プロが語る!資産形成のすゝめ

「曲がり屋」にならないための3つの視点

提供元:SBI証券

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勘に頼る投資の落とし穴

「当たり屋につけ、曲がり屋に向かえ」という投資格言があります。相場を見事に読み当てる方もいれば、芸風のように高確率で外す方もいるので、それらを投資に活かすというものです

とはいえ、個人投資家についてはかなり親しい間柄でも判定が難しい場面が多いものです。なぜなら、儲かった話だけ自慢げに語る方が裏で大損していたり、損した取引についてだけ「ちょっと大変なのよ」と世渡り上手に話す方もいたりするため、実際の投資の結果が見えにくいからです。また、仮に何回か予想が当たったとしても、それが実力か偶然かは、同じ条件で繰り返しているわけではないので、統計的に判断するのも難しいものです。反対に、しばしば予想を外している方も、どこに問題があるのか、当人でさえ意識していないこともあります。

あくまで個人的に知りうる範囲での経験に基づく私見ではありますが、繰り返して投資判断を間違えている方には、共通するパターンがあるように見受けられます。まず挙げられるのが、判断基準そのものがない場合です。「私の勘が上がりそうと言っている」という、いわば「カンピュータ」での取引がこれに当たります。

次に、判断基準が毎回異なる場合です。検証ができなければ、同じ条件での結果とならないので、偶然と必然の区別がつかず、いつまでたっても投資が上達しない可能性が高くなります。最後に、知人や営業担当の言葉を鵜呑みにする場合です。判断基準がないうえ、自分で情報収集もせず、判断も人任せなので、検証以前の状態です。これらに共通するのは、手法の検証がされずに原因と結果が不明確で、投資スキルが磨かれないことです。

smart moneyの動向を注視する

「当たり屋につけ」という投資格言に似たものとして、英語圏の投資格言に「Follow the smart money.」があります。意味は文字通り、「賢く上手な投資家についていけ」ということです。smart moneyとは、十分な知識と経験を備えた投資主体のことで、パフォーマンスが良い一部の投資会社や投資信託、ETF、ヘッジファンド、アクティビストなどが該当する可能性があります。もちろん、すべての運用のプロがsmart moneyとは限りませんし、過去のLTCM※の経営危機に見られるようにどんなに優秀な方々でも失敗することがあるので、あくまで参考にしようという意味です。

※ロングタームキャピタルマネジメント(Long-Term Capital Management)。1994年から1999年まで存在したヘッジファンドで、投資銀行幹部、ノーベル賞学者やFRB元副議長などがメンバーで、金融工学を駆使した裁定取引で最初の4年間は驚異的なリターンを得ていました。1998年のロシア危機を契機に破綻寸前となり、民間金融機関による救済・資本再構成が行われました。

投資信託やETFは保有ポートフォリオの主な内訳が開示されていますし、気になる銘柄や投資主体についてEDINET https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/week0010.aspx で大量保有報告書を確認すれば、smart moneyの行動の一端を垣間見ることができます(図表1)

図表1 EDINETで大量保有報告書を確認する

「曲がり屋に向かえ」に相当する欧米の投資格言には「Fade the losers.」(敗者を避けよ)や「Fade the public.」(大衆に逆らえ)があります。前者は「曲がり屋に向かえ」そのものですし、後者は「相場師は孤独を愛す」に近い概念ともいえそうです。曲がり屋が相場の雰囲気にのまれやすく、感情のおもむくままに投資する傾向があるとするなら、「天井で買い、大底で売る」というパターンに陥りやすいこととも整合性があります。

なお、興味深いことに、相場の雰囲気にのまれやすいというのは個人投資家に限った話ではありません。今では過去のレポートや動画がネット上に残り続けているので、各種メディア、著名なストラテジスト、有力アナリストも過去の天底で市場の雰囲気にのまれてノリノリ発言をしていた例が確認できることもあります。

大トレンドの終わりに注意

「Fade the public.」(大衆に逆らえ)は「曲がり屋に向かえ」よりも相場全体の流れに注意すべしという内容なので、判断が難しいところがあります。大相場の真ん中ではトレンドに逆らえば火傷をすることが多いからです。

これを踏まえて、個人的にピッタリくる投資格言は「The public is right during the trends, but wrong at both ends.」(大衆はトレンドが継続している間は正しいが、トレンドの始まりと終わりでは間違える)です。確かに大トレンドの初動では市場参加者に懐疑的な声が多いですし、終盤では逆に反対意見がほとんど聞こえなくなってしまいます。直近の例では、2026年1~6月の日米韓の半導体メモリー株の急騰と7月からの急落がまさにこのような展開となっていた印象です。

投資で重要なのは、自分の判断基準を持つことです。smart moneyの行動を参考にしたり、過去データを統計的に検証したり、市場の過熱感を各種指標で点検したり、「曲がり屋」をこっそり見つけていれば、その意見を参考にしてみたりすることも効果的でしょう。こうした「検証可能な」方法を選ぶことが、繰り返しの失敗を防ぐことになります。同時に、相場の流れに身を任せるのではなく、トレンドの終わりで特に慎重になるという心構えも必要です。相場の雰囲気にのまれず、判断基準を明確に持とうとする習慣こそが、「当たり屋を目指しつつ、自分は曲がり屋にならない」近道と考えられます。

関連レポート:「初級- 鵜呑みに注意?勘違いしやすい5つの投資格言」

(提供元:SBI証券)

著者/ライター
土居 雅紹
SBI証券 執行役員(投資情報部管掌)
大和證券での株式アナリスト(ゲーム、メディア業界)、大蔵省財政金融研究所勤務、金利デリバティブ営業に従事した後、ゴールドマン・サックス証券にて個人向け証券化デリバティブ事業を立ち上げる。ヘッジファンド系デリバティブハウスCOO、楽天証券常務執行役員(株式・デリバティブ事業本部長)を経て2025年9月より現職。米ノースカロライナ大学MBA、CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会認定アナリスト

主な著書:『最強の「先読み」投資メソッド』(ビジネス社)、『勝ち抜け!サバイバル投資術』(実業之日本社)
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