒントになるという。

「2026年8月現在、日本の2年債(2年で満期を迎える国債)の金利は1.7%程度です。これは『2年後には金利が1.7%に上がっている可能性が高い』と表しているといえます。10年債は2.9%程度、30年債は4.1%程度になっています。満期までの期間が長い国債は金利が上乗せされ、実際の金利よりも高く設定されるため、10年後に2.9%とはならないかもしれませんが、低く見積もっても2.4~2.5%ぐらいにはなるかもしれません」

利上げによる「住宅ローン」への影響

利上げによって影響を受けるものとして、多くの人が注目しているのが住宅ローンだろう。住宅ローンは「変動金利」と「固定金利」の2種類に大きく分けられるが、既に変動金利でローンを組んでいる人は影響が出てくるといえる。

「変動金利型の住宅ローンの金利は、『短期プライムレート(金融機関が優良企業にお金を貸し出す際の金利)』をもとに導き出されます。『短期プライムレート』は政策金利に応じて変化するため、長らく年1.475%だったところから2024年以降の利上げを受け、2026年8月時点で年2.375%となっています。それに合わせて変動金利型の住宅ローンの金利も半年ごとに見直され、年0.3~0.4%から年1%前後まで上がってきています」

変動金利でローンを組んでいる場合、今後さらに金利が上がっていく可能性があるのだ。ただし、半年ごとに上がるわけではない。変動金利型の住宅ローンには「5年ルール」と「125%ルール」というものがある。

●5年ルール
毎月の返済額は5年ごとに見直されるというルール。

●125%ルール
返済額が見直される場合、それまでの返済額の125%までしか増えないというルール。

「『5年ルール』『125%ルール』があるため、政策金利が上がったからといって、すぐに住宅ローンの金利が大幅に上がるということはありません。ただし、注意点があります。利上げによって住宅ローンの金利が1%上がったとしても、5年間は返済額が変わることはありませんが、本来支払うべきだった1%分の利息は後回しにされるという点です。『5年ルール』『125%ルール』によって上がらなかった部分の利息は消えるわけではなく先送りにされるので、想定よりも利息が増え、当初の完済時期までに支払い切れない可能性が出てきます」

つまり、利上げが行われた分だけ未払いの利息が積み重なり、最終的に跳ね返ってくるというわけだ。返済期間が終わるタイミングで元金や利息が残っている場合は、一括返済を求められ、返済できないと家を売却することになるかもしれない。

「既に変動金利でローンを組んでいる人は、未払いの利息が増えていることを踏まえて、返済計画を見直すことが大事です。一方、固定金利でローンを組んでいる人は利上げによる影響を受けないので、当初の計画が変わることはありません」

これから住宅ローンを組む人は、変動金利と固定金利、どちらを選ぶといいだろうか。

「基本的には変動金利のほうが有利でしょう。というのも、変動金利型の金利は年1%前後なのに対し、固定金利型の代表格である『フラット35』の金利は年3.29%(融資率9割超の場合)だからです。2%の差は大きく、変動金利型がすぐに年3%まで上がるとは考えづらいので、変動金利を選ぶのが無難といえます」

住宅ローンを組むうえでは、金利だけでなく借入額も重要だ。ポイントは、「借りられる金額」ではなく「返せる金額」で判断すること。

「金融機関は主に借りる人の年収をもとにした『借入可能額』を目安にしていて、年収の30~35%といわれています。これが『借りられる金額』です。しかし、『返せる金額』を現実的に考えると、一般的には給料の手取り額の3割程度といわれています。今後も金利が上がる可能性を踏まえると、『返せる金額』で計画を立てたほうがいいでしょう」

これからの「保険契約」はメリットあり?

利上げによって影響を受けるものとして、保険も挙げられるという。円建ての保険は保険料も保険金も円となるため、円建ての資産で運用することとなり、主な運用先は日本国債となるからだ。

「政策金利が上がると日本国債の利回りも上がるため、予定利率(生命保険会社が契約者に対して約束する運用利回りのこと)が引き上げられるのも自然な流れといえます。予定利率が上がるということは、少ない保険料で目標とする保険金額に到達できるようになり、解約返戻金や満期返戻金がアップする可能性も出てきます。これから保険を契約する人にとっては、利上げがプラスに働くといえるでしょう」

一方、既に保険を契約している人は、利上げによる恩恵を受けることができない。

「基本的には、契約した時点で提示された予定利率から変更されることはありません。そのため、既に契約している人は当初の予定から変わらず、解約返戻金や満期返戻金が増えるといったことはないでしょう。例外として、積立利率連動型保険に加入している人は、積立利率が引き上げられ、将来受け取る解約返戻金や年金が増える可能性があります」

住宅ローンや保険にも影響する利上げ。ライフプランを立てるうえでも、政策金利の変化は追っていったほうがよさそうだ。

(取材・文/有竹亮介)

お話を伺った方
頼藤 太希
(株) Money&You代表取締役。マネーコンサルタント。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍100冊、累計180万部超。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→ @yorifujitaiki
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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