プロが語る!資産形成のすゝめ

環境対策から成長戦略へ

循環経済の構築に向けた取り組みに要注目

提供元:ちばぎん証券

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「資源有効利用促進法」が4月に改正されて半年。
この法律の持つ意味、重要性は足元でますます高まっているように感じられます。

現在の資源有効利用促進法が施行されたのは2001年4月。
背景には鉱物資源の確保に関する課題に加え、廃棄物(ごみ)の増加に伴う最終処分場の逼迫、不法投棄や環境汚染の深刻化という社会問題がありました。
今やアートの島として国内外から注目される香川県豊島の有害廃棄物不法投棄問題(豊島事件)が関心を集めたのも1990年代です。

大量生産・大量消費・大量廃棄型経済システムの行き詰まりが明らかになるなか、限りある資源を使い捨てにしない「循環型社会」への移行を目指す、そしてそのために3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進する―これが法律の目的でした。

施行後四半世紀が経過し、環境省の「一般廃棄物の排出及び処理状況等」によると、ごみの総排出量は2001年度から2024年度に26.8%減少しましたが、リサイクル率は15%から19.3%への上昇にとどまっています。
「循環型社会」への移行は道半ばと言わざるを得ません。

2000年代に入り、中国、インドなど新興国の経済成長や脱炭素機運の高まりを受け、世界で資源の獲得競争が激化。現在進行中の米中対立や緊迫化する中東情勢は資源確保の重要性を再認識させるものとなりました。

日本は原油や天然ガス、金属資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。
製品の設計段階から「ごみを出さない」ことを前提とし、使ったものをすべて資源として循環させる新しい経済モデル―循環経済(サーキュラーエコノミー)の構築は、持続的な経済成長に不可欠。危機管理、経済安全保障の面でも重要性を増しています。

今年の4月に施行された改正「資源有効利用促進法」では、自動車、家電、容器包装を施行令で定めた一定規模(自動車は年1万台、家電は品目ごとに年5万台、容器包装は年1万トン)以上製造する企業に対し再生プラスチックの利用が強く求められることとなりました(家電はエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目が対象、容器包装は食品(指定PETボトル除く)や医薬品等を除く)。国はこれらの企業に対して利用に関する計画の提出や定期報告を求め、報告内容によって行政指導や助言、取組が著しく不十分な場合には、勧告、公表、改善命令を出すことができます。具体的な日程は、初回の計画提出が2027年9月末、定期報告は2028年9月末です。
こうした措置により再生材の安定した需要が生まれれば、供給する企業にとっても生産拡大や新規投資に踏み切る誘因となると考えられます。

また、製品設計の段階から修理や解体・分別が容易、長寿命化につながるなど優れた環境配慮設計を行った事業者を「認定事業者」とし、リサイクル設備投資への金融支援など特例措置を受けられる仕組みも導入されました。認定事業者となることでブランド価値向上などの効果が得られる可能性もあり、開発を後押しすると期待されます。

高市政権でも資源循環を新たな産業競争力につなげ、脱炭素・環境配慮と経済成長の両立を目指す政策が強化されています。

4月には資源有効利用促進法の改正に併せ、2030年までに官民で1兆円を投じる「循環経済行動計画」を決定しました。再生資源の確保を循環経済構築に向けた最重要課題と位置づけ、金属資源やプラスチックなどのリサイクルを強化する方針です。
特に金属資源について、アルミ、銅、永久磁石では再生材の具体的な供給目標を提示。鉄では製造過程で温暖化ガス排出量を減らす「グリーン鉄」の原料となる鉄スクラップの処理能力を引き上げます。
他に、資源の海外流出を抑制する策や、調達面で海外との連携を強化する策などが盛り込まれました。

関連する企業の動きも加速しています。
化学工業や非鉄金属業では、再生材の利用拡大で商機が広がると期待される一方、大きな供給責任を負うことにもなります。
主要各社は供給拡大に貢献すべく、このテーマを経営戦略の中核に据え取り組む構えです。

三菱ケミカルグループは、長期経営ビジョン「KAITEKI Vision 35」において、「グリーン・ケミカルの安定供給基盤の構築」を成長戦略の土台と位置付けています。
グリーン・ケミカルとは再生可能資源を原料とし、従来の化石燃料由来の化学品を代替するものの総称ですが、その安定供給の第一歩として昨年7月にはENEOSと共同運営する廃棄プラスチックのケミカルリサイクル設備が稼働しました。

廃プラを分子レベルで油にまで分解(油化)する設備で、現状は焼却処理が多い廃プラの再資源化を進めるとともに、循環させやすい最終製品づくりにもつなげる狙いがあります。油を分離し、生成油はENEOSが、ナフサは三菱ケミカルグループが、それぞれガソリンや化学品へと再生します。

三菱マテリアルは中期経営戦略(2026~28年度)で「資源循環ビジネスで未来を創る企業へ」という基本方針を標榜。
世界トップクラスの処理能力を誇るE-Scrapの処理量拡大(2035年度までに倍増)などを成長戦略として掲げています。
E-Scrapとはスマートフォンやパソコン、家電などの電子機器から回収された廃基板で、金、銀、銅、パラジウムといった有用な金属を高濃度に含んでいるのが特徴です。近年、電子機器類のリサイクル率が向上したことにより取扱量が増加。貴重な資源の供給源として注目されています。

住友金属鉱山は、長期ビジョン「2030年のありたい姿」で重要課題の先頭に「非鉄金属の安定供給とサーキュラーエコノミーへの貢献」を挙げています。
9月には使用済みのEV電池などから銅やレアメタルであるニッケル、コバルト、リチウムを再資源化する商業規模では国内初のリサイクル工場が竣工しました。
同社はEV電池の正極材の製造を手掛けており、回収したレアメタルを再度原料に使うことで「電池to電池」の水平リサイクルを実現、廃電池の海外流出も防ぐと期待されます。

自動車や家電など川下のメーカーにとって、再生材の円滑な調達は競争力を左右するのみならず事業継続のカギを握るといっても過言ではありません。

トヨタは長期ビジョン「トヨタ環境チャレンジ2050」における資源循環への対応として「循環型社会・システム構築チャレンジ」を策定、2026年4月には「サーキュラーエコノミーチャレンジ」へ改定し取り組みを推進しています。

主なポイントは、リサイクルや分別がしやすいようにあらかじめ車の構造を設計するサーキュラー製品設計の推進、再生材の利用最大化、電動車用バッテリーを効率よく回収・再資源化する仕組みの強化などですが、欧州ではこうした取り組みをさらに前進させた「トヨタ・サーキュラー・ファクトリー(TCF)」構想が動き始めています。

従来、廃車から回収されたアルミやプラスチックは品質が落ちるため自動車の重要部品に再利用することは困難とされていましたが、TCFでは徹底的な品質管理とトレーサビリティ(原材料の出所や履歴の追跡)を確立、高精度で回収・再生し新車の部品として活用しています。
自動車産業は日本経済を支える屋台骨。トヨタの取り組みは日本の製造業が目指すべき方向を示しているように感じます。

環境対策はコスト負担が先行するため株式市場では人気化しにくいテーマでしたが、成長戦略と捉えれば見方が変わってくる可能性もあります。
緊迫する国際情勢の下、避けては通れない循環経済の構築に向け、官民一体となった取り組みが定着するのか要注目です。

(提供元:ちばぎん証券)

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